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肺炎・脳梗塞・ストレス… 声は健康のバロメーター

NIKKEI STYLE のロゴ NIKKEI STYLE 2018/12/05 11:00
写真はイメージ=PIXTA © NIKKEI STYLE 写真はイメージ=PIXTA

「声がかさつくようになった」「話が聞き取りにくいと言われることが増えた」など、自分の声の変調に心当たりはないだろうか。声は肺炎や脳梗塞などになるリスクを知らせてくれる健康のバロメーターだ。人の耳では気づかない微妙な声の変化を解析して、心の健康維持につなげるサービスも始まっている。

「『あー』と声を出してみて、声が10秒続かなかったら黄信号です」。国立病院機構東京医療センターの角田晃一医師は指摘する。息が漏れるばかりで声にならない「かすれ声」を加齢のせいと諦めるのは禁物だ。

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声がかすれる原因は声帯の異常にある。左右2枚の薄い膜からなる声帯は、閉じたり開いたりすることで肺につながる気管の蓋をする役目を担っている。さらに声帯がぴったり閉じた状態のところを呼気が通過すると、膜が細かく振動して声になる。

ただ、加齢によって声帯やその周辺の筋肉が萎縮すると、2枚の膜がぴったり閉じず、声を出すときに呼気が隙間から漏れ出してしまう。声がかすれる原因だ。

角田医師は「声帯の萎縮は健康を脅かす」と警鐘を鳴らしている。一つは誤嚥(ごえん)性肺炎。健康なら食道に流れる食べ物や液体が気管に入り込んでも、声帯がブロックし、むせることで異物を押し返すことができる。しかし声帯が萎縮すると、異物の流入を防げなくなり、肺炎につながるおそれがある。

さらに、肺に息をため込めなくなるため、全身に力を入れて踏ん張ることも難しくなる。歩くときや立ち上がるときに力を入れられず転倒につながることもある。

声の響きが悪く、くぐもって聞こえる場合にも注意が必要だ。首が不自然に曲がって、頸(けい)動脈の一部に負荷がかかっており、脳梗塞につながる恐れがある。角田医師は「声の変調は自分では気がつきにくい。少しでも気になったら、耳鼻咽喉科を受診してほしい」と呼びかけている。

声に注目して心の健康を計測するサービスも始まった。

日立システムズの「音声こころ分析サービス」は声でストレスの状態を計測できる © NIKKEI STYLE 日立システムズの「音声こころ分析サービス」は声でストレスの状態を計測できる

日立システムズが東京大学と共同で開発した「音声こころ分析サービス」ではスマートフォン(スマホ)に向かって話しかけるだけで約1分間で心のストレス状態を測れる。「ストレスを客観的に見えるようにして、息抜きや業務の改善などに生かしてほしい」(日立システムズ)という。

なぜ声に注目したのか。開発に関わった日立システムズの山下兼一主任技師は「声には本人にコントロールできない要素があり、ごまかせない」と明かす。音声こころ分析サービスでは、スマホに表示された短い文を読み上げ、声の周波数を解析してその日のストレス状態を数値で示す。

脳にストレスがかかると、のどの筋肉が緊張し、若干声が高くなる現象に注目した。人の耳では聞き分けられないくらい微細な周波数の変化を捉えるため「声色を変えようとしても見破れる」(山下氏)という。

アンケート形式でストレスをチェックすることは多いが、自分を偽って答えることもできる。同社は社員のストレス状態を正確に把握できなければ、職場改善はむずかしいとみて新サービスを開発した。自分でも意識していなかったストレスを捉えることができれば、対策を早めに打つことも可能になるだろう。

◇  ◇  ◇

■声帯鍛えて誤嚥防止を

病気の予防や初期症状で抑える「未病」に対する注目が高まっている。症状を悪化させず健康な体を保つことは、患者本人の生活の質を維持するだけでなく、高度な医療を受ける患者数を減らし、国民医療費の膨張を抑えられる点でも意味がある。

厚生労働省の人口動態統計によると、2017年に誤嚥(ごえん)性肺炎で亡くなった人は約3万6千人。死因の中で7番目に多かった。

角田晃一医師は誤嚥を防ぐために声帯やその周りの筋肉を鍛えるトレーニングを推奨している。体に力を入れたり抜いたりする運動を繰り返し、力を入れる瞬間に短く声を発する。

1カ月間続けた患者のうち、9割以上に誤嚥症状の改善がみられたという。ちょっとしたトレーニングだが、誤嚥の苦しさを体験しなくて済むよう、継続したい。

(桜井豪)

[日本経済新聞夕刊2018年11月28日付]

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