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なぜダメなの?未成年の飲酒 脳の海馬にもダメージ

NIKKEI STYLE のロゴ NIKKEI STYLE 2020/10/18 11:00

未成年に対するアルコールの影響を正しく認識していますか? (c)imtmphoto-123RF © NIKKEI STYLE 未成年に対するアルコールの影響を正しく認識していますか? (c)imtmphoto-123RF

この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!

【問題】法律で禁じられている未成年の飲酒。未成年の飲酒は、体に悪影響を及ぼすことは広く知られています。この未成年の飲酒についての以下の記述のうち、間違っているものを一つお選びください。

(1)脳への影響が、成人よりも大きい

(2)未成年の飲酒は増加傾向にある

(3)飲酒開始年齢が早いほど、アルコール依存症になりやすい

(4)急性アルコール中毒のリスクが高まる

答えは次ページ

■答えと解説

正解(間違っている記述)は、(2)未成年の飲酒は増加傾向にあるです。

「お酒は20歳から」――。未成年の飲酒が法律で禁じられていることを知らない人はいないでしょう。なお、2022年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられますが、飲酒は20歳以上というのは変わりません。

未成年の飲酒は体に悪影響を及ぼします。しかし、具体的にどのような害があるのかを子どもたちにきちんと説明できる人は少ないのではないでしょうか。未成年に対するアルコールの害や未成年の飲酒事情に詳しい久里浜医療センター院長の樋口進さんはこう説明します。

「未成年者の飲酒はさまざまな弊害があります。特に脳に対する影響が最も研究されています。具体的には、アルコールによる脳の神経細胞の障害作用は、成人よりも未成年者のほうが大きいのです。記憶に関わる海馬に対するダメージは大きく、これによって記憶機能が低下する可能性があります」と樋口さんは話します。

「大量飲酒をした場合、まったく飲まない未成年と比較して、海馬の容積が明らかに小さいことも分かっています。これはアルコールによって海馬の神経細胞が死に、容積が小さくなったということです」(樋口さん)

未成年の大量飲酒は脳萎縮を起こす

12人の未成年のアルコール使用障害患者(アルコールの飲み方に問題がある人)と24人の健常者で脳の海馬の容積を比較した。その結果、未成年のアルコール使用障害患者の海馬は健常者に比べて小さくなっていた。(Am J Psychiatry. 2000;157(5):737-744.) © NIKKEI STYLE 12人の未成年のアルコール使用障害患者(アルコールの飲み方に問題がある人)と24人の健常者で脳の海馬の容積を比較した。その結果、未成年のアルコール使用障害患者の海馬は健常者に比べて小さくなっていた。(Am J Psychiatry. 2000;157(5):737-744.)

樋口さんは、大人の脳が完成するのは20歳前後なのだと話します。「人間の脳は生後6歳までに大人の大きさの90~95%になります。脳内の細胞の成長のピークは男子が11歳、女子が12歳半ですが、20歳前後まで成長が続き、その後、成熟した脳へと変化していきます」(樋口さん)。

さらに樋口さんは、未成年の飲酒は、血中アルコール濃度が上がりやすく、急性アルコール中毒のリスクが高まると警告します。

「人間の未成年者に飲酒させることはできないため、人間を対象にしたデータはありませんが、動物を対象にした研究が多数あります。未成年に相当するラットと成人に該当するラットに同量のアルコールを投与して比較した研究では、未成年のラットは成人のラットより、血中アルコール濃度、脳内アルコール濃度が高くなり、アルコールの分解速度が遅いという結果になりました(Alcohol Clin Exp Res. 1987;11(3):281-286.)。人間においても同様の傾向になると推測されます」(樋口さん)

また一般的に「飲酒経験がないほど、脳が敏感に反応し、酔いの程度が強くなる」と樋口さん。自分の適量すら分からない未成年は、酒のやめ時を知りません。急性アルコール中毒になるリスクは大いにあるのです。

■飲み始めるのが早いほど、依存症のリスクが

体への影響はまだあります。「未成年者の飲酒は、性ホルモンのバランスにも影響します。未成年のうちに飲酒を続けると、男子ではインポテンツ、女子では月経の周期が乱れたりするリスクが高まります。また骨の発育が遅れるという報告もあります」(樋口さん)

未成年飲酒は心や行動にも大きく影響します。

「未成年飲酒は社会的逸脱行為を招きやすいことも知られています。未成年は成人に比べ、飲酒による行動抑制がききにくいのです。代表的なものが飲酒運転です。また、性的な問題行動に発展しやすいことも指摘されています」(樋口さん)

さらにこんなリスクもあります、と樋口さんは続けます。「疫学調査から飲酒開始年齢が早いほど、成人になってから大量飲酒になりやすく、さらには短期間でアルコール依存症になりやすいことが分かっています。アメリカの4万2862人を対象とした調査では、飲酒開始年齢が早いほど、アルコール依存症の生涯有病率が高くなる傾向があるという結果が出ています(下のグラフ)」(樋口さん)

飲酒開始年齢が低いほど依存症になりやすい

アメリカ在住の18歳以上の4万2862人を対象に、アルコール依存症の生涯有病率と飲酒開始年齢を調べた。飲酒開始年齢が早いほど、依存症の生涯有病率が高くなる傾向が見られた。(Alcohol Health Res World. 1998;22(2):144-147.) © NIKKEI STYLE アメリカ在住の18歳以上の4万2862人を対象に、アルコール依存症の生涯有病率と飲酒開始年齢を調べた。飲酒開始年齢が早いほど、依存症の生涯有病率が高くなる傾向が見られた。(Alcohol Health Res World. 1998;22(2):144-147.)

■未成年の飲酒は減っている

では、未成年の飲酒の現状はどうなっているのでしょうか。最近は、若者がお酒を飲まなくなっているという話も耳にします。

「中高生の飲酒経験などを調査した結果によると、未成年の飲酒は減少傾向にあります(*1)。例えば、1996年と2014年の中学生男子を比較してみると、飲酒経験は73.5%から25.4%と約3分の1に減っています。中学生女子、高校生男女も同様の傾向にあります」(樋口さん)

未成年の飲酒そのものは減っているようですが、「減っている」というだけで「完全になくなった」わけではありません。

「昨今はアルコール全体の消費量が落ちているのと、スマホやゲームなどレジャーの多様化の影響もあり、未成年飲酒はかなり少なくなりました。コンビニで年齢確認が必須になるなど、入手しにくくなっていることも影響していると考えられます。しかし家にアルコールが置いてあることで、手を出してしまう未成年も少なくありません。事実、データを見ると未成年の酒の入手経路は自宅がトップになっています[注1]。未成年飲酒をなくすには、家族はもちろん、メーカー、小売業、地域、学校など多面的なアプローチが必要です」(樋口さん)

[注1]厚生労働科学研究「未成年者の喫煙・飲酒状況に関する実態調査研究」のデータ

[日経Gooday2020年9月28日付記事を再構成]

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