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「人手が足りない!」で倒産も。日本をダメにする新たな構造不況

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/10/13 06:00 鈴木貴博
「人手が足りない!」で倒産も。日本をダメにする新たな構造不況: 「人手が足りない!」と都市部の企業は喘いでいる。新しい構造不況の足音が聞こえる © diamond 「人手が足りない!」と都市部の企業は喘いでいる。新しい構造不況の足音が聞こえる

倒産の増加率はわずかところがその実態は?

 東京商工リサーチが10月10日に発表した2017年度上半期の企業の倒産件数が、前年同期比で9年ぶりに前年を上回った。全国での倒産の増加率は約0.1%増と数字上はほんの少しだけ上回っただけのように見える。しかし後述するように、実はその構造に大きな変動が起きている。

 先にこの問題の概要をまとめておくと、半期ベースでの企業倒産件数が前年同期を上回ったのはリーマンショック以来のこと。負債総額で見ると戦後最大の倒産となったタカタの影響が全体の7割を占めるが、倒産件数では従業員5人未満の零細企業が全体の7割を占めた。

 さて、今回のニュースの興味深い点は、全国の倒産企業の分布にある。私が最初に手にした日経新聞の朝刊の記事は、これまで述べた全国の状況を伝える記事だった。しかし、東京商工リサーチでは地域別の状況も発表している。日経新聞の地方面に掲載された記事は電子版で一斉検索ができるので、その状況をまとめてみたところ、面白い傾向が浮かび上がって来た。

 地方面の記事を見ると、いわゆる地方都市においては倒産件数が減少しているのだ。今年の上半期と前年同期の比較で数字を取り挙げてみると、九州、沖縄は12%減、静岡県は13%減というようにマイナスの数字が目立つ。

 東北は倒産の増減だけを見ると9%増だが、水準としては6年連続で倒産件数が200件を下回っている。震災後、金融機関の積極的な融資姿勢に支えられ、依然として倒産件数が低水準に抑えられていることで、倒産件数は過去最低水準の低い数字が継続しているという。

 一方で、倒産件数が多かったのは東名阪である。東京都の倒産件数は前年同期比で11%増、近畿は13%増、中部3県は14%増と、主に都市圏で倒産件数が増加している。つまり冒頭で紹介した、全国で約0.1%倒産件数が増加したというのは、あくまで平均値であり、実際は都市圏で倒産件数が2ケタ増、逆に地方圏では倒産件数は減っているという構造が見えてくるのだ。

 そして、こうした傾向が見える原因を、東京商工リサーチは「人手不足が深刻化する飲食業を含むサービス業や建設業の倒産が増えた」と分析している。つまりまとめると、件数では零細企業が多く、主な原因は人手不足であり、人材を囲い込むために人件費が膨らみ、零細企業の痛手となった、ということだ。

景気がよい都市圏で倒産増、景気が悪い地方で倒産減の現実

 ここでこの問題の全体像が明らかになったわけだ。景気がいいはずの都市圏では「人が採用できない零細企業が倒産」し、景気が悪い地方では「人手不足倒産は起きにくい」というわけだ。

 実際のところ、都内では本当に人が採れない。わかりやすくお伝えすると、大手チェーン店であればアルバイト広告に数十万円の広告費を出したり、伝手をたどって留学生を採用したりして、お店や会社のオペレーションを回すことができている。しかし、そういった体力がない零細店舗・零細企業では、社員やバイトが1人抜け、2人抜け、そのうちにオペレーションが回らなくなる。

 それで時給を上げてパートを引きとめようとするのだが、人件費は増える一方で、オーナーは休日もなしに出勤しなければならなくなる。結局、どこかの段階で破綻してお店を畳むしかなくなるという、負の連鎖が起きているということだ。

 これは「新しい現実」である。少子高齢化によって、日本全体で徐々に労働力が減り始めている。大企業であればシステム化やロボット化によって、働き手の減少に対処することもできなくはない。とはいえ、大企業の現場ではまだ「働き方改革」も始まったばかりで、むしろ働き手の数を増やすことで、社員の過重労働を減らしているというのが現状だ。

 そうなると、零細企業にそのしわ寄せが来るのは当然で、人は採れない、かといってシステム化やロボット化など現実的ではないという状況の中で、オペレーションが破綻することになる。

産業のチェーンが崩壊?「新型不況」の不気味な足音

 ここ20年来、倒産に至る企業は主として金融が原因で行き詰まっていた。正確には、まず本業の稼ぐ力が落ちることから企業が傾いていき、そのプロセスで資金繰りが立ち行かなくなって企業は倒産していた。

 そのため国策として、日銀の異次元緩和で市中に資金が出回るようにしたり(こちらは実際にはあまり効果がなかったと言われているが)、中小企業金融円滑化法を制定したり(こちらの効果はあったようだ)して、企業倒産を回避してきた。

 ところが、カネは政策で増やすことはできるが、ヒトは移民政策でも採らない限り簡単に増やすことはできない。つまり、「人不足の倒産」が新しい現実として企業の前に立ちはだかるようになる。そうなると、零細企業が担ってきた産業のチェーンが途切れてしまい、大企業を含めた経済活動が停滞してしまう可能性もある。

 東京商工リサーチによれば「倒産件数は今後、徐々に増えていく可能性がある」という。そしてその次に来ることとして、「人手不足による不景気」がやってくるという新しいリスクが、目前に控えているのかもしれない。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

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