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世界で最もエキサイティングなショー 上海モーターショー リポート|Auto China 2017

OPENERS のロゴ OPENERS 2017/06/29 OPENERS
© 情報提供元

いまや北米と並んで世界の自動車の巨大市場となりつつある中国。その中国における最大の自動車ショー「Auto China」が今年も4月末に開催された。北京と上海で隔年の交互となっており、今年は上海が舞台だ。作る側、買う側ともに熱い視線を送るその会場を訪れた大矢アキオ氏が、既存の日欧米系ブランドから新進気鋭の中国ブランドまでを総括する。

Text & Photographs by Akio Lorenzo OYA

中国はEVの主戦場に

第17回上海モーターショーが、2017年4月21日から28日まで市内のメッセで開催された。

今回ワールドプレミアは、113を数えた。4年前は中国市場専用ロングホイールベース、2年前のSUV/クロスオーバーに続くトレンドは?

ひとつはプレミアム・コンパクトセダンだ。

メルセデス・ベンツは「コンセプトAセダン」をワールドプレミア。対するアウディは中国一汽FAWとともにアウディ「A3」を中国初公開した。

あるドイツ系有名サプライヤーの関係者が話すように、中国人ドライバーが求めるのは、「1にブランド、2に燃費、3に快適性」という。政府による中国版エコカー減税の実施で、それらを両立するのは、よりコンパクトかつプレミアムな車種というのは、当然の帰結だろう。

実際、上海の街では2年前と比べて、メルセデス・ベンツAクラス(ハッチバック)が目立つようになった。新世代のドライバーが、よりコンパクトでスポーティーなモデルを求めるようになっているのは明らかだ。

いっぽうで、ワンボックスカーに力を入れるブランドも少なくない。

すでに2016年北京で萌芽がみられたその傾向は、2016年の一人っ子政策廃止による家族人数増加需要をあてにしたものだ。

ゼロ エミッション カーの発表も活発だった。

フォルスクワーゲンは新世代EVの第3弾「I.D.Crozz(IDクロス)」を公開した。アウディも「e-トロン スポーツバック コンセプト」を公開。またボルボは2019年に同社初の電気自動車(EV)を中国南東部で生産開始する。

中国各都市の政府が進める環境汚染対策では、優先的ナンバー交付(上海市)など、ゼロ エミッション カーに対してさまざまな優遇政策が採られている。

こうしたことから、各メーカーは中国をEVの主戦場として位置付けている。さらにボルボは、中国で生産するEVを世界に輸出する計画も発表した。

クルマのファストファッション化が加速

もうひとつ目立つのは、中国メーカーによるデザインへの投資である。たとえば欧州メーカーで実績あるデザインダイレクターのスカウトだ。

「長城汽車」の新ラクシュリー ブランド「WEY」は、BMWで「X5」や「X6」を手がけたピエール・ルクレルクを2013年からデザイン担当副社長に招き入れている。

電池メーカーとしても知られる「BYD」は、アルファ・ロメオで「8C」などに携わり、アウディでも活躍したデザイナー、ヴォルフガング・エッガーを2016年からデザインダイレクターに起用している。

欧州のデザイン拠点やコラボレーターを積極的に活用する動きも以前に増して活発だ。

デザイン力をつけた彼らが、次に見据えるのはヨーロッパだ。かつて進出を企てたものの、意匠権侵害や安全基準への対応の浅さから撤退した中国メーカーだが、近い将来ふたたびヨーロッ

「長城汽車」は、往年のドイツ車ブランド名を借りた「ボルクヴァルト」を欧州で販売するプランがあるという。

かつて英国ブランドとして知られ、現在は「上海汽車」が商標を保有する「MG」は、スポーティーモデルへの回帰を示すとともに、現在イギリスに限られている販売を2019年末に欧州大陸にも拡大する。

「吉利汽車」が立ち上げたミレニアル世代向けとして立ち上げた新ブランド「Lynk&Co」も、2019年前半に欧州と米国に上陸する計画だ。

アップルは、そのクールなデザインをもって、製造国に対するユーザーの偏見を克服した。もはやアップルのプロダクトが中国製であることを気にするユーザーはごく少数派である。「ZARA」や「H&M」もしかり。そのプロダクトの多くがバングラディッシュ製などであることを意識するカスタマーは極めて少ない。

「クルマは高価格品。それはないだろう」と反論する人もいるかもしれない。

しかし、生産地がボーダーレス化したヨーロッパで、「メルセデスやBMWはドイツ工場でなければ」とこだわる人は皆無に近い。

そうした意識がより発展するなか、中国発の復興ブランドや洗練された新ブランドがアフォーダブルな価格で欧州に上陸し、新世代のユーザーたちから「クール!」と声が上がれば、自動車界のアップル&ZARA現象が起こるかもしれない。

出るか、第2のイーロン・マスク

もうひとつ、前回以上に目立ったのは、数々のスタートアップ企業の存在だ。

たとえば「蔚来(NIO)」は、自動運転機能を備えたスーパースポーツカーをその知名度とは裏腹に5台並べて展示。あたかも量産への意気込みを示すようなパフォーマンスは、プレス関係者の度肝を抜いた。

1980年代に映画にもなったプレストン・トーマス・タッカーは、第二次大戦後の米国で多くの出資を集めながらも既存メーカーの圧力に屈して破産。詐欺で訴えられ、勝利したときにはすでにすべての精力を削がれていた。

「バック・トゥ・ザ・フューチャーのタイムマシーン」として知られるデロリアンを創り上げたジョン・ザカリー・デロリアンも、一流デザイナーやエンジニア、そして国さえ巻き込んだプロジェクトを立ち上げながらも、麻薬おとり捜査に引っかかり、一気に破滅へと追い込まれた。

クルマのビジネスは、新参者にとって極めて勝率の低い世界だ。

それでも、「EV」と「自動運転」という、131年つづく自動車史における歴史的転換点を好機ととらえ、イーロン・マスク氏のライバルとならんとする企業がいくつも現れる。

欧州・米国のいわば成熟化したショーと対照的に、上海は世界で最もエキサティングなモーターショーであるのだ。

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