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ついて行きたくなる上司が持っている「3つの力」

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/05/15 06:00 榎本博明
ついて行きたくなる上司が持っている「3つの力」: 上司であるあなたは、部下がどんな不満を持っているかについて考えたことがあるか?(写真はイメージです) © diamond 上司であるあなたは、部下がどんな不満を持っているかについて考えたことがあるか?(写真はイメージです)

 管理職の人たちと話すと、「自分が成長していける感じがしないから、仕事を辞めたいっていうので困ってますよ」「うっかりミスが多い部下がいます。注意してもその場は素直に反省するものの、また同じような失敗を繰り返す。一体、どんな心理構造をしているんでしょうね?」などと、理解を絶する若手部下の事例には枚挙にいとまがない。

 だが時には上司も、自分たちが部下からどのように見られているかを振り返ってみる必要があるだろう。部下には部下の言い分もあり、部下たちから上司に対する不満を聞くと、「それじゃあ、ついていく気になれないのも無理はないなあ」と思わざるを得ないことが少なくない。

 そこで今回は、若手部下が上司に対してどんな不満を持っているのか、部下がついていきたくなる上司はそうでない上司と一体どこが違うのか、について考えてみたい。

部下は上司に対してどんな不満を持っているのか

 まず、代表的な部下の不満の声を5つ挙げてみよう。

(1)きちんと指導してくれない

 何を相談しても、上司は

「そんなことは自分で考えろ」「いちいち聞かないで自分でやってみろ」

と言うだけ。「部下を育てようっていう気持ちがないんですよ」と不満を露わにする部下が多い。

(2)失敗を責めるばかりで、アドバイスがない

 ちょっとしたミスでも、上司はこうネチネチ責めてくる。

「どうしてこんなことになったんだ!?」「いったいどういうつもりだ!?」

「こっちだってわざとミスしたわけじゃないんだし、『どういうつもりだ!?』と言われても困ります。それよりも、どうしたらミスを挽回できるか、あるいは減らせるのか、ミスを完全になくせるのかが大事なのに、前向きのアドバイスが一切なく、落ち度を責めるばかり。そんな上司に嫌気がさしています」といった声もしばしば耳にする。

(3)威圧的な態度でプレッシャーをかけてくる

 すぐに怒鳴り口調になって、威圧的な態度を取る。上司としては成果を出させるためにハッパをかけているつもりかもしれないが、こんな脅し方でプレッシャーをかけてくる。

「失敗は許されないぞ」「これで失敗したら、どうなるかわかっているだろうな」「オレの顔に泥を塗るようなことはしてくれるなよ」

「そんなふうに言われると、かえって気持ちが萎縮してしまい、前向きに頑張ることができなくなるから、言い方を考えてほしい」という声もある。

(4)上司なのに仕事ができない

 仕事はいつも丸投げ。わからないことや迷うことがあり、上司に相談しても、

「それは困ったね。どうしたらいいんだろうね」

 と一緒に迷うばかりで、的確な助言も指導も一切ない。結局、上司自身がどうしたらいいのかわからないのだ。そんな上司の下で働く部下は「もっと仕事のできる上司に仕えたい」という切実な思いを口にする。

(5)人間的に尊敬できない

「部下の手柄を平気で横取りする」「自分で指示したのに、上手くいかないと、部下に責任をなすりつける」「部下や業者にはあり得ないくらいに横柄な態度を取るくせに、上役に対してはペコペコしてご機嫌取りのセリフを言う」  そのような上司に対して「表面上は仕方なく従っているものの、内心は人として尊敬できないどころか、はっきり言ってバカにしている。人間的に尊敬できる上司の下で働いている人が羨ましい」といった声を耳にすることも多い。

「影響力の基盤」には6つの要素がある

 上司として、部下に対する不満もいろいろあるが、部下としても、学ぶことのない上司の下で働くのは嫌だろうし、気持ちを萎えさせる上司の下ではやる気も湧かないだろう。そんな牽引力のない上司では、部署を機能集団としてまとめていくことはできない。

 そこで考えてみたいのが、人はどんな上司についていきたいと思うかである。つまり影響力の基盤だ。心理学者のフレンチとレイブンは、影響力の基盤について(1)報酬勢力、(2)強制勢力、(3)正当勢力(4)専門勢力(5)準拠勢力(6)情報勢力の6つに分類している。

(1)報酬勢力 報酬勢力とは、昇給やボーナスの高い査定、昇進や表彰、配置転換で希望を叶えるなど、金銭報酬、地位報酬、やりがいといった報酬を与える力を持つことに基づく影響力のことである。

 これは、あの人の言うことを聞いていれば査定が良くなる、昇進に有利に働く、希望する部署への異動を後押ししてくれるかもしれないというように、報酬への期待に裏づけられた影響力である。

(2)強制勢力 強制勢力とは、昇給見送りや減給、賞与の低い査定、昇進見送りや降格、処分、左遷といったように、金銭、地位・名誉、やりがいなどの面において、罰を与える力を持つことに基づく影響力である。

 これは、言うことを聞かないとボーナスの査定に響く、昇進に不利に働く、左遷される恐れがあるというように、罰を受けるかもしれないという恐怖に裏づけられた影響力である。

(3)正当勢力 正当勢力とは、地位関係や役割関係により、影響力の与え手が自分に影響力を及ぼすのは当然のことだと受け手が認識していることに基づく影響力である。

(4)専門勢力 専門勢力とは、影響力の与え手がある領域において経験が豊富で専門的な知識やスキルが自分より上であると受け手が認めることに基づく影響力である。

(5)準拠勢力 準拠勢力とは、影響力の受け手、例えば部下の側の「好意的感情」と「心理的一体感」に基づく影響力である。

(6)情報勢力 情報勢力とは、影響力の与え手が有用な情報を持っていたり、情報源に詳しかったりすることに基づく影響力である。

専門勢力は必須、できれば準拠勢力も持ちたい

 (1)の報酬勢力も(2)の強制勢力も、有無を言わさぬ影響力として部下に迫るものであり、部下は納得のいかない場合でも仕方なく従う。でも、心から納得したわけではないため、心理的反発が予想される。アドバイスもできない上司に仕方なく従うのも、これらの勢力によるものと言える。

 さらに(3)の正当勢力は、報酬勢力や強制勢力と同様、従う側には「仕方なく」といったニュアンスが漂うものである。

 上司が部下に対して報酬勢力、強制勢力、あるいは正当勢力を持っているとしよう。形だけは自分の指示通りに部下を動かせても、目の行き届かないところでは部下は適当に手を抜くなど、最低限の義務や役割は果たすけれども、モチベーションが上がていなかったりするだろう。

 その背景には「売り上げを伸ばせ」と言って数字を口にするだけで、上役に実績をアピールすることしか考えていない上司や、現場の事情を何も理解しないまま、ただハッパをかけるだけの上司、仕事は丸投げで何のアドバイスもない上司のいずれかがいるのではないか。自分が部下であった場合、このような上司についていく気持ちになるだろうか。

 もし、部下が「この上司に積極的についていきたい」と思うとすれば、その上司は、報酬勢力、強制勢力、正当勢力以外にも何らかの勢力をもっているはずだ。すなわち、先ほど挙げた6つの勢力のうち、残りの3つの勢力(専門勢力、準拠勢力、情報勢力)を持っているかがカギになる。

 そこでまず最低限必要となるのが、(4)の専門勢力だ。これは、(1)の報酬勢力や(2)の強制勢力、(3)の正当勢力のような「無理やり」とか「仕方なく」といった感じはなく、専門勢力があれば、受け手は何の抵抗もなく指示や注意を受け入れる。

 仕事ができない上司についていく気にはなれないが、仕事のできる上司には、仮に気持ちの面で好かなかったり、人間的に尊敬できなかったりといった場合があるにせよ、部下は仕事面では尊敬の念を抱く。そのため上司としては、日頃から専門的な知識の習得やスキルアップに励むことが求められる。そうした地道な努力を継続する上司の姿を見れば、部下はその上司についていきたいと思うようになるだろう。

 それに加えて、できたら持っていたいのが(5)の準拠勢力だ。これは、「あの人のようになりたい」といった同一視を基礎としており、好意的感情と心理的一体感があるため、部下など影響力の受け手の側から喜んで指示や注意を受け入れるようになる。

 従って、部下が心からついていきたいと思う上司は、この準拠勢力を持っているといってよい。自分なりの信念を持ち、日和見主義ではなく、利己的にならず、人間味があって部下の気持ちもきちんと汲み取ってくれる。つまり人間として尊敬できるというところがポイントだ。

 では、情報勢力はどうなのか。必要な情報にアクセスする能力は、IT時代にますます重要となってきている。情報勢力を持つ人の影響力は、上司から部下という方向のみならず、部下から上司という方向でも重要度が高まりつつある。部下がついていきたい上司になるためには、アンテナを張り巡らせ、幅広い情報に目を向ける習慣を身につけておくことも大切である。

 以上の6つの影響力について見てきたが、皆さんが部下であれば、上司はどんな影響力を持っているだろうか。最初の3つの勢力(報酬勢力、強制勢力、正当勢力)の影響が大きいと感じているならば、ついていく気になれないだろう。

 逆に、皆さんが上司であり、部下のことで悩んでいるのであれば、最初の3つの勢力に安住していないかどうかを今一度確認してほしい。部下がついてこないのも、うなずけるのではないか。

 今からでも遅くはない。先述したように、専門能力や準拠能力を持てるように、日々努力してほしいと思う。

(心理学博士、MP人間科学研究所代表 榎本博明)

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