古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

あなたの仕事が過去のものになる時代、人生を変える「学び直し」

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 6日前 野田 稔
あなたの仕事が過去のものになる時代、人生を変える「学び直し」: 自分の仕事が過去のものになってしまう時代に、人生を変えるような学び直しが必要になるかもしれません(写真はイメージです) © diamond 自分の仕事が過去のものになってしまう時代に、人生を変えるような学び直しが必要になるかもしれません(写真はイメージです)

本当のプロフェッショナルは他人に教えを請い続けられる

 自分の専門を決めた時に、そのための力をどう蓄え、磨くのか。当然、そこでも書籍は重要なアイテムなのですが、専門的な実践力は他人から学ぶのが一番いい方法です。

 ある方がいます。私が尊敬する人事のプロですが、彼は30代の時に、それまでの専門性を捨て、一念発起して人事のプロになった人です。

 前職はサービス業の現場にいましたが、あるベンチャー企業に転職しました。彼はそのベンチャー企業でも最初は営業だったのですが、自分で手を挙げて、人事のプロになろうとしました。その経緯や思いは別の話です。ここで知っていただきたいのは、彼はいかにして学び直しを行い、別の道のプロになり得たか、です。

 大学院に通うといった手もあったと思います。自分の専門を変えようとした場合、それが一番ポピュラーな方法かもしれません。しかし、彼はそうはしませんでした。何をしたかというと、人事に関連する人たちが集まる会合に片っ端から顔を出して、挨拶をし、傍聴し、そして、そこで面白いと思った人を見つけ、個別に会いに出かけたのです。

 私が新規事業担当のフェローをしていたリクルート社にも彼はやって来ました。そして「私は人事の素人です。しかし、この分野でプロになりたいと思っています。どうか、よろしくお引き回しください」と丁寧に頭を下げたのです。

 大人になって、自分からそうそう言える言葉ではありません。しかも、彼は前の仕事でも目覚ましい実績を上げていたことは誰もが知っていました。みんなまず驚くのですが、同時にそう言われて悪い気がする人もほとんどいないと思います。だからこちらは何でも話をします。彼はそれをすべて克明にメモして学んでいきました。

 彼はまた、「読むべき本はありますか?」と必ず聞いていました。自分が信じた人が勧める本を読む。そうすれば無駄がありません。

 もちろん、それだけではなく、いろいろと努力をしたのだろうと思います。これはつい最近のことですが、私を家庭教師に雇ったのです。自腹を切って、すでに自分の専門分野となっていた領域で、さらに家庭教師までつける。その心意気に感動しました。それがプロです。彼から選ばれたことが、誇らしかったです。今でも私の勲章だと感じています。

 当初はだから、「○○は俺の弟子だ」と言う人が多かったのですが、およそ10年経って、今は逆の立場です。「○○氏は私の先生です」と言う人がたくさんいます。

 そうやって10年頑張れば、人は一流になれるのです。しかも、ひとかどの人物と見なされるようになっても、さらに上を目指そうとする。学び続ける存在になる。それが一流のプロの証です。

忙しさを言い訳に学ぶことから逃げるな!

 私にとっては野中郁次郎先生(一橋大学名誉教授)や田口佳史先生(老荘思想家)、そして高橋俊介先生(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授)が師匠ですが、彼らは師匠であると同時に、メンターであり、コーチです。

 単なる一般的なコーチではなく、研ぎ澄まされた専門コーチです。プロのアスリートを見ればわかると思います。どんなに素晴らしいプロ選手でも、コーチのいない選手はいません。一流であれば一流のコーチがついています。

 最初は誰でも膝を折って、教えを請うべきです。そうした師匠を、できれば複数持つのがいいと思います。その師匠たちがいいと言う本を読み、いいと言う勉強会に行き、紹介してくれる人に会いに行く。さらに、関連すると思われる展示会やセミナーにもできるだけ顔を出すのです。

 そのうちに多分、どこかで自ら蓄積して来た知識や経験を体系づけなくてはいけないと気がつく瞬間があるはずです。あるいは、これ以上に専門性を高めるためには、決定的に何かが欠落しているという気づきを得るはずです。そこから大学院に通う道を選ぶこともできるわけです。

 早い段階でとりあえず大学院などに進学して、全体像を掴むのも悪くないのですが、ひとまず自分で学び始めてみて、機が熟してから集中的に学ぶのも一つの方法ではないでしょうか。先に紹介した人事のプロの方にとっては、もしかしたら、私を家庭教師につけたことが、その集中的な学びの段階なのかもしれません。

 いずれにしても、30代は旗印を掲げるべき年代なので、本気で掲げるために時間の有効活用をしていただきたい。忙しいのは当然だと思うので、いかに合目的的に時間を使うかが重要です。そのためには、自分のための「働き方改革」がどうしても必要になります。

 無駄な仕事などやっている暇はありません。付加価値の低い仕事は思い切って止める提案をしましょう。学ぶ時間を作るための「働き方改革」を率先して始めてください。今の仕事の付加価値を維持しながら、できるだけ短時間で片付けて、勉強したり、本を読んだり、語り合ったり、人に教えを請うための時間を何が何でも作るのです。

 自分のことを振り返ると、30代は忙しい時代でした。会社の仕事で責任は重くなり、家事労働の分担もありました。私の場合は30代の最後に子どもが生まれたので、当時は育児をしながら本を読んでいました。そんなふうに、寸暇を惜しんで学ぶ。それも、面白がりながらやる。そうしたいという気持ちが、「働き方改革」のいいきっかけになるはずです。

 そこで勝負は決まるのです。「くだらない仕事はやらない」と決め、「働き方改革」をするのか、「忙しいから仕方がないじゃないか」と学ぶことから逃げるのか。もしあなたの中に忙しさを言い訳に学びから逃げたい気持ちがあるとすれば、まだまだ本気にはなっていない証拠です。目の前の忙しさに、酔っているだけです。

自分の専門領域が価値を失う日が来るかもしれない

 冒頭で紹介した人は、自ら積極的に自分の専門分野を変えたわけですが、学び直しが必要になる事態はネガティブな理由でも起こり得ます。好きか嫌いかにかかわらず、今まで学んできたこと、自ら積極的に磨いてきたノウハウや知識をすっぱりと学習棄却して、次に進まないといけない、そんなケースはこれまでも、またこれからも、様々な業種で起こり得ます。

 本当に見つめ直さなければいけないのは、実はそうした可能性なのかもしれません。

 例えば、かつてNTTでこんなことが起こりました。昭和50年代までの電話交換機と言えば、クロスバー交換機というものでした。クロスバースイッチを開閉するというもので、高度なメカトロニクスの技術が必要でした。

 それが次第にコンピュータで制御する電子交換機にその役割を奪われていきました。奪われたのは機械だけでなく、関連する技術者もです。高度なアナログ―メカトロ技術を磨いてきた多くの技術者の活躍の場が失われたのです。そうした話は数多くあります。在庫管理をはじめとする基幹業務システムの処理を専門に行うオフコンの技術者もそうでしょうし、かつてのレコードプレーヤーのピックアップ技術者もそうでしょう。

「昔の話だ」と他人事に感じている人もいるかもしれません。確かに、ここで挙げた例は過去の話ですが、こうした主役交代を引き起こす劇的なイノベーションはこれから先、ますます頻発するようになるのです。

 そうした流れは、当事者であれば本来わかるはずのことです。それに気がついたら、素直に危機意識を持って、一刻も早く見切ってください。遅れを取ってしまうと、それだけ危機は回避できにくくなるものです。早めに移れば得られた次の活躍の場も、大量解雇段階に入れば奪い合いです。

 その見切りを30代半ばに行うことができれば、そこから数年かけて学び直しをする時間がまだあります。そうすれば、人生を変えられるはずです。

 そうした劇的なイノベーションが、国家レベルで起こったのがかつてのオランダやデンマークです。「フレキシキュリティ」(柔軟性[フレキシビリティ]と保証[セキュリティ]の造語。雇用の保証を労働市場の柔軟性によって達成しようとする考え方)と呼ばれる政策が取られ、国が主導した一大産業構造転換が行われました。生産性の低い産業を廃業にして、そこにいた人材と資金を成長性の高い産業に移し替えました。

 例えば法定最下限の時給を極めて高く(2000円超え)設定し、生産性の低い企業は物理的に人を雇えないようにするなどという荒業も使いました。労働市場に柔軟性を持たせて従業員を解雇しやすいようにして、その代わりに失業保険を手厚くしたのです。現在は少し下がったようですが、かつては失業する直前の給与の7掛けで支給期間無制限でした。

 ただし、その失業保険を受けるためには、国家資格を持ったキャリアカウンセラーの指導を受けるとともに、新たな仕事を得るための職業訓練プログラムを受講することが条件でした。しかも、そこで一定以上の成績を取らないと失業保険が打ち切られるという厳しさなのですが、その代わり、大学も大学院も無料なのです。

 もちろん、そうは言っても労働者はたまったものではありません。会社が潰れ、自分のスペシャリティが否定されてしまうのですから…。

染め物工場のエンジニアが転職した業界は?

 そんな折にリストラされた、ある染め物工場のエンジニアの方を取材する機会がありました。彼はキャリアカウンセラーと話をして、「もう染め物業界は飽和していて、自分の居場所はない」と結論づけました。そこでこれから伸びる産業はどこかと考え、太陽光発電だと決めたのです。

 それから彼は何をしたか。大学の3年に編入しました。もともとは化学を専攻していたのですが、今度は電子工学科に入学しました。日本人からすれば、これは想像を絶する思い切った決断です。

 彼は大学で2年間学び、さらに修士に2年間通い、4年間勉強した後、太陽電池モジュールの技術者になりました。

 こうしたダイナミックな変化は世界では当たり前なのです。これからは、日本であっても、そうした変化も選択肢の一つとして真剣に考えていかなければならない時代になると思っています。

 将来的になくなる技術、業種、職種はどんどんと増えていきます。それらを代替する一番旬な技術がAI(人工知能)です。仕事がなくなる前に、逆に代替する側の技術畑に移行するといった積極的な選択もあっていいはずです。

 そこに面白みを感じ、1%でも自身の可能性を感じられたら、やったほうがいい。自分の人生をジャンプさせたほうがいい時もあります。

「自分は今の仕事をやるために生まれてきたわけではない」と思うのであれば、もう一度初心に帰って学ぶ。30代であれば、まだゼロクリアだってできるのです。

 いずれにしても、川に流されて滝つぼに落ちそうな時は、怖がって抵抗して、後ろ向きに流されるのが一番危ないと言います。そのほうが岩にぶつかってしまう可能性が高いのです。現状にしがみつくのではなく、勇気を持って、少しでも前に飛び込んだほうがいい。今は、そういう時代が来ているのではないでしょうか。

(明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授 野田 稔)

ダイヤモンド・オンラインの関連リンク

ダイヤモンド・オンライン
ダイヤモンド・オンライン
image beaconimage beaconimage beacon