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ビジネスにもGショック 「生活の道具に」石津祥介氏

NIKKEI STYLE のロゴ NIKKEI STYLE 2020/05/29 11:00
石津祥介さんは「時計はもっと生活に密着した、生活用具であるべきですよ」と話す © NIKKEI STYLE 石津祥介さんは「時計はもっと生活に密着した、生活用具であるべきですよ」と話す

衝撃に強いタフな時計の代表格であるカシオ計算機の腕時計G-SHOCK(Gショック)は、これまでアウトドアやオフの場でのニーズが主体だったが、最近はビジネスシーンでの着用例も目立ち始めた。従来型の腕時計の市場がスマートウオッチやスマホに侵食されつつあるなかで、Gショックは今後、どんな個性を打ち出して存在感を高めようとしているのか。さらには、時計そのものに対する消費者のニーズはどのように変容するのだろうか。前回に続き、服飾委評論家、石津祥介さんが、カシオ計算機の時計企画統轄部商品企画部の泉潤一さんとテレビ会議で語り合った。(この記事の〈上〉は「Gショック、機能で勝負する時代開いた」石津祥介氏)

■ビジネスシーンに合わせやすい「薄型」「メタル」モデルも

――最近、Gショックは年間100モデル以上の新作を出していますね。アーティストとのコラボなど限定品もコレクターに人気です。歴代モデルでもっとも売れた商品はどれですか。

泉「Gショックは2017年に世界累計1億個を出荷しました。その中でも特に人気が高いマスターピース(傑作)が、1995年に生まれた6900シリーズです。このモデルはファンの間では『3つ目』と呼ばれています。丸形で、3つの目玉(インジケーター)があり、大型のフロントボタンがある独特のデザインです。この6900をベースにデザインした商品群は多いんですよ」

人気の6900シリーズは、そのデザインからファンの間で3つ目と呼ばれる © NIKKEI STYLE 人気の6900シリーズは、そのデザインからファンの間で3つ目と呼ばれる ビジネスマンを意識した薄型モデルも展開している(GA-2100) © NIKKEI STYLE ビジネスマンを意識した薄型モデルも展開している(GA-2100)

――男性用時計の売れ筋では近年、小径・薄型モデルが台頭しています。Gショックでは分厚くて大きい商品が引き続き人気ですか。

泉「Gショックといえば、ゴツゴツしてボリュームのある商品がラインアップのほとんどを占めていました。ただ、ご指摘のように近年は薄型ニーズが高まっているので、GA2100という薄型モデルを投入しました。今のところ大変好評です」

石津「どのくらい薄いの」

泉「通常のGショックの半分くらいで、過去最薄です」

石津祥介さんとテレビ会議で話すカシオ計算機時計企画統轄部商品企画部の泉潤一さん © NIKKEI STYLE 石津祥介さんとテレビ会議で話すカシオ計算機時計企画統轄部商品企画部の泉潤一さん

――これならビジネススタイルにも合いそうですね。

泉「ビジネスに合わせることを意識して、樹脂で覆うタイプではなく、外装パーツをメタルにしたラインを強化しています。Gショックは派手なので今まで着けたことがない、といったお客さまにも手に取ってもらえるようになりました」

――仕事の装いは今後、ますますカジュアル化が進みそうです。Gショックには追い風でしょうね。

泉「はい。以前は、Gショックを着けて会社に行くのはさすがにダメだろう、と考える方も多くいたようです。でも、職場のスタイルが多様化して、今は逆にGショックが『ハズしのアイテム』として使われることが増えましたね」

石津「コロナ禍で巣ごもりしている人たちは今、アウトドアライフに憧れるているはずです。これが収束すれば、広い意味でのスポーツ時計が生活スタイルに浸透していくでしょう。でもね、カシオさんなら、これが時計なの?って驚かせるようなものを出してほしいよね。そこまでしないと、時計の需要をスマートフォンに持って行かれてしまう」

「これが時計なの?って驚かせるようなものを出してほしいよね」 © NIKKEI STYLE 「これが時計なの?って驚かせるようなものを出してほしいよね」

■スマートウオッチへの対抗策は

――時計ブランドでもスマートウオッチを投入する企業が増えていますし、アップルウオッチもライバルでしょうね。

泉「数年前から時計市場をスマートウオッチが侵食し始めています。時計は、技術の進化という点では踊り場にきていると思います。では、次に進むべきステップは、といえば、当然ながらテクノロジー以外の部分になるでしょう。たとえば本体への加飾技術に凝り、Gショックならではのカラーリングや模様を施したラインアップを仕込んでいるところです」

――昨年発表した商品群でも、レーザー加工でメタルに迷彩柄を施すなど「CMF」(カラー、マテリアル、仕上げ)にこだわっていましたね。

石津「でもね、もう、腕時計の観念から離れてもいいんじゃない。僕は車がガソリンから電気に変わったのに、相変わらずガソリン時代の車の形を引きずっていることに疑問を乗っています。時計はもう、腕からも離れて、ボタンを押せば壁にも手のひらにも投影できるとか、首に付けるとか、ぐにゃぐにゃ曲がるとか、方向性を変えていってほしいよね」

――今や服もアイテムやデザインでは新味が出しにくくなっています。温まる服、といったような、これまでにない仕組みで勝負する局面にさしかかっているのでは。

石津「着る服そのものを変えていかなければいけない。僕がまさに危惧しているのは地球温暖化です。気温がこれだけ高まると、『昔はコートなんてものを着ていたらしいね』と話す時代が来るかもしれない。腕時計も新しい意味での進化が起きるはずです。昔は部屋の壁掛け時計は大切なインテリアでしたが、今じゃ壁掛け時計はあまり見かけません。スマホでもテレビでも代用できますから」

■腕時計、発展の方向性は「自然を知る」

――ライフスタイルの劇的な変化が時計の革新を促しますよね。

泉「発売したばかりの最新モデルG-SQUADは心拍数を計測でき、全地球測位システム(GPS)機能を搭載しています。心拍数や走行速度から酸素の最大摂取量を算出できたり、専用アプリでスマホとつないでトレーニング管理ができたりします。本格的なワークアウトをサポートするGショックです」

心拍数の計測などワークアウトに最適なG-SQUAD © NIKKEI STYLE 心拍数の計測などワークアウトに最適なG-SQUAD 最新モデルを展示する旗艦店G-SHOCK STORE OSAKA(大阪市) © NIKKEI STYLE 最新モデルを展示する旗艦店G-SHOCK STORE OSAKA(大阪市)

石津「天気予報はないのかな。最近、天気予報を気にする人が多いでしょう」

泉「Gショックの派生ブランドである『トレック』は山登りの人に向けた時計で、高度や天気予報、気圧変化などがわかります」

――サーファー向けに、潮位がわかるGショックもありますね。

石津「そこまで細かくなくていいな。明日の朝、通勤時の気温が分かるくらいでいいんだよ。時計はもっと生活に密着した、生活用具であるべきですよ。特に女性にはそのほうが受けそうだね」

――まだまだ時計の機能は進化の余地がありそうです。

石津「時計は面白い。時を計る機械なのに、アクセサリー性とか、気分をどう盛り上げるかという道具でもある。僕は、これから時計は自然を知る機械として発展していくと思う。サーファー、漁師、アルピニスト。みんな知りたいことが違うから、それに合わせてどんどん機能が広がる可能性がある。でも僕は明日の天気と気温だけで十分。余分な機能は盛り込まずシンプルにして、精度を追求してほしい。だって、いつもテレビの天気予報で服装を決めて、失敗するんだもの(笑)」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)

石津祥介

服飾評論家。1935年岡山市生まれ。明治大学文学部中退、桑沢デザイン研究所卒。婦人画報社「メンズクラブ」編集部を経て、60年ヴァンヂャケット入社、主に企画・宣伝部と役員兼務。石津事務所代表として、アパレルブランディングや、衣・食・住に伴う企画ディレクション業務を行う。VAN創業者、石津謙介氏の長男。

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