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ジョブズが部下を「クソ」と罵った深すぎるワケ 最強企業の秘密は「キツイ」マネジメント

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/03/22 07:10 キム・スコット
故スティーブ・ジョブズは驚きの方法で、部下たちと「正解」を導き出していました(写真:fizkes/iStock) © 東洋経済オンライン 故スティーブ・ジョブズは驚きの方法で、部下たちと「正解」を導き出していました(写真:fizkes/iStock)

アップルの創業者、故スティーブ・ジョブズは伝説的経営者として今も多くのビジネスパーソンから愛されている一方、気性の激しさを物語るエピソードにも事欠かない。だが、ジョブズの苛烈なマネジメントスタイルには、それを採用する深いわけがあった。

アップルやグーグルの管理職研修プログラムの開発に携わったキム・スコットの書籍『GEAT BOSS シリコンバレー式ずけずけ言う力』から、そのエピソードを紹介する。

「クソ」の正体は何か?

 「お前の仕事はクソだ」

 こんなの、普通は口に出していいことじゃない。

 いじめのようにもとれるし、「クソ」なんて言われて相手との信頼が築けるとは思えない。

 だが、この言葉をたびたび口にし、世界最強企業を作った経営者がいる。スティーブ・ジョブズだ。

 テクノロジージャーナリストのボブ・クリングリーは、スティーブ・ジョブズのドキュメンタリーの中で、ジョブズにこの言葉の意味を聞いたことがある。

クリングリー:「お前の仕事はクソ」だって言うのはどういう意味かな?

ジョブズ:普通は、仕事がクソだって意味。たまに、「その仕事がクソだって僕は思う。でも……僕が正しいとは限らない」って意味のこともある。

インタビューの後半で、ジョブズはその言葉の真意を説明した。

ジョブズ:本当に優秀で、本当に頼りになる相手のために自分ができるいちばん大切なことは、彼らがそうでないとき──彼らの仕事が期待以下だったときに、それを教えてあげることだと思う。

注目すべきは、「彼らが期待以下だったとき」とは言っていないことだ。「彼らの仕事が期待以下だったとき」と言っている。ジョブズが個人攻撃をしないよう気をつけていることがわかる。この区別は重要だ。

その人の行動の中にある欠陥を探すより、その人自身の性格のせいにするほうが簡単だ。「だらしない」と責めるほうが、「このところ夜も週末も働き詰めで疲れているから、論理の間違いに気づけなくなっているよ」と指摘するよりたやすい。だが、性格を責めても、その人の助けにはならない。

ジョブズ:はっきり伝えて、理由を説明し……そして本来の軌道に戻す。相手の能力を信じていることを伝えながら、解釈の余地を残さないよう指摘しないといけない……すごく難しいことだけど。

ののしったり怒鳴ったり失礼な態度を取ってもいい、と言いたいわけではない。それは勧めない。「お前の仕事はクソだ」と言われたら、大抵の人は自分の能力を疑われたと思うだろう。こんな言葉遣いを正当化するつもりはさらさらない。

 けれど、この言葉が見かけほど悪くない場合もいくつか考えられる。例えば、すでに多くを達成している人に対してはとくに、何らかの極端な方法で気を引かなければ、批判的なメッセージが届かない。ジョブズは、批判が危険な綱渡りのようなものだと的確に表現していた。相手の能力を信じていることを確実に伝えつつ、同時にその人の仕事が期待以下であることをはっきりさせるのは、至難の業だ。

 もちろんそのためには、前提として、基礎になる人間関係が重要だ。

なぜジョブズは「つねに正しいこと」をできるのか? 

 わたしがグーグルを退社してアップルに入社すべきかを相談したときのことだ。インテルの伝説のCEO、アンディ・グローブはこう吠えた。

 「スティーブのクソ野郎、あいつはいつも正しいことをやる」

 冗談だと思って笑ってしまったが、アンディは思い切り頭を振ってみせた。「違う。わかってないな。ヤツは本当にいつも正解を出す。エンジニアみたいに正確なんだ。冗談でも誇張でもない」。

 わたしが育ちざかりのグーグルからアップルに移りたくなった理由の1つは、強引な経営者のいる会社がどんなものか見てみたいと思ったからだ。社員への命令が効くのかを見てみたかった。それがアップル流のやり方だと思っていた。ビジョナリーのスティーブ・ジョブズが社員に命令する姿を思い浮かべていた。それでもまだ、アンディは大げさだと思った。いつも正しいってことはないでしょ?

 「いつも正しい人なんています?」

 「スティーブがいつも正しいって言ったんじゃない。いつも正しいことをやるって言ったんだ。ヤツは間違っていても、しつこく言い張る。すると周りが違うと教えてくれて、あいつは最後にいつも正しい場所にたどり着く」

 アップルに入社した後、アンディの言葉が正しかったことがわかった。スティーブは、自分が間違っていたとわかれば喜んで、しかも熱を込めて自分の意見を変えることも多かった。

 とはいえ、決して穏やかに「君は正しい、僕が間違っていたよ」と納得したわけではない。スティーブの心変わりの激しさに頭にきている社員は多かった。

俺の間違いを正さないお前が悪い!

 ある同僚は、スティーブと議論になり、納得できなかったけれど結局自分が引き下がったと話してくれた。その後、わたしの同僚の意見が正しかったことが明らかになると、スティーブはずかずかと彼のオフィスにやってきて怒鳴りはじめた。「でも、あなたのアイデアですから」と同僚は言った。すると、スティーブはこう返した。「そうだ、俺が間違っていると説得するのがお前の仕事なんだ。そうできなかったのはお前のせいだ!」。それからは、彼はもっと激しくスティーブに反論し、どちらかが正しいと納得するまで徹底的に議論した。

 スティーブは自分の間違いを認め、周りの人たちに徹底的に反論させることで、正解にたどり着いていた。スティーブ流は誰にでも真似できるものではない。彼は恐れず反論してくれる人を雇い、もっと大胆になるように励ました

 別の友人も、スティーブと言い争ったときのことを教えてくれた。彼女はスティーブが間違っていると説得できたものの、スティーブは彼女のアイデアをまるで自分が前から考えていたように披露した。スティーブは正解を得ることに集中するあまり、それが誰のものかなど気にしていないだけだろうと彼女は思った。とはいえ、そんなやり方は、手柄が欲しい人にはムカつくものだ。

 しかし、間違いを恐れず、自分が正しいかどうかより、正解にたどり着くまで周りの人に反論してもらうおうとつねに努力することが、アップルの並外れた実行力につながっていたということは事実だろう。

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