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すぐに会いにいけば、トラブルも楽しくなる

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2019/01/13 06:00 唐池 恒二
すぐに会いにいけば、トラブルも楽しくなる © 画像提供元 すぐに会いにいけば、トラブルも楽しくなる

非常に高額なのに、最高競争率316倍!いま、この日本で、宝くじのように当選するのが難しいサービスが存在することを、あなたはご存じだろうか?JR九州。正式名「九州旅客鉄道株式会社」。名前だけ聞くと、旧態依然の鉄道会社のイメージを持つかもしれない。だが、この会社の「あるサービス」がひそかに感動の輪を呼んでいる。東京だけで暮らしているとわからない。でも、九州に行くと景色は一変する。その名は、クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」(以下、ななつ星)。いまや「世界一の豪華列車」と称され、高額にもかかわらず、2013年の運行開始以来、予約数が定員をはるかに上回る状態が続いている。なんと、DX(デラックス)スイート(7号車の最高客室)の過去最高競争率が316倍というから驚きだ。昨年11月の『日経MJ』には、「ブランド作りとは世界の王でも断る覚悟」と題して、そのフェアな抽選システムが新聞一面に紹介された。だが、驚くべきは、「ななつ星」だけではない。この会社、バリバリの鉄道会社なのに、売上の6割は鉄道以外の収入で、8年連続増収なのだ。かつてこんな会社があっただろうか?JR九州を率いるのは唐池恒二氏。8月27日、韓国と九州を結ぶ真っ赤な新型高速船「クイーンビートル」を2020年8月に就航すると発表。子どもから大人まで博多と釜山の優雅な旅を満喫できるという。さらに、7月には、中国・アリババグループとの戦略的資本提携を発表。2020年の東京オリンピックを控え、ますます九州が熱くなりそうだ。記者は、この20年、数々の経営者を見てきたが、これほどスケールの大きい経営者はほとんど見たことがない。1987年の国鉄分割民営化の会社スタート時は、JR北海道、JR四国とともに「三島(さんとう)JR」と称され、300億円の赤字。中央から完全に見放されていた。それが今はどうだろう。高速船、外食、不動産、建設、農業、ホテル、流通、ドラッグストアなど売上の6割を鉄道以外の収入にして8年連続増収。37のグループ会社を率い、2016年に東証一部上場、2017年に黒字500億円を達成。今年3月1日の『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)でも、逆境と屈辱から這い上がってきた姿が紹介された。今回、再現性のあるノウハウ、熱きマインド、破天荒なエピソードを一冊に凝縮した、唐池恒二氏の著書『感動経営』が、発売たちまち4刷。唐池氏に『感動経営――世界一の豪華列車「ななつ星」トップが明かす49の心得』にこめた思いを語っていただこう。(構成:寺田庸二)

怒っている相手にはまず近づく

 トラブルが発生。そのとき何をすべきか。 すぐに会いにいって、うまくいかなかったことはない。 外食事業で部長を務めていたある日、博多駅で営んでいた牛丼店について一本の苦情の電話が入った。

「あの店の教育はどうなっとーと?どんぶりにゴミは入っとる。謝り方もなっとらん。ついでにいうと、釣り銭の渡し方も悪い!」

 まわりに聞いてみると、電話をかけてこられたのは、社員たちからはわりと知られていた、ちょっと強面(こわもて)のお方。

 博多駅近くのビルに、いわゆる事務所を構えていらっしゃる。 電話の感じでは、かなりご立腹の様子。

 これはもうやむをえない。 でもひとりでは怖いので、たまたまそこにいた課長を連れて、その方のもとへ向かった。

 留守を任せる社員には、「1時間経っても戻ってこなかったら、警察に連絡するように」 と伝えた。

 それくらい怖かったのである。

 事務所に到着して、「JR九州でーす」とノックすると、相手はびっくりしている。

 びっくりついでにまずは、「なんだバカヤロー」と怒った。 怒ったけれどすぐに「まぁ事務所に入れ」ときた。

 そこから何の話をしたのかはよく覚えていない。 膝詰めで話しながら、ひたすら謝ったことはよく覚えている。

 そうしているうちに、怒りのトーンがいきなり下がってきた。(よかった! 思ったとおりだ)

 だんだん和(なご)やかになってきて、「おまえらもたいへんだな」 といった、ようやく人間と人間の会話らしくなってきた。

 私の場合は、なぜだかこういうとき、起こったトラブルを仲立ちに、互いの身の上話に花が咲くのである。

メールや電話だけの対処は逆効果

 ふと本棚に、中村天風(なかむらてんぷう)氏の書籍を見つけた。「氣」の哲学で知られる思想家・中村先生。 もちろん、私も好んでその著書に何冊か当たっていた。その話題をもち出すと、

「なんだおまえも好きなのか! じゃああの本をやる。もっていけ!」

 ときた。 謝罪で訪れたはずなのに、ものまでもらいそうになってしまう……。 じつは、これもよくあることだ。

 怒りを鎮めてもらうために、相手の目の前まで足を運んだ結果、望外に感謝の念まで抱かれる。 トラブルが起こったとき、すぐにやるべきことは、現場に、あるいは相手がいればその相手のもとにすぐさま近寄っていくこと。

 それは、相手を思いやる気持ちをそのまま表す行動である。 電話やメールで対処しようというのが、いちばんよくない。 直接訪れることなく、トラブルを収束させようという態度は、むしろ逆効果だと断言しよう。

☆ps. 今回、過去最高競争率が316倍となった「ななつ星」のDX(デラックス)スイート(7号車の最高客車)ほか、「ななつ星」の客車風景を公開しました。ななつ星の外観やプレミアムな内装の雰囲気など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事を、10万PVを突破した大反響動画「祝!九州」に興味のある方は、第7回連載もあわせてご覧いただければと思います。

唐池 恒二(からいけ・こうじ)九州旅客鉄道株式会社 代表取締役会長「三島JR」と称され、300億円の赤字というどん底のスタートを切った同社にあって、全社員と共に逆境と屈辱から這い上がり、500億円の黒字(2017年度)に導いた立役者。同社は現在、売上の6割を鉄道以外の収入にして8年連続増収中。高速船、外食、不動産、建設、農業、ホテル、流通など37のグループ会社を伴い、連結の売上額は4133億円、経常利益670億円(2017年度)を計上。1953年4月2日生まれ。1977年、京都大学法学部(柔道部)を卒業後、日本国有鉄道(国鉄)入社。1987年、国鉄分割民営化に伴い、新たにスタートした九州旅客鉄道(JR九州)において、人気温泉地・由布院の魅力を凝縮した「ゆふいんの森」や、浦島太郎の竜宮伝説をテーマにした「指宿のたまて箱」など、11種類のD&S(デザイン&ストーリー)列車をつくり、次々大ヒット。列車を「移動手段」から「観光資源」へと昇華させた。1991年に博多~韓国・釜山間にデビューした高速船「ビートル」就航に尽力。さらに、大幅な赤字を計上していた外食事業を黒字に転換させ、別会社化したJR九州フードサービスの社長に就任。2002年には、同社でみずからプロデュースした料理店「うまや」の東京(赤坂)進出をはたし、大きな話題に。2009年6月、同社代表取締役社長。2011年には、九州新幹線全線開業、国内最大級の駅ビル型複合施設「JR博多シティ」をオープン。2011年に制作指揮した「祝!九州」のテレビCMは「カンヌ国際広告祭」アウトドア部門金賞受賞。2013年10月に運行を開始し、総工費30億円をかけ世界一の豪華列車とも称される「ななつ星 in 九州」では、企画立案からデザイン、マーケティングまで陣頭指揮を執り、大人気となる。2014年6月、同社代表取締役会長。2016年には、長年の悲願であった東証一部上場を実現。2018年7月には、中国・アリババグループとの戦略的提携を発表。今後の動向にさらなる注目が集まっている。【JR九州HP】https://www.jrkyushu.co.jp

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