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「無駄話」を嫌うと人間関係はギスギスする お互いの心を豊かにする効能も

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/08/07 14:00 江口 克彦
無駄話ができるということは、それだけの話題を持っていることの証拠でもある(写真:葦風 / PIXTA) © 東洋経済オンライン 無駄話ができるということは、それだけの話題を持っていることの証拠でもある(写真:葦風 / PIXTA)

松下幸之助氏(パナソニック創業者)のもとで23年側近として過ごした江口克彦氏。若手ビジネスパーソン向けの連載として好評だった「上司と部下の常識・非常識」に続いて、「50歳からの同調圧力に負けない人生の送り方」について書き下ろしてもらう。

これまでに多くの人たちを見てきたが、男性は、目的のある会話、結論のある会話を求めたがる。目的のない会話には、すぐに倦きる。とりとめのない会話が始まるとすぐに苛立つ。

 職場では特にそうだ。無駄話をしている同僚を見ると、怠けているようにしか思えない。プライベートでも同じく、「呑んで呑まれて、呑まれて呑んで」と酔っ払っているとき以外は、無駄話、雑談に花を咲かせることを好まない。

 とりとめもない話が始まると、すぐにイライラしだす。「結論→理由」の順番で話すように促す。すぐに相手の話を遮断して話の内容を要約・整理しようとする。結論なく話が続くと、下手に結論を促すような相づちを打って、余計にお互いにイライラして、不愉快な気持ちになったりする。

 定年退職して職場を離れたような男性にも、そういうイライラする人がいかに多いことか。男性というものは、「結論のない話」を嫌うようにできているのかもしれない。

無駄の効用

 しかし、そういう結論を急ぐ話し方ばかりしていて、人生を面白くすることができるかと言えば、そうではない。喫茶店などで周辺の女性たちを見てみるがいい。一見無駄話に思えても、楽しい花を咲かせている女性たちの様子を見れば、それは確かだ。

 それに、「無駄の効用」というか、「無意味の必要性」というものもあることも知っておくべきである。

 車のハンドルにも「遊び」がある。遊びがあるからこそ、安全運転が可能になる。道や橋なども同じこと。論理的に考えれば、渡る人の足の広さ、場所だけあればいいのかもしれない。しかし、そうではなく、道や橋には、余裕がある。随分と無駄なスペースがある。しかし、だからこそ人は、安心して渡ることができるのである。

 なにより、無駄話ができる、雑談ができるということは、それだけの話題を持っていること、知識を持っていること、人生の経験をしていることの証拠でもある。

 例えば相手を訪問する直前に、交通事故を見たとする。「見ましたよ」と言うだけでは雑談にならない。それから、自動車の安全性について、あるいは、無人自動車の現状について、さらには人工知能やロボットの話、加えて、技術の将来性などについて、どんどん脱線して話をすれば、どれだけ楽しいことか。

 あるいは、仕事の話から、「日本経済が低迷したのは、アメリカ式経営を安易に取り入れたからではないか。日本人の強さは昔から、外国から文化を取り入れても、必ず日本化してきたのに最近はそれができていない」など、得々と持論を展開していってもいいだろう。

 そのような雑談、無駄話をするためには、相当な知識の蓄積がなければならない。雑談や無駄話は蓄積がある証拠でもあると言える。

無駄話によって相手と気持ちが通じ合う

 雑談、無駄話ができる人は、実は「話の達人」「話の巧者」「場を楽しくする名人」。実際のところ、無駄話、雑談のほうが、本筋、本論よりも相手の心を伸びやかにし、本当の姿、本当の心、本当の思いを出させやすくする。その無駄話によって、相手と気持ちが通じ合う。意気投合する。議論が弾み、お互いの心が豊かになる。

 孫子の兵法ではないが、やはり、「彼を知り、己を知れば、百戦して殆(あや)うからず」。雑談しながら、相手を知って距離感を縮めることが、ことを成就させる近道。雑談やら、無駄話があるから、それで、本題の議論が進む。それで、議論が踊る。そして、それで本題がまとまる。雑談も無駄話も、決して雑でも無駄でもないということ。

 ところで、雑談や無駄話ができないような人は、家庭や仲間うちでは、とくに気をつけたほうがいい。結論ありきの話し方を避け、家庭を、仲間を和ませることに努めるべし。会話の「過程」を楽しむのだ。

 家庭や仲間の集まりは、ある意味「楽屋」であって「舞台」ではない。いまや舞台でも、適当なアドリブ、いわば、臨機応変の無駄話や雑談が求められる時代だというのに、ましてや楽屋で決まりきった話をするのはいただけない。無駄話、雑談で周囲を和ませたり盛り上げたりできないなら、もう、「楽屋」にはいられなくなる。

 雑談力、無駄話力を身につけること。これは年齢を重ねるごとに心掛けなければなるまいと感じている。無駄話、雑談こそ、人生の後半を充実させる「秘密兵器」だと思う。とくに50歳を過ぎた人たちは、今からその力をつけていこうではないだろうか。

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