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なぜ日本には外国人労働者が殺到しないのか 日本の「働く国としての魅力」は61カ国中52位

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/04/17 寺田 知太
訪日外国人旅行者数は増えているものの…(撮影:今井康一) © 東洋経済オンライン 訪日外国人旅行者数は増えているものの…(撮影:今井康一)  

 残業規制、22年ぶりの低水準の失業率、ブラック企業など、最近「働き方」についてのニュースを目にしない日はない。なぜ今「働き方」にこれほど注目が集まっているのか。その理由は、日本で労働人口、つまり「働き手」が足りなくなりつつあることに尽きる。

 4月に刊行された『誰が日本の労働力を支えるのか?』の執筆者のひとりである寺田知太氏が、日本の労働力不足の現状と外国人労働者にとっての日本の評価について解説する。

一億総活躍社会でも全然足りない「働き手」

 先週、国立社会保障・人口問題研究所が日本の将来人口推計を発表した。人口は2065年に8808万人に、なかでも、15~64歳のいわゆる「働き手」である労働人口は、2015年比の4割減となる4529万人という見通しである。

 この労働人口の減少は、日本の大問題である。総務省統計局の調べによると、過去15年間でおよそ200万人も労働人口がすでに減少している。この数は四国地方全体の労働人口に匹敵する。。

 経済界にも、すでにその影響は出始めている。たとえば、ヤマト運輸の時間帯指定の見直しがそうだ。ドライバーが足りない。足りない中サービスを維持するために残業や無理をする。その結果トラブルやさらなる人材流出につながり、提供サービスや業務管理全体を見直さざるをえなくなっているのだ。

 かつてのように、「働き手」が十分にいて、終身雇用を信じられた時代であれば、残業や無理を前提としたマネジメントが可能であった。しかし、人口減少に伴う「働き手」不足が深刻化すると、そうした残業や無理を積み重ねてきた業界や企業から「働き手」が逃げ出し、これまでどおりのサービスが維持できなくなってきている。

 では、足りない働き手をどうやって補うか。子育て支援により女性が働きやすい職場をつくるのもひとつの方法だ。ただし労働政策研究・研修機構の調査によると、子育て支援の先進国とされるスウェーデンと同じくらい日本でも子育て世代の女性が働けるようになり、さらに定年延長やシニア活用が進み60代の高齢者の大半が働くようになったとしても、労働力減少を補うことはできないとされている。

 それなら、外国から「働き手」に来てもらおう、という考え方もある。だがそれも一筋縄ではいかないのだ。

 外国人労働者の受け入れについては意見の分かれるテーマであるが、この記事で「受け入れるべきか否か」を論じるつもりもない。その手前にある問題、つまり「そもそも外国人労働者は日本に来てくれるのか」という点について考えてみたい。

 近年、日本には外国からの観光客が増えている。外国人が日本を礼賛する書籍やテレビ番組もよく見かける。しかし、それをもって「日本で働きたい外国人はたくさんいる」と考えるのは早計だ。なぜなら「観光で来る」日本と「住んで働く」日本を、彼らはまったく別物としてとらえているからだ。

ここがヘンだよ日本の職場と生活環境

 スイスのビジネススクールであるIMD(国際経営開発研究所)が発行しているWorld Talent Reportの2016年の調査によると、日本の「働く国としての魅力」は、分析対象61カ国の内、なんと下から数えたほうが早い52位にとどまっている。なぜこれほど低いのか。

 日本国際化推進協会は2015年に、外国人819人を対象に日本の労働環境についてアンケートを実施した。その調査によると、日本で働きたくない理由として1番に挙げられたのが「長時間労働」だ。

 また「評価システム(評価基準)」を問題視する外国人も多い。日本企業の人事評価体系は外国人にはわかりにくく、年功序列の文化によって昇進が遅いことが、外国人が日本企業で働くインセンティブを下げているのだ。この他にも「言葉の壁(英語が通用しない)」「仕事後のつきあい」などが日本で働きたくない理由として挙げられた。

 さらに、働き先を決める大きな要因となる給料も、アドバンテージがあるわけではない。OECD(経済協力開発機構)が調査した各国正社員給与水準の推移を見ると、日本の給与水準は上位の米国、スイス、オーストラリアの後塵を拝し、先進国の中では韓国と同程度の低位に位置している。また、このデータに「成長率」を組み合わせた野村総合研究所の分析では、日本の給与水準は「低水準+低成長」に分類される。これは財政問題を抱えるイタリアと同程度である。

 先ほどの日本国際化推進協会の調査では、「日本で働くことが魅力的」と答えた外国人は2割しかいなかったが、「日本で住むことが魅力的」という回答は8割を超えた。しかし、労働力として彼らに定住してもらうためには、解決すべき問題が山積している。

 経済産業省「内なる国際化研究会」の調査によると、外国人の多くが在留資格の手続きや永住許可の取得要件の厳しさに不満を抱いていることがわかる。また生活環境においても、外国人の子供が通えるインターナショナルスクールや、英語が通じる病院が少ないことに不満を感じている。こうした問題は外国人が「働く」うえで大きなマイナス要素だ。

働き手の争奪戦が始まる

 2015年に1億2709万人(国勢調査調べ)であった日本の総人口は、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2030年には1億1662万人になると予想されている。この記事の冒頭で、日本では過去15年間でおよそ200万人も労働人口が減少したと紹介したが、残念ながら次の15年も日本の労働人口は減る一方となることは避けられない。

 しかも次の15年は、これまで以上に厳しい現実が待ちかまえている。これまで「労働力供給国」として日本にも「働き手」を供給してきたお隣の中国でも、2015年頃に生産年齢人口がピークを迎え、以後減少しつつあるからだ。日本と同じように少子高齢化問題を抱え、自国の「働き手」が足りなくなると、「供給国」から一転して「受け入れ国」になるだろう。

 日本で「働き方」が見直されている背景には、こうした、世界中で「働き手」の取り合いが始まりつつあることと、日本に外国人に働きに来てもらうことが一筋縄ではいかない事情があるのだ。

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