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「株価急落リスク」が米利上げ停止による株価上昇で逆に高まる理由

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2019/02/12 06:00 週刊ダイヤモンド編集部,竹田孝洋
「株価急落リスク」が米利上げ停止による株価上昇で逆に高まる理由: 昨年末までとは打って変わって、金融引き締めのブレーキを踏んだパウエルFRB議長 Photo:REUTERS/アフロ © 画像提供元 昨年末までとは打って変わって、金融引き締めのブレーキを踏んだパウエルFRB議長 Photo:REUTERS/アフロ

FRBは大きくかじを切った。1月のFOMCで利上げを見送っただけではなく当面停止することを表明し、バランスシート縮小についても停止時期を検討していることを明らかにした。FRBの決定を受け、株価は上昇しているが、楽観し過ぎの面は否めない。(「週刊ダイヤモンド」編集部 竹田孝洋)

 株式市場は楽観に傾き過ぎている。1月30日にFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げ停止や、買い入れ資産の再投資減少によるバランスシート縮小停止の時期の検討を表明したことを受け、日米の株価は上昇した。

 米ニューヨークダウは30日に、前日比434ドル90セント高となった。その後2月5日には、2万5411ドル52セントまで上昇し、約2ヵ月ぶりの高値を付けた。日経平均株価も31日から3連騰した。

 昨年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、若干の利上げは経済実勢に適合するとの声明を発表し、利上げを継続する姿勢を見せていた。

 ところが、1月30日のFOMCの声明からは、利上げの文言が消えた。代わりにFF(フェデラルファンドレート)の誘導目標レンジ(米国の政策金利)を調整するのを様子見するとの表現が入った。つまり、当面の利上げの停止だ。

 市場が懸念するバランスシートの縮小についても、FOMC後の会見でパウエルFRB議長は、「以前の推定より早く完了し、(完了後の)バランスシートのサイズは(以前の想定)より大きくなる。停止のタイミングについて審査している」と述べた。

 パウエル議長は、年末年始の金融市場の動揺を受けて、1月4日に利上げや買い入れ資産の再投資減少によるバランスシート縮小を急がない方針を示したが、そこからさらに一歩踏み込んだ形だ。

 金融政策の方針変更の背景については、パウエル議長は中国や欧州の経済減速や景気の先行指標の悪化を挙げた。

 中国も欧州も、景気の先行指標であるPMI(購買担当者景気指数)は低調だ。1月の中国の製造業PMIは、国家統計局発表、財新発表の双方とも、景気判断の分かれ目となる50を下回り、2ヵ月連続の50割れとなった。ユーロ圏の総合PMIは、前月より低下して51.0となり、2013年7月以来の低い水準となった。

 米国景気の先行きも楽観はできない。

 雇用は好調だ。2月1日発表の1月の非農業部門の雇用者数は前月比17万人台増の市場予想を上回り、同30万4000人増となった。しかし、雇用は景気の遅行指標だ。

 先行指標の一つである消費者信頼感指数。1月は120.2と前月の126.6から低下し、1年半ぶりの低水準となった。米国でPMIに相当するISM(米供給管理協会)製造業景況指数は、56.6と前月の54.3から戻したものの、18年半ばの60前後の水準を回復していない。

 ドルや金利の高止まりも懸念材料。FRBが利上げ停止を決定したにもかかわらず、米国の10年国債利回りは、2.7%台。FOMC前とほぼ変わらない水準である。また、ドルはユーロに対しても1月半ばより高い水準で推移している。対円では、2月5日には、一時1ドル=110円を付けるなど、FOMC以降ドル高傾向だ。

 ドルの高止まりは輸出にマイナスに作用する。金利の高止まりも景気の足を引っ張る。米国経済の減速傾向に拍車を掛ける。

利上げを停止も緩和に踏み切ったわけではない

 FRBは利上げを停止するとしたが、景気をてこ入れするために緩和に踏み切ったわけではない。景気の先行きが不透明なままにもかかわらず上昇する株価は、やはりはしゃぎ過ぎだろう。

 株価の上昇は、その動向を気にするトランプ米大統領を対議会や対中政策でより強硬にする可能性がある点でもマイナスである。

 株価への配慮が、政府機関の閉鎖を回避するつなぎ予算成立という形での妥協を、メキシコ国境の壁建設にこだわるトランプ大統領に促した面は否定できない。

 中国との貿易赤字解消や知的財産権についての協議では、大豆の買い付けなど貿易赤字解消に向けては、進展があった。しかし、技術移転の強要、知的財産権などについては米国が納得する結果は得られていない。「進展はあったがやるべきことは多い」とホワイトハウスの声明にもあるように、溝はまだ埋まっていない。

 市場では、貿易面での成果をもって、3月1日となっている協議期限の延長や、知的財産権絡みの協議を継続する機関の設置で米中が妥協し、ひとまず関税引き上げは回避されるとの見方が出ている。

 しかし、株価が回復すれば、株高が続いていた18年の夏から秋の頃のように、中国と妥協することなくトランプ政権が対中関税引き上げにちゅうちょせずに踏み切る可能性が高まるだろう。

 政府機関の再閉鎖、対中関税のさらなる引き上げが景気にマイナスであることは言うまでもない。

 足元の株価上昇は、次の急落のマグマを増大させている。

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