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「嫌われたくない」「任せられない」という感情の克服方法

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2019/08/14 06:00 小巻亜矢

 ハローキティをはじめ、サンリオのキャラクターたちに触れ合える屋内型テーマパーク「サンリオピューロランド(以下、ピューロランド)」。今、「“SNS映えしすぎる”テーマパーク」としても話題で、若い女性たちを中心に賑わっています。同時にピューロランドとピューロランドの館長である小巻亜矢氏が、テレビ等で取り上げられ大きな話題となっています。

話題となっている理由は、ピューロランドが笑顔と活気にあふれるようになったのは最近のことで、5年前まではスタッフに笑顔は少なく、経営的には赤字が続く危機的な状況でした。そこから平日1日の来場者を一気に4倍まで増やし、奇跡ともいえるV字回復を果たしたのです。同じ施設、同じスタッフで果たした奇跡の再生の秘密は、スタッフたちのモチベーションと行動を変えた「人づくり」にありました。

 そのきっかけを作ったのは、「エンタメ業界の素人」を自認していた小巻亜矢さん。(株)サンリオに新卒で入社したのち一度は専業主婦になり、その後は化粧品事業など現在の業務とはかけ離れた仕事をしていたのに、サンリオグループ企業へ復帰後にちょっとしたきっかけが転じて、想定外のピューロランド館長に。

その小巻さんはこの6月、ピューロランドを運営する(株)サンリオエンターテイメントの代表取締役社長に就任しました。今回は社長就任と、ここまでのすべてをまとめた『サンリオピューロランドの人づくり』(ダイヤモンド社)の出版を記念して、これまでの経緯や今後の豊富について語ってもらいました。

他人からどう思われるかは

コントロールできないと割り切る

 部下への接し方に悩まれている方々からは、「嫌われたくない」「任せられない」という声を多く聞きます。リーダーとして大事な任務に「人づくり」がありますが、人づくりのためには、この2つの感情は克服しなければなりません。今回はこの2つの悩みに対する私の解決方法をお話ししたいと思います。

 無意識であっても「嫌われたくない」という感情が行き過ぎてしまうことや、よかれと思って自分の価値観や流儀を押しつけてしまうことがあります。

 これは自分のストレスにもなりますし、相手の成長機会を奪うことにもなりかねません。実は今でこそ他人にどう思われるか、を必要以上に気にすることがなくなった私も、化粧品販売の仕事にのめり込んでいた30代後半ごろは、特にその傾向が強かったように思い出されます。

 詳しくは拙著『サンリオピューロランドの人づくり』に記しましたが、その化粧品販売の仕事に就くまでには、新卒で就職した株式会社サンリオを結婚退職してから11年間もの間を専業主婦として過ごしたブランクがありました。しかも、子どもの事故死、それを契機とした離婚などもあり、経済的自立や存在意義の確立のために必死にもがいていました。

 もともと結果を出すために力を尽くしたい気持ちが強い性格に加え、このような経緯があるだけに新たに就いた仕事にのめり込み、常に表彰されるほどの結果に結び付きました。

 すると、教えを請われることもある一方で、激しい嫉妬の的にされることも。

 私も嫌われたくなくて、人一倍、八方美人なところがありました。もともと、おせっかいを焼きすぎた時期もあったし、自分がよかれと思うことを他人に押し付けた時期も長くありました。

 でも、後になって振り返れば、「私のよかれはその人にとっていいとは限らない」ということを、身をもって学んだ貴重な経験です。好かれようとしても嫌われることはありますし、嫌われてもいいと思って接していても慕われることがあるものです。

 つまり、どう思われるかをコントロールすることは、不可能なのです。

「嫌われるかも」と恐れない

ただし、言い方には配慮する

 ですから、仕事でもプライベートでも「嫌われるかもしれないから、これは言わないでおこう」とは思いません。

 ただし、言い方には気をつけます。サンリオピューロランド館長の立場であれば、「どうすればピューロランドが良くなるか」「相手も自分も成長できるか」を念頭に話すことで、どこかに「自分はもう変わらない」という意識のある相手でも聞いてくれますし、ほんの少しでも成長する瞬間は訪れます。

 ただ、ここで押しつけたり過保護になったりするのは、相手のためにも良くないこと。失敗したり壁にぶつかったりする経験は、成長に不可欠です。

 リーダーとして必要なお膳立てはしますが、「大丈夫、できるから」と信じて、手を離すようにします。

実験で生徒の成績を向上させた

「ピグマリオン効果」とは?

 私は、51歳から東京大学大学院の教育学研究科で心理学を学んだのですが、教育心理学では、教師が「できる」と期待して接すると生徒の成績が向上する「ピグマリオン効果」が知られています。

 簡単に言うと、「あの人はダメだ」「あの人にはできない」と思っていると、本当にその人はダメになってしまう。「転ぶ、転ぶ」と思っていると、本当に転ぶ確率が高まるというものです。

 これは実験でも確認されていて、学級担任に無作為に選ばれた生徒の名簿を渡して「今後、数ヵ月の間にこの生徒は成績が伸びます」と伝えたところ、その生徒は実際に成績が伸びたというのです。学級担任の接し方と、期待に応えようとした子どもたちの連鎖から生まれた結果だと分析されています。逆説的には、「できないのでは」と疑いながら手を差し伸べることは効果的だと言えません。

 ここから言えるのは、できると信じることが本人の成長につながるということです。この研究結果を知ってから、子どもも部下も「できないんじゃないか」と思って手を差し伸べてはいけないと思うようになりました。

 信用して任せたり、待ったりすることは面倒で大変なことです。いっそ自分でやってしまったり、担当を交代させたりした方が楽だと思うこともあるでしょう。

 でも、「みんな大丈夫、絶対に大丈夫。自分で解決する力がある」。

 つらいことがあっても、理不尽なことをされているのを見ても、安易に手を貸すのではなく「立ち上がる力がある」と信じて見守る。失敗したり壁にぶち当たったりしていても、「いい経験をしている」と思って、待ってあげることも必要です。

 もちろん、リーダーや管理職として必要なことはします。ある程度のお膳立てはしますし、仕掛けも作ります。でも、ある程度のところまできたら思い切って手を放します。「大丈夫、いい成長をしてね」と。

 この間も、こんなことがありました。すれ違ったスタッフの表情が暗いので「大丈夫?」と声をかけたところ、「大丈夫です」と返ってきました。

「でも、ちょっと表情が暗くない?」

「いや……。ちょっと落ち込んでいて」

「落ち込んでるって、何? どうしたの?」

「実はちょっと、外部の取引先がへそを曲げてしまって。すいません愚痴って」

「いやいや、愚痴はどんどん吐いてよ。ためちゃダメだよ、体の中で腐るから」

 そう言ってひとしきり毒を吐いてもらって、最後に「大変そうだけど、私は何かしたほうがいい? 何もしないほうがいい?」と聞いたら、「いいっす、いいっす」と。

「どのくらいの時間で整理できそう?」

「2ヵ月くらいあれば大丈夫です」

 どうすればいいか。答えは本人の中にあるのです。

 悩んだり、壁にぶつかったりすることで人は成長します。成長の機会を他人が奪ってはいけないのです。

 信じているから大丈夫だと、自分に言い聞かせる。そして、そっと背中を押す。

 こう考えられるようになったら気持ちが楽になったし、社員やアルバイトスタッフたちも見守ることが楽しくなりました。

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