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“EVフェラーリ”GLM社は「自動車メーカー」として成功できるか

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/04/20 佃 義夫
“EVフェラーリ”GLM社は「自動車メーカー」として成功できるか: Photo by Akira Yamamoto © diamond Photo by Akira Yamamoto

日本初の量産EVスーパーカー「GLM G4」を発表

「和製テスラ」と言われた京都大学発の電気自動車(EV)ベンチャー企業のGLMが日本初の量産EVスーパーカー「GLM G4」を発表した。

 GLMは、京都大学VBL(ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー)のEV開発プロジェクト「京都電気自動車プロジェクト」を母体として2010年4月に設立され、すでにスポーツカータイプのEV「トミーカイラZZ」を京都府舞鶴市の専用ファクトリーで量産化している。今回、発表したのは、これに次ぐEVスーパーカーである。この「G4」を開発した後、2019年から量産化するという。

 G4は、専用開発の高効率・高出力なモーターを車両前後に2機搭載した、四輪駆動のスーパーカーだ。最高出力400KW(540馬力)、最大トルク1000Nmを発揮する。発進から時速100キロまでの到達時間は3.7秒、最高速度は250km/h、航続距離は欧州の標準試験モードのNEDCで400kmを実現する。

 GLMは、このG4の発売を2019年とし、京都の自社研究開発拠点で重要部品の搭載検討を始め、年内には試作車での走行テストを行う。想定価格は、4000万円で日本の他、欧州、香港、中東など海外でも販売する。当初、1000台を販売し、400億円程度の売上を目標としている。

 EVベンチャー企業といえば、起業家イーロン・マスク氏が率いる米国シリコンバレー発のテスラがあまりにも有名だ。最近でもGMやフォードの時価総額を上回ったことで話題となった。EVメーカーとして新興ながら、日本のパナソニックとの合弁による電池工場や自動運転開発に加え、宇宙開発ベンチャーにも乗り出しているのは、周知の通りだ。

「テスラとは違う」と語る小間裕康社長

 GLMは、しばしば日本のEVベンチャーとして米テスラと比較され「和製テスラ」との見方をされてきたが、同社の小間裕康社長は「テスラとは違う。むしろEV版フェラーリを目指す」とG4の発表会場で語った。

 果たしてGLMは、日本のEVベンチャーとして自動車メーカーに一石を投じ、事業を成功させることができるのだろうか。

 GLMの小間裕康社長は、元々家電メーカー向けBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)ビジネスを立ち上げて年間売上げ20億円の規模にまで成長させた起業家。その後、京都大学大学院に入学してこのEVベンチャー企業を設立させた人物だ。

 当初は、自己資金でスタートしたが、資金調達に苦慮する中で、出井伸之ソニー元社長や江崎正道グリコ栄養食品元会長らの出資を受け、京都のコンデンサー大手のニチコンなどからの支援も受けることになった。

 先述した通り、このGLM初のEVがスポーツカータイプの「トミーカイラZZ」だった。だが、本格的な量産開始に至るまでは多くの試行錯誤と苦難があった。当初は、既存のクルマをEV仕様に改造する「コンバージョンEV」だった。だが、これでは安全基準などで認証が取れないということで、改めてゼロからのクルマづくりに取り組んだのだ。

 当然ながら、モーターやバッテリー、フレーム、シャシーなどを搭載したプラットフォームはもちろん、外観や車体、部品やパーツに至るまですべてをGLMが新しく開発し直すことになった。これにより、2011年10月に新車開発に着手した後、2014年6月に国土交通省から量産仕様による国内認証を取得して、2015年10月の専用ファクトリーでの本格量産に至るまで、実に4年を要したのである。

 トミーカイラZZは、2人乗りのオープンカータイプで最高速度は180km/h。1回の充電による航続距離は120km。外観は流線型のデザインで、流れるようなサイドラインが特徴だ。販売価格800万円(税抜き)、99台限定で販売、海外の高級スポーツカーと同じハンドメイドによる受注生産となっている。

 筆者は、東京タワーの下にあるGLMの東京ショールームでこのトミーカイラZZを試乗する機会を得て東京タワー周辺を走らせたが、スポーツオープンカーEVの快適さを実感した。

水平分業によるプラットフォーム事業も

 GLMのEVのモノづくりの特徴は、水平分業体制にある。つまり、既存の自動車メーカーは、クルマづくりのすべてのノウハウを自社で抱え込む垂直分業型だが、これに対し、GLMの水平分業型は設計・製造面でプラットフォーム部分と外装部分(外観ボデー)を完全に分離していることだ。

 同社は、クルマのコンセプトや性能、仕様、デザイン設計といった企画開発と基礎技術や安全面の技術開発に重点を置き、部品そのものは製造せず調達するか、モーターやバッテリーなど重要部品は共同開発している。安川電機(モーター・インバーター)、オムロン(車載部品)、リチウムエナジー・ジャパン(電池)、ニチコン(急速充電器)などと共同開発による協力関係を築いている。

 また、自社工場を持たないファブレス(生産工場を外部で探す)経営であり、車体の加工、組み立ては、京都府舞鶴市の小坂金属工業の工場に委託して生産している。

 GLMは、プラットフォーム部分の構造を支えるメインフレームの特許を取得しており、加えてプラットフォーム部分そのものをモジュール化してこのプラットフォームの売り込み、事業化を意欲的に進めていくことにしている。

 このプラットフォーム事業は海外からも注目を集めており、連携を検討しているIT企業や電気メーカーの他、EVを使ったモビリティを自らの事業に組み込もうとしているサービス事業まで多岐にわたるものになっているという。

 トミーカイラZZに続き、今回、EV第2弾のG4について発表した小間社長は「約7年間、当社は自動車メーカーとしての実績を作ることに注力してきた。その上で、人々がワクワクするような時間を提供できるクルマを作ること、日本の優れた技術が世界各国の自動車に組み込まれることを期待したい」とコメントしており、国内はもとよりグローバル戦略をより強く意識していると感じた。

 実際、GLMには、国内外からさまざまな人材が集結している。トヨタのレクサスのボディー設計から転じた藤墳裕次技術本部長をはじめ、日産やダイハツあるいは三菱重工やアイシン精機から既存のクルマ開発に飽き足らない技術者が転職してきているそうだ。

チャレンジングだがまだまだ未知数

 かつてGLMのようにメディアでも日本の新たな自動車メーカーとして注目されたのが「光岡自動車」だった。富山市に本社・工場を置き「ビュート」などクラシカルな独自のデザインによるレプリカ車を製造し、一時は東京モーターショーでも話題となった。

 だが、光岡自動車そのものは、既存の自動車メーカーに太刀打ちできるだけの事業に繋がらず、なかなか日本国内12社(乗用車8社、トラック4社)の「自動車メーカー」に加わったものと受け止められていないのが実情だ。

 京大初のEVベンチャー企業「GLM」がEVメーカーとしての事業を成功させていくことができるか。プラットフォーム事業が自動車産業以外の企業参入を促進させ新たなビジネス形成となるか。光岡自動車の例を見るまでもなく、既存の自動車メーカーの壁は高い。チャレンジングではあるが、いまだ未知数であると受け止めざるを得ない。

(佃モビリティ総研代表 佃 義夫)

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