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“チケキャン後”のミクシィ、「健康」と「スポーツ」に打って出る狙い 木村新社長に聞く

ITmedia ビジネスONLiNE のロゴ ITmedia ビジネスONLiNE 2018/07/13 07:00

 6月22日、ミクシィは予定より4日早い社長交代を余儀なくされた。本来は26日の定時株主総会で森田仁基前社長が退任し、ゲームアプリ「モンスターストライク」の生みの親として知られる木村弘毅取締役(当時)が新社長に就く予定だったが、「経営を円滑化するため」として前倒ししたのだ。

 交代が早まった理由は、森田氏とミクシィ子会社フンザの元社長ら3人が、商標法違反の疑いで書類送検されたためだ。ジャニーズ事務所に所属するタレントの情報を配信するWebサイトを無許可で運営したことが発覚。警察の強制捜査を受け、チケット売買仲介サイト「チケットキャンプ」(チケキャン)は5月に閉鎖に追い込まれた。

 期待のチケキャンを失っただけでなく、社会的信用やブランド力にも相応のダメージを負ったミクシィ。木村新社長は今後、会社を立て直すためにどんなビジネスを育てていくのか。木村新社長がITmedia ビジネスオンラインの取材に応じ、今後の展望を語った(取材は社長交代前に実施した)。

●守りの姿勢が足りなかった

――“チケキャン問題”が起きた要因をどう捉えているのか。

木村氏: 子会社のガバナンス体制や、レピュテーションリスク(企業の否定的な評判が広まること)の管理が不十分だったと痛感している。これまでのミクシィはベンチャー気質が強く、攻めの姿勢を得意としていた一方、リスク管理などの守りが弱かった。それがチケキャン問題につながったと考えている。

――今後はどう改善していく予定か。

木村氏: 反省を生かし、新体制では執行役員を12人に増員する。執行役員には、リスク管理やコンプライアンス管理の担当者を迎え入れる。経営層にも、こうした“守り”の側面を担う取締役を設ける。これらの取り組みによって社会的信頼を回復していきたい。

●トレーニングジムの実店舗を構える

――チケキャンはミクシィの成長ドライバーして期待されていた。今後はチケキャンの代わりに、どんな事業を始める予定なのか。

木村氏: チケキャンの穴埋めというわけではないが、ウェルネス(福祉)関係の事業に力を入れる。社会的課題の解決に向け、高齢者の健康寿命を延ばす取り組みに注力していきたい。

――具体的にどのような事業を始めるつもりなのか。

木村氏: まだ正式発表できることはないが、高齢者をターゲットとしたコンディショニング事業を考えている。トレーニングジムの実店舗を構え、顧客の運動能力に関するデータを取得・分析しながらレッスンを行っていく。

 日々のトレーニングのデータを顧客本人だけでなく、スマホなどで家族に共有できる仕組みも設ける予定だ。SNS「mixi」や「モンスト」などの運営ノウハウを生かし、顧客が友人やトレーナーとWeb上で交流できる案も視野に入れている。

●なぜコンディショニング事業に着目?

――なぜコンディショニング事業に着目したのか。

木村氏: 日本は少子高齢化が進んでいるが、それに伴ってウェルネス関連の市場規模も大きくなっているためだ。

 日本では健康状態に問題を抱えている高齢者が増え、社会保障費が増加している。だが、社会保障制度の維持に貢献している若者も少子化で減っている。当社は高齢者の健康状態を改善するビジネスを展開することで、この課題を解決したい。

 高齢者が健康を害する大きな理由に、家族や友人と疎遠になって人と話す機会が減り、活力が低下することが挙げられる。

 ミクシィがあえてこの分野に参入する目的はここにもある。当社がこれまで一環して重視してきたのは「コミュニケーション」。高齢者が会話を楽しみながら健康を維持できるサービスを提供し、他者との交流が断絶する人を減らしていきたい。

●ライバルはRIZAP?

――トレーニング関連のビジネスでは、RIZAP(ライザップ)グループが成長を続けている。RIZAPと競合するつもりなのか。

木村氏: コミュニケーションを生み出すために、指導はパーソナルレッスンではなく、集団レッスンにするつもりだ。パーソナルレッスンの場合、コミュニケーションの対象は講師のみで、ジムを出ると孤独になってしまう。これを防ぐため、友人などと対話しながら受けられるものにしたい。

 強い“コミットメント”を求めるつもりもない。とにかく健康寿命を延ばすことにフォーカスしていく。今後、どんな施策が顧客に一番楽しんでもらえるかを探っていきたい。

――どんなメニューを提供する予定なのか。

ミクシィの木村弘毅新社長 © ITmedia ビジネスオンライン ミクシィの木村弘毅新社長

木村氏: メニューは現在、京都大学と共同開発を進めている段階。学術的な知見に基づき、正しいコンディショニングを提供したい。食生活やトレーニングを指導できるトレーナーの雇用も進めたい。

●スポーツビジネスも始める 観戦体験を豊かに

――木村社長はスポーツ領域担当の執行役員を兼任している。スポーツ事業は今後どう進める予定なのか。ヘルスケア事業とはどう異なるのか。

木村氏: 詳細はまだ公表できないが、スポーツ事業では顧客本人が体を動かすのではなく、観戦体験をより豊かにするものを考えている。

木村氏: 具体的には、スポーツにショーの要素を取り入れ、演出をもっと楽しくする案を構想中だ。ハーフタイムのコンサートや、スタジアムで提供される料理なども充実させ、エンターテインメントとしてのスポーツ観戦を盛り上げたい。

――スポーツ観戦に着目した理由は。

木村氏: 日本のスポーツ界は、ファンが交流する場が海外よりも少ないと考えている。海外のサッカースタジアムや野球場を視察したが、多くのファンが試合前から集合して盛り上がり、終わった後も遅くまでスポーツ談義に花を咲かせていた。バーやラウンジも充実しており、家族でワイワイする人たちも多かった。

 一方、日本では、スポーツファンが細分化していると感じる。ニッチな知識を持つ人たち同士で盛り上がり、ライトなファンは「にわか」と批判される。試合の前後に楽しめる仕掛けや雰囲気づくりもまだまだ足りない。

 ヘルスケア事業と共通しているのは、こうした状況をコミュニケーションの力で変えたいということだ。

●ライブストリーミングサービスも視野に

――スポーツ観戦の分野では、DAZN(ダ・ゾーン)のようなスポーツのライブストリーミングサービスが伸びている。今後、こうしたサービスを手掛ける予定はあるのか。

木村氏: 可能性はあるが、その場合はユーザーが友達と一緒に試合を見られるようにしたい。1人で画面と向き合っていても、観戦で湧き上がってきた感情が昇華されないからだ。

 サッカー日本代表の試合を見ていて、「本田圭佑選手がうまかった」などと誰かに話したくなる人は多いだろう。それができるように、異なるユーザー同士が同じコンテンツを見て楽しめる仕掛けを作ることも視野に入れている。

 Webサービスはパーソナル化が進み、市場では個人の興味に応じたコンテンツを提供するのが主流だ。だが、1人だけを満足させるのはミクシィの仕事ではない。渋谷でワールドカップを見て、集団で盛り上がるような楽しさを演出していきたい。

 どんなビジネスになるか、根幹の部分は近々発表する。

●ミクシィは変わってしまうのか

――「モンスト」をはじめとする従来の主力事業と、ウェルネス、スポーツ関連の新規事業は路線が大きく違う。今後はスポーツビジネスの企業に変わっていくのか。

木村氏: 「徹底した顧客視点で物事を考え、新たな事業を生み出す」という方針は全くブレていない。当社は「コミュニケーションが足りていない分野はどこか」「どんな対話を生み出せるか」という視点から新規事業を決めている。それが今回はヘルスケアやスポーツだったということだ。

 モンストを世に出す前、人気だったゲームアプリは1人遊びのものばかりだった。だが私は「友達が集まってプレイできれば楽しいんじゃないか」との発想からモンストを思い付いた。

 私はミクシィは「コミュニケーション屋さん」だと考えており、そのスタンスは変わらない。今後も世の中で不足していているコミュニケーションを見いだし、当社に何が求められるかを考え続けていきたい。

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