古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

できる人は健全に「他者のせい」にしている 「自責思考」には実は限界がある

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/11/15 清水 久三子
自責思考だけでは解決できない場合がある(写真:UYORI / PIXTA) © 東洋経済オンライン 自責思考だけでは解決できない場合がある(写真:UYORI / PIXTA)

 「プロジェクトが失敗したのはすべて自分のせいだ」――。このように、何もかも自分の責任として物事をとらえる「自責思考」。成長するためには必須といわれるものですが、必要以上に背負い込むのは、自分や組織に対してかえってマイナスになることも。

 『「残業だらけ職場」の劇的改善術』を上梓した清水久三子氏が、働き方改善のための「他責思考」の考え方についてご紹介します。

自責思考で本当によくなるのか?

 一般的に、ビジネスシーンでは他責よりも自責が求められます。自責思考か他責思考かが、デキる社員とダメ社員を分けるといったこともよく言われますし、「他責思考では成長しないぞ」というようなことを上司や先輩から言われたこともあるのではないでしょうか? では、それがすべてかというと、ちょっと気になる面があります。

 <自責思考>自分の問題として考える

 仕事で何か問題が起こったとき、その原因が自分にあるとしてとらえるのが自責思考。辞書的な意味では、自責の念という使われ方のように「自分を責めること」が中心になりますが、ビジネスの場では、問題に対して当事者意識を持って取り組むポジティブな意味で使われます。

 自責思考の人のミスや問題が起きたときの考え方

 →確認を怠った自分が悪い
→正しいやり方を身に付けられていない自分が悪い
→自分の能力が低いから時間がかかってしまった
→相手に理解できるように伝えなかった自分が悪い

 <他責思考>問題を他者のせいにする

 他責思考とは、仕事や職場で起きた問題を、それが自分のミスであったとしても他者のせいにする思考です。

 他責思考の人のミスや問題が起きたときの考え方

 →サポートを怠った上司や先輩が悪い
→マニュアルがわかりにくいから時間がかかった
→新人だからできなくて当然
→話を理解しなかった相手が悪い

こう見ると、デキる社員は自責的、ダメ社員は他責的と言われるのもうなずけますね。かくいう私も、新人や若手を対象とした研修やリーダーシップなどの研修では「自責思考で問題解決をしていきましょう」とお伝えしてきました。

 しかし、いわゆる仕事ができて、困難な状況でも気持ちが折れることなく成果を出しているコンサルタントの方々を見ているうちに、他責思考も必要なのではと思うようになってきました。

 駆け出しのコンサルタントの頃の私は、自責思考の塊だったのですが、次第に疲弊し「どうせ自分なんて……」というところまで精神的に追い込まれてしまったことがありました。そんなときにトラブルプロジェクトの立て直しや難易度の高いプロジェクトなど非常に大きい問題を解決しようとしている人たちを見ていると、いい意味で他責思考を取り入れているのではないかと思うようになったのです。

仕組みの改善につながる考え方

 たとえば研修の中で活用するテキストやマニュアルなどが理解しにくかったりすると、自責思考だと「自分の理解力が足らないからだ」となるところを、「これはテキストがわかりにくいよ。思考の順に沿ってないからだよ」とテキストの問題にしたり、チームにミスが多い場合、自責思考の人が多いと「うちのチーム、モチベーションが低いからミスが多いんだよね。気合い入れなくちゃ」となりがちなところを、「これだけミスが出るってことはそもそもやり方がおかしいんじゃない?」と仕組みのせいにしたりするわけです。

 これらは一見、他責思考でよくないことのように思えるかもしれませんが、テキストや仕組みの改善につながる考え方でもあります。特に非常に大きい問題があるような場合には、すべてを自分のせいだととらえる自責思考で考えてもすぐに解決できないことも多いため、自分自身の心身の健康を損ねることにつながりかねません。

 今のビジネス環境はブラック企業という言葉がよく聞かれるように非常に過酷ですし、これまで日本企業全体が抱え込んできた働き方の問題も個人の自責思考だけでは解けないものでしょう。

 そういったときに、他責思考を良い方向に使うことで改善の糸口が見えてくるのではないでしょうか。

 このときに注意したいのは、他責といっても「人のせいにはしない」ということです。自分以外の誰かのせいにしても、問題というボールをたらい回しにして投げ合うようなもので、自責思考の強い誰かがそのボールを拾って苦しむことになりかねません。人ではなく、「プロセスやモノなど仕組みのせい」と考えていくことで、膠着した問題を少しずつでも前進させる前向きな他責思考になります。

 前向きに他責思考する際の考え方としては、人のせいにしないということに加えて、単に難癖をつけたり、環境のせいにしないことも求められます。具体的に仕組みの何が問題なのかを見抜いて、改善するアイデアを出していく必要があります。よくない点までは見つけやすいものですが、それだけでは不平不満どまりです。改善のアイデアを出さないと、単なる責任逃れで終わってしまいます。

改善策を発想しやすくするSCAMPER法

 そんなときに改善策を発想しやすくする手法として「オズボーンのチェックリスト:SCAMPER」をご紹介します。

 これはブレーン・ストーミングという会議手法を作り出したアレックス・F・オズボーン氏が作った発想をしやすくするためのチェックリストです。チェックリストの質問の頭文字をとってSCAMPER法とも呼ばれています。改善策・打開策を考えるのに向いている発想法です。以下のチェックリストの質問に基づき、次々と考えていくことで、改善案を出しやすくなります。

 ・Substitute:代用してみたら?
・Combine :組み合わせてみたら?
・Adapt   :応用/適用してみたら?
・Modify  :変形/修正してみたら?
・Put     :置き換えてみたら?
・Eliminate :排除してみたら?
・Rearrange:再調整してみたら? 

この7つの質問にはさらに詳細な図のようなサブリストがあり48の質問があります。7つでは思いつかない場合にはサブリストでさらに深く考えることもできます。

 私のコンサルタント時代の上司の口癖は「それ、やめたらどうなるの?」というものでした。それを言われると、そもそもの目的に立ち返ったり、必然性を改めて問うことになります。本当に必要なものだけに絞られていくこともあれば、まったく新しいやり方が出てくることもありました。これは上記のチェックリストのEliminate(排除してみたら?)に当たるでしょう。

 また業務改善を専門とする知人コンサルタントの口癖は「これは誰がやってもノーミスな仕組みになっているか?」でした。もし「人によってばらつきがある」「スキルの高い人はできる」というような状態の場合には「この2つの処理を組み合わせればノーミスになるのでは?」「ITで代用できるのでは?」など上記のチェックリストの質問が矢継ぎ早に飛び出しました。

組織全体をよくしていく

 このように「人のせいではなく、仕組みのせい」「問題と改善案をセットで出す」という他責思考であれば、これは組織力の向上につながっていきます。

 自責思考も他責思考も、よい面と悪い面と隣合わせです。自責思考を悪く使ってしまうと自分を責め続けて自己肯定感が下がりますし、よく使えば個人の成長につながります。他責思考を悪く使えば責任逃ればかりで個人はまったく成長せず、よく使えば組織全体の改善につながります。

 働き方改革や仕事の生産性向上が急務である今、求められるのは個人の責任を必要以上に問う自責思考を強要することではなく、他責思考をうまく使って組織全体をよくしていくことではないでしょうか。

東洋経済オンラインの関連記事

東洋経済オンライン
東洋経済オンライン
image beaconimage beaconimage beacon