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トヨタの10代目「カムリ」乗ってわかった実力 基本から大刷新、不遇のセダン市場へ挑む

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/08/08 川端 由美
7月10日から日本国内でも販売が始まっている10代目「カムリ」(写真:筆者撮影) © 東洋経済オンライン 7月10日から日本国内でも販売が始まっている10代目「カムリ」(写真:筆者撮影)

 トヨタ自動車が約6年ぶりにフルモデルチェンジ(全面改良)して、10代目に生まれ変わった上級セダン「カムリ」。7月10日から日本国内でも販売が始まっている。

 もともとは、1980年に国内専用FR(フロントエンジン・リアドライブ=後輪駆動)車の「セリカ・カムリ」として誕生。1982年に現在と同じFF(フロントエンジン・フロントドライブ=前輪駆動)の構造に変わり、車名もカムリとなった。現在はトヨタのFFセダンで最上級にあたる。

アメリカ国産指数ナンバーワンを誇る「カムリ」

 いくぶん時計の針を戻すことになるが、今年1月にアメリカで開かれたデトロイトショーでは、豊田章男社長自らが登壇して、トヨタが北米に100億ドルもの大型投資をすると発表したことが大きな話題になった。当然、現地でも話題を呼んだが、それ以上に現地メディアが関心を寄せたのが、6年ぶりに刷新された「カムリ」をアメリカ・ケンタッキー工場で生産することだった。

 なぜか? その答えは、意外なほど単純だ。「カムリ」は、アメリカ人にとって「国産車」だからだ。カムリはこれまで世界100カ国以上で累計1800万台以上を販売する中、アメリカは主戦場。2016年まで15年連続で乗用車部門の販売台数トップを獲得。トヨタの米国新車販売の約15%を占める。

 客観的なデータでは、Car.comが発表する”American−made Index(=アメリカ国産指数)”において、トヨタ「カムリ」が堂々の1位を獲得している。75%以上の部品を国内調達しているクルマを「国産車」と定義しているのだが、その条件を満たすクルマはわずか7車種のみだという。

 だからこそ、トランプ政権への対策として、フォードが早々にメキシコ工場の白紙撤回を宣言したのに対して、メキシコ撤退が難しいと判断したGM(ゼネラルモーターズ)は部品の国産化を謳った。一方のトヨタは、米国内に100億ドルもの投資をすることに加えて、主力セダンである「カムリ」についてアメリカで製造を続けると発表して、アメリカのメディアから拍手喝采を受けた。

 そうしたアメリカにおける「カムリ」のポジションを知ったうえで、10代目「カムリ」を眺めると、このクルマに秘められたトヨタの思いが伝わってくる。正直なところ、ドイツプレミアムのセダンのような迫力は感じないが、ノーズが低められていて、スラントしたルーフへと連なるボディラインは、遠近感のある景色の中で眺めてみると、なかなかカッコいい。

 顔立ちは、近年のトヨタ車に共通するもので、デイライトとクリアランスランプを組み合わせた3連のLEDヘッドランプにLEDターンシグナルを添えて、ワイドな印象を強めるフロントグリルのデザインとあわせて、先代よりぐっと個性的な顔立ち、つまり”キーンルック”になっている。リアに視線を移すと、ぐっと力強く、踏ん張り感のある印象だ。

新世代の設計思想である「TNGA」の意義

 このスタイリングを実現した最大の秘訣は、すべてにおいてTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)という新世代プラットフォームを採用したことだ。最適なドライビングポジションや低重心による走行安定性も含めて刷新された。

 TNGAは2015年末登場の現行4代目「プリウス」から採用された新しい設計思想であり、昨年末に登場した新型SUV「C-HR」に続いて、新型「カムリ」でも用いられた。プラットフォーム、パワートレイン、電装系、果ては純正オイルまでTNGAに基づいて新設計された。

 全長4885×全幅1840×全高1455mmのスリーサイズは、先代より、35mm長く、15mm広く、25mm低い。フードの高さが40mmも低められており、ハイブリッド用の電池を後席の下に積むことにより、走りに寄与する重心もぐっと低められている。

 運転席に座ってみると、さらにその効果がよくわかる。フロアが低められていることに加えて、フロントシートの位置を後ろに下げて、ヒップポイントを降ろしたことで、セダンらしいシートポジションになり、クルマの動きをつかみやすい。

 従来のトヨタ車の難点として、“中立付近の味がない”のが味かと思うほどだったが、新型「カムリ」では、全域でインフォメーションが豊かで、自分でクルマをコントロールしている感覚を得られる。同時に、ボンネットを低めて、Aピラーを細く仕立てることで、前方の見晴らしのよさも損なっていない。

 室内に目を向けると、カラーのヘッドアップディスプレーが搭載されていたり、7インチTFT液晶を真ん中に据えたオプティトロンメーターが採用されるなど、インターフェースもぐっとモダンになった。日本では主力となるであろう「Gレザーパッケージ」を備えた試乗車は、18インチホイールを装着していたこともあって、よりシャープなハンドリングだ。対して、17インチホイールを履く「G」のほうが、いくぶんマイルドな印象ではある。

 試乗ステージとなった千葉の郊外では、アメリカのハイウェーにありそうな荒れた道が続いていて、いわゆるNVH(騒音・振動・乗り心地)のテストにはちょうどいい。特に、ハンドルを切りながら段差を越えるようなシーンにおいて、頼もしさを感じるようになった。もちろん、北米での仮想敵と目されるシボレー「マリブ」なども、以前のもっさりした乗り味から脱却して、しゃきっと味付けになっているから、「カムリ」が新型になるにあたっては、アメリカにおける中型セダンへの好みの変化も意識して、開発に反映されているに違いない。

 「年間100万~200万台も生産する重要なプラットフォームを、いちから作り直す好機でした。メンバーを外側に広げて、超ハイテン鋼やホットスタンプ材などの高い強度を持つ素材を採用して、衝突時のキャビンの変形を抑えるなど、大幅に安全性を向上させています。タワーバーなどを採用して、ボディ開口部に環状構造を取り入れて、横方向の剛性を30%も高めています」と、シャシー設計を担当した本間裕二さんは言う。

 さらに、ミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせた「セーフティセンスP」を搭載することで、現代的な先進運転支援システムを完備している。具体的には、自動ブレーキによって時速30km以下の衝突を回避する「プリクラッシュセーフティ」、車線からの逸脱を操舵まで行って防止する「レーンディパーチャーアラート(ステアリング制御付き)」、単眼カメラによって周囲の状況を検知して、ロー/ハイビームを自動で調整する「オートマチックハイビーム」、ミリ波レーダーを使って前車との距離を測って全車速で追従する「レーザークルーズコントロール(ブレーキ制御付き/全車速追従機能付き)」を備える。

30km/Lを超える低燃費と圧倒的な加速の両立

 「エコモード」で粛々と走るのもトヨタのハイブリッド車らしいが、高速道路の合流でアクセルを深く踏み込むようなシーンでは、「スポーツモード」に切り替えると、余裕のある加速を生む。178馬力(ps)/221Nmを発生する2.5リッター4気筒エンジンに、88kW/202Nmを生む電気モーターを組み合わせて、システム出力で211馬力(ps)を発生する。

 ハイブリッド機構全体での燃費は、ガソリン1リットル当たり28.4~33.4km(km/L)と、先代の23.5~25.4km/Lと比較しても、格段に低燃費化されている。一方で、早朝にゴルフに出かけるといったシーンでは、EVモードに切り替えて走ることができるから、エンジンのアイドリング音によって近隣に迷惑をかける心配もない。

 今回、“フルTNGA”の採用に伴って、足回りも刷新されている。前/マクファーソンストラット、後/ダブルウィッシュボーンは、共に新開発だ。その効果が最も体感できるのは、クルマがロールしたときだ。サスの摩擦を減らし、対地キャンパーの適正化したことによって、ぐっと安定感が増している。もちろん、TNGAの採用による低重心化も効いている。

 ハイブリッド機構の熟成もなされているが、低燃費化の立役者は、2.5リッター直4エンジンの燃焼技術の向上だ。具体的には、エンジンシリンダーの直径である「ボア」に対して、エンジンシリンダーが動く長さ「ストローク」を長くするロングストローク化を施した。

 さらに、エンジンへの吸気と排気を制御するバルブの角度を41度まで拡大して、エンジンの燃焼室への空気の入り口である「吸気ポート」の形を変えて、吸気が真っすぐに燃焼室に向かわせることによって、燃料が真っすぐに燃焼室に流れるようにした。これにより、エンジンの中で「タンブル流」という渦が起きて、より広く燃料を噴くことができる多孔式直噴インジェクターを採用することとあわせて、燃料と空気がよりよく混ざって、ムラなく、速く、燃焼ができるようになり、その結果、40%もの熱効率を実現できる高効率エンジンを生み出したのだ。

あえてセダンで勝負を挑む「潔さ」

 残念ながら、日本への導入予定はないが、アメリカで販売される「カムリ」の約80%を占める直4エンジンを積んだモデルには、新開発の8速ATが組み合わされる。ロックアップ領域を広げると、オートマの滑りが減って、低燃費化につながるのだが、ロックアップ領域を広げようとすると、どうしても振動やショック、こもり音が出やすくなる。新型「カムリ」では、内部の構造を工夫し、ショックを受け止めるダンパーとしてバネを組み込むことにより、ロックアップ領域を30%も広げて、ガソリンエンジンでも低燃費化を実現している。

 TNGAのアーキテクチャーをすべて採用した”フルTNGA”となり、デザインも近代的に刷新された新型「カムリ」だが、果たして、クルマに乗る楽しさとは何かが問われる時代に合ったクルマといえるだろうか。

 ライバルに視線を移せば、従来のシボレー「マリブ」のような中型セダンだけではなく、中型SUVまで含めてライバル視せざるをえない。そんななか、新型「カムリ」では、あえてセダンというオーソドックスなボディ形状で勝負を挑んでいる。

 近年、流行となっているクロスオーバーSUVと比べれば、使い勝手のよさや居住性の高さは多少不利かもしれないが、しゃきっと近代的になった乗り味は、クルマを自分のコントロール下におくという非常にプリミティブな運転の楽しみを満たしてくれる。

 価格は329万4000円~419万5800円。国内販売目標は月間2400台と9代目の500台から大きく引き上げた。従来のカムリユーザーに加えて、次世代モデルの開発が止まっているという「マークX」系ユーザー、また中高年層にはセダンというボディ形状には一定数の支持者がいる。その前提に立てば、内外装やインターフェースのデザインも含めて、セダンらしさを追求して、セダンだからこそのデザインと走りを実現したという点において、新型「カムリ」の進化の方向性を評価したい。

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