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資産形成を自動的に最適化するターゲット・デート・ファンドが運用のイメージを変える

モーニングスター のロゴ モーニングスター 2019/12/03 09:25
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 日本の確定拠出年金市場でTDF(ターゲット・デート・ファンド、または、ターゲット・イヤー・ファンド)がジワリと存在感を増している。昨年10月時点では、DC専用ファンドのバランス型に占めるTDFの比率は1.2%以下だったが、現在では1.5%に拡大している。国内の公募投信市場全体におけるTDFのシェアは0.5%程度に過ぎないが、米国では、投信市場全体の5%弱を占めるほどに存在感を増していることから、日本でも徐々に利用者は拡大していくものと期待されている。資産形成におけるTDF活用の有用性を考えたい。

 TDFの最大の特徴は、ターゲット(目標)とするデート(日付=退職日、または、退職年=イヤー)に向けて、徐々に運用商品のリスク水準を引き下げ、安定的な資産として年金原資を確保することにある。運用の考え方は、ライフサイクル投資がベースになり、若くて働く時間(=運用可能な時間)が長く取れる間は、株式を中心に積極的に運用し、加齢とともに、徐々にリスクを低くして、債券の比率を高めていく運用に移行していく。若い時にはリーマンショックのような株式市場の暴落があっても十分に挽回できるチャンスがあり、しかも、働くことによって運用損失の補填も可能であることから投資リスクを高くとって大きな収益をめざす。加齢に伴って、働ける期間が短くなり、かつ、運用できる期間も短くなるため、株価下落などで資産が目減りするリスクを抑えた運用に切り替えていく。

 たとえば、今後30年間の運用期間が確保できる「2050年」にターゲットを置いたファンドでは、当面は株式に90%程度投資するポートフォリオで運用を開始し、その後、徐々に株式への投資比率を引き下げる運用に切り替え、2050年には価格変動率が小さな債券が運用の中心になるように調整する(図版を参照)。このように、運用資産の構成を変更することによって、若いときには株式によるハイリスク・ハイリターンの運用で資産の高い成長をめざし、リタイヤ時にはローリスク・ローリターンの安定したポートフォリオで迎える。そうすることによって、退職時にリーマンショック級の暴落を迎え、せっかく積み上げた資産を大きく目減りさせてしまうリスクを回避できる。

 このTDFの仕組みは、米国労働省が401k(企業型確定拠出年金)の適格デフォルト商品としてTDFを指定したことをきっかけにして普及した。2006年の年金法改正で、401kの自動加入と適格デフォルト商品の導入が決定され、翌年労働省が適格デフォルト商品の1つにTDFを指定している。この決定がなされた2008年当時のTDFの残高は1599億ドル(約17.4兆円)、それから10年でTDFの残高は1兆1000億ドル超(約120兆円)に急増している。米国では、20代、30代という若い世代がTDFを一般的に利用している。

 日本では2016年の改正DC法の議論で、国会においてデフォルト商品(指定運用方法)に元本確保型商品を入れることが決められた。これは、米国労働省が401kの適格デフォルト商品に「元本確保型は長期で見た場合に、加入者が退職時に十分な資産を形成できない恐れがある」として、元本確保型商品を排除したことと対照的な動きだった。

 米国では、適格デフォルト商品は、TDFとバランスファンドとマネージドアカウント(投資一任口座)になっている。若いころは、TDFによって資産を積み上げ、ある程度の資産規模になったら、オーダーメイド型の運用商品であるマネージドアカウントによって、しっかりリスク管理をしながら資産を増やすという流れができているようだ。米国では401kによるミリオネア(資産100万ドルの金持ち)が多数存在するといわれるのは、制度面での手当てがしっかり行われているためだからだろう。

 日本では、デフォルト商品として元本確保型商品が指定されているケースが多い。企業型確定拠出年金やiDeCo(個人型確定拠出年金)で、TDFを使ったお任せ型の資産形成を進めたいと考えた場合は、自ら進んでTDFを選ぶ必要がある。

 ここ数年で、日本の投信市場の効率化が急ピッチで進み、TDFの手数料が大幅に低下しているメリットがある。現在、運用されている公募のTDF(DC専用商品を含む)は131本。うち、比較的設定が古い2020年をターゲットにしたTDFの平均信託報酬は年0.8%だが、運用期間が3年に満たない新しいTDFの平均信託報酬率は年0.5%になっている。インデックスファンドを組み合わせて配分率を調整するTDFの信託報酬率は年0.3%台だ。一般の公募投信としてもTDFに投資することは可能であるし、つみたてNISAの対象商品にもTDFは採用されている。

 TDFは、一度、商品を指定してしまうと、ファンドそのものがリスク調整をしてくれるため、資産運用の商品選びやリバランス等で悩む必要がない。特に社会人として働き始めた時には、運用を研究して運用効率を高める努力をするよりも、働いて会社で能力を認められ、より多くの給与がもらえるように自分の働くスキルを身に着けた方がより豊かになれるだろう。「働きながら、資産にも働いてもらう」とは、資産形成を促す常套句だが、その際に、資産をTDFで積み立てれば、自動的に効率的な運用をしてくれるメリットがある。(図版は、ターゲット・デート・ファンドでの運用のイメージ)

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