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フェラーリ GTC4 ルッソTにトスカーナで試乗|Ferrari

OPENERS のロゴ OPENERS 2017/07/11 OPENERS
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シューティングブレーク風のクーペボディに、大人4人がゆったりと乗れる空間を確保し、フェラーリ初となる革新的な4WDシステムを採用したV12モデル、「GTC4 ルッソ」。そのスタイリングやパッケージングはそのままに、エンジンをV8ターボに切り替え、FRを採用したニューモデル「GTC4 ルッソT」に、イタリアはトスカーナで試乗した。

Photographs by Ferrari S.p.A
Text by YAMAGUCHI Koichi

GTC4 ルッソTはルッソの廉価モデルなのか?

「ルッソよ、お前もか」。フェラーリ「GTC4ルッソ」の登場からおよそ半年が過ぎた2016年9月のパリサロンで、フェラーリが「GTC4 ルッソT」を発表したとき、そう思わずにはいられなかった。「488」、「カリフォルニアT」につづき、ルッソまでもが、ダウンサイジングターボの波に飲み込まれてしまうのか、と。

「488」と「カリフォルニアT」──このターボ化された2台のV8モデルは、実際にドライブしてみれば、いずれもフェラーリを名乗るのにふさわしい、すばらしいスーパースポーツに仕上げられている。くだんのV8ターボは、従来のフェラーリ製NAユニットが湛えている官能性には欠けるものの、絶対的なパワーといい、シャープなレスポンスといい、、フェラーリの名に恥じないパワーユニットである。とはいえ、時代的な要請として避けられないことであるにせよ、ダウンサイジングターボ化の波がV12ユニットを搭載するGTC4 ルッソにもおよんだことが、正直、残念だったのだ。

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早晩、GTC4 ルッソがルッソTに切り替わるのだろう。筆者のそんな認識は、すぐに早とちりだったと分かった。フェラーリはルッソTを、ルッソの後継車としてデビューさせたのではなく、あくまで新たなモデルとしてリリースしたからだ。では、珠玉の6.3リッターV12ユニットからカリフォルニアT譲りの3.9リッターV8ターボに換装され、革新的な4WDシステムが省かれコンベンショナルなFRを採用したルッソTは、ルッソの廉価版なのではないか。同時に、そんな思いが頭をもたげてきた。事実、日本に導入されたルッソTには、ルッソより500万円も安価な2,970万円のプライスタグが下げられている。

しかし、イタリア中部に位置するトスカーナ地方の古都、シエナで開催されたGTC4ルッソTの国際試乗会に参加して、その予想はいい意味で裏切られたのだった。

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エクステリアもインテリアもルッソと同じ

フィレンツェの空の玄関口、ペレトラ空港からクルマで約50分。シエナ郊外のリゾートホテルに到着すると、プールサイドに「ネロ デイトナ」というガンメタリック系カラーにペイントされたGTC4 ルッソTがたたずんでいた。「FF(Ferrari Four)」からGTC4ルッソへの進化で、シューティングブレーク風のスタイリングが驚くほど洗練されたのはご存じの通りだが、GTC4 ルッソTも惚れ惚れするほどスタイリッシュなフォルムをまとっていた。なにせ、GTC4ルッソとの違いといえば、4本出しのエグゾースト テールパイプと20インチ ホイールの意匠くらいなのだ。

ドライバーズ シートにおさまっても、その印象は変わらない。レーシーさとラグジュアリーさが見事に融合した、ため息の出るようなデザインコンシャスなインテリアも、GTC4 ルッソと基本的に同一だ。あえて違いをあげるとすれば、インストルメントパネルの助手席前方に設置されたモデル名のプレートに「T」の文字が加えられたことくらいである。車内に張り巡らされた上質なレザーの質感といい、クラフツマンシップを感じさせる丁寧な作り込みといい、相変わらずシートに身を委ねているだけで“ルッソ(ぜいたく)”な気持ちになれる空間である。

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ところが、ステアリングホイールに設置されたスターターボタンを押してエンジンに火を入れると、ドライバーは初めてGTC4 ルッソとの違いを意識させられる。GTC4 ルッソがアイドリング時でもV12ユニットの存在を野獣が唸るようなサウンドでドライバーに伝えてくるのに対し、GTC4 ルッソTのV8はやや音質が低く、良くも悪くも内燃機関の存在感が薄い印象なのだ。もちろんそれは、あくまで大排気量V12ユニットをフロントに宿すGTC4 ルッソとの比較ではあるのだが……。

エンジンスペックを比較すると、GTC4 ルッソの6.3リッターV12は最高出力が690psで、最大トルクが697Nm。一方のルッソTの3.8リッターV8ツインターボは、610psと760Nm。最高出力こそ70ps下回るものの、最大トルクはGTC4 ルッソTが63Nmも上回るのである。さすがに、フェラーリが新世代のV8エンジンとして投入したユニットだけのことはある。

ちなみに、車重はGTC4 ルッソの1,790kgに対しGTC4 ルッソTは1,740kg。50kgのダイエットはすべてフロント部分で達成されており、その結果、前後重量配分はルッソの47:53に対し46:54と、1ポイント後ろ寄りになっている。

実際にGTC4 ルッソTで走り出すと、GTC4ルッソとの違いがさらに際立つのだった。

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似て非なるクルマ

GTC4 ルッソTをドライブして何よりも印象的だったのが、シャープなハンドリングだ。今回の試乗コースはシエナから、中世のたたずまいを今に伝える城壁の村、モンテリッジョーニを折り返す約100kmの道のり。適度にアップダウンを繰り返しながら右へ左へとさまざまな曲率のコーナーがつづくカントリーロードが主体だったのだが、そこでのふるまいは、まさにピュアスポーツそのものだった。

もちろんGTC4 ルッソも、同様のステージで全長5メートル、全幅2メートルに迫らんとするボディサイズを感じさせない程度に軽快な走りを見せてくれる。しかし、GTC4 ルッソTはといえば、むしろ「カリフォルニア T HS(ハンドリング スペチアーレ)」を彷彿させるほどにクルマの動きが俊敏で、ロール量も明らかに少ない。たとえば、コーナーへの進入時にステアリングを切り込むと、GTC4 ルッソよりも明らかに鋭くノーズをインに向ける。

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一方、コーナーの頂点からアクセルペダルを踏込むと、中低回転域からでもレスポンスが鋭いV8ターボの特性も相まって、間髪入れずにリアタイヤが地面を蹴り上げ猛然とコーナー出口へと加速する様が、シートを介してありありと伝わってくる。GTC4 ルッソのハンドリングがオン ザ レールだとすると、GTC4 ルッソTのそれは明らかにFRならではの感覚で、タイトコーナーの立ち上がりではリアが張り出すような挙動さえ示す。アクセル操作での姿勢コントロールをより許容するよう仕上げられているのだ。

パワートレーンや駆動方式の違いのみならず、E-Diff(電子デファレンシャル)」や4輪操舵システムなどの電子制御デバイスも含めてあらゆるファクターが、GTC4 ルッソTはルッソよりスポーティな方向に仕上げられていてるのだろう。とにかく、ワインディングロードでの水を得た魚のごとき軽快な走りは圧巻で、筆者は素晴らしいハンドリングカーぶりに完全に魅了されてしまった。

GTC4 ルッソとルッソTはデザイン的にはほぼ同一だけど、走りのキャラクターについては似て非なるクルマに仕上げられているといっても過言ではない。なるほど、フェラーリがGTC4 ルッソTを、ルッソの後継車でも派生車種でもなく、あくまでニューモデルと主張したわけである。

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フレキシビリティが高いV8ターボエンジン

交通量の少ないカントリーロードから街中の一般道にドライブの舞台が変わると、GTC4 ルッソに対して明らかに乗り味がハードなことに気づく。スピードレンジが100km/h以上ではフラット感のある足回りだが、それ以下の速度域では路面の凹凸を直接的に乗員に伝えてくるのだ。タウンスピードでの快適性は、V12のGTC4 ルッソに軍配があがる。

一方、肝心のV8ターボエンジンは、タウンスピードでもオーバー600psのハイパワーユニットであることが嘘であるかのように扱いやすい。最大トルクの発生回転数は、ルッソのV12ユニットが5,750rpmであるのに対し、ルッソTのV8ターボは3,000-5,250rpm。タコメーターのレッドゾーンも、前者が8,250rpmからなのに対し、後者は7,500rpmから。V12ユニットが回転数の上昇とシンクロさせるかのように甲高いサウンドとパワーを絶頂に向けて高めていくのに対し、低回転域から実直に豊かなトルクを紡ぎ出す。このV8ターボユニットは、V12ユニットのような鳥肌が立つような官能性は希薄だけれど、フェラーリ製スーパースポーツの心臓として申し分のないパフォーマンスを誇るうえに、じつは常用域でも非常に扱いやすい。

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フェラーリGTC4 ルッソが、雪道もふくめて路面や天候を選ばない、最高のGTカーだとすれば、GTC4 ルッソTは紛れもなくフェラーリが誇るピュアスポーツだ。しかも、少々ハードな足回りに慣れてしまえば、フル4シーターというパッケージを武器に、ライフスタイルのさまざまなシーンを彩ってくれるポテンシャルも秘めている。その意味でGTC4 ルッソTは、キャラクターは少々異なれどGTC4 ルッソと同様にフェラーリが誇る最高の「ライフスタイルカー」だと言える。昨年、北イタリアで開催された試乗会でGTC4 ルッソの懐の広さに魅了された筆者だが、今回はGTC4 ルッソTにもすっかり魅せられてしまった。だから、試乗後の筆者の率直な気持ちを言葉にすれば、「ルッソTよ、お前も(私の心を奪うの)か」なのである。

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Ferrari GTC4Lusso T|フェラーリ GTC4ルッソ T
ボディサイズ|全長 4,922 × 全幅 1,980 × 全高 1,383 mm
車両重量|1,740 kg
エンジン|3,855 cc 90度V型8気筒ターボ
ボア×ストローク|86.5 × 82.0 mm
圧縮比|9.4
最高出力| 449 kW(610 ps)/ 7,500 rpm
最大トルク|760 Nm/ 3,000-5,250 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(F1 DCT)
駆動方式|FR
ブレーキ 前|φ398×38mm ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|φ360×32mm ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|245/35R20 / 295/35R20
0-100km/h加速|3.5 秒
0-200km/h加速|10.8 秒
100-0km/h減速|33 メートル
200-0km/h減速|137 メートル
最高速度|320 km/h以上
重量配分|フロント46:リア54
燃費|11.6 /100km(およそ8.62 km/)
CO2排出量|265 g/km
トランク容量|450 リッター
価格|2,970万円

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