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なぜSUBARUは米国で伸びたのか マーケティング戦略の“真意”

ITmedia ビジネスONLiNE のロゴ ITmedia ビジネスONLiNE 2018/04/25 07:30

 SUBARU(スバル)が米国で着実に成長している。全世界の年間販売台数は、2017年3月期に100万台を超えた。そのうち米国の販売台数は全体の6割以上を占める約67万台。10年間で約3.5倍に増やし、その成長をけん引している。

 なぜ米国で販売が好調なのか。その背景には、顧客との密接な関係づくりを重視するマーケティング戦略があった。

●顧客分析で導き出した「LOVE」

 スバルが米国で販売台数を伸ばし始めたのは、08年。リーマン・ショック後に需要が拡大したスポーツタイプ多目的車(SUV)の車種をそろえていたことなどが寄与し、翌年から9年連続で過去最高を更新。08年に約18万台だった販売台数は、60万台を超える規模に拡大している。

 「08年当時、米国内のシェアはわずか1%でした」と振り返るのは、現地法人Subaru of America(SOA)マーケティング責任者のアラン・べスキー氏。「米国内に40ものブランドがひしめく中、機能やスペック、セールスイベントなど、他社と同じようなPR戦略を取っていた」ことから、販売台数を伸ばすことができずにいた。

 そこでSOAは徹底した顧客調査を始める。まず、スバル車を購入しなかった人を対象に、その理由を調べた。すると、「私たちが思っていた理由ではなかった」(べスキー氏)。スタイリングや機能などを挙げる人は少数。大多数は「スバルをよく知らないから」。まずは認知度を高めることが必要だった。

 そして、スバルオーナーの傾向を分析してみると、あるキーワードが浮かび上がった。それは、自分のクルマに対して使う「Love(ラブ)」という言葉だ。「収入も学歴も比較的高く、もっと高価なブランドも買える方があえてスバルを選んでいる。しかも乗り換えるときにまたスバルを選ぶ、長期保有の傾向もあります」(べスキー氏)。あえてスバル車に乗る人たちはクルマに対する愛着が強く、クルマについて語るときに愛情を表現する。

 彼らが使うキーワードをヒントに08年から始めたのが、「LOVEキャンペーン」だ。値引きなどの施策ではなく、人生に寄り添うブランドであることを広告などでPRし、スバルに愛着を持ってもらうことを目指している。

 どのように顧客との関係を深めているのだろうか。顧客との接点となっている販売現場を訪れ、SOAや販売店の取り組みについて聞いた。

●「地域とのつながり」で共感を得る

 スバルディーラーは全米に631店舗ある。訪れたのは、年間1600台を販売するニュージャージー州の店舗「WORLD SUBARU(ワールドスバル)」だ。この店舗を運営する自動車ディーラーチェーン、プライムオートモーティブのジョー・ヴァイダ氏は、「店との関係を、単なる取引関係ではなく、それ以上のものに感じてもらうことが重要」と説明する。

SUBARUの成長の柱、米国におけるマーケティング戦略とは?(米ニュージャージー州にあるスバルディーラー) © ITmedia ビジネスオンライン SUBARUの成長の柱、米国におけるマーケティング戦略とは?(米ニュージャージー州にあるスバルディーラー)

 そのための取り組みの一環として、地域コミュニティーとつながる活動を実施している。チャリティーやボランティアなどに積極的に参加しているという。例えば、小児がん患者に対するチャリティー活動では、SOAが主導する活動(新車購入1台につき250ドルを寄付)に加えて、店舗独自でも寄付金を用意。合わせて25万ドル(約2700万円)を寄付した。

 寄付文化が根付く米国では、チャリティーに力を入れることが地域との関係を深めることにつながる。その姿勢に共感する顧客も多いようだ。ヴァイダ氏はこの取り組みについて、「単なる店から、もう一歩上の存在になる」ためのものだと話している。

 顧客との関係を深める取り組みには、愛車を通じて趣味などを主張してもらうツールもある。車に貼るバッジを無料で配布する「バッジ・オブ・オーナーシップ」という取り組みだ。SOAが10年から実施している。

 バッジは、スバル車に何台乗ってきたかを示す数字と、趣味やライフスタイルなどを示すピクトグラム。車のリアに貼ることができる。ワールドスバルの駐車場でも、実際にバッジを貼っている車があった。

 バッジは「Baseball」「Snow Sports」「Cooking」など、スポーツや趣味を示すものや、「Family」「Love」「Education」など、ライフスタイルや大切なものを示す絵柄もある。専用サイトを見たところ、現在53種類のバッジがあるようだ。

●ユーザー同士がつながる

 スバルと顧客をつなげているのは、店舗やバッジだけではない。全米に約1万1000人いるという「スバルアンバサダー」も重要な役割を担っている。

 アンバサダーは、SOAが認定するスバルユーザー。車の購入を検討する人に、スバルの特徴や魅力を伝える役割を担う。SNSで情報をやりとりしたり、店舗で実際に話をしたりして、自分が乗っている車の情報や乗り心地などを伝える。

 アンバサダーの1人、ダニエラさんは、これまで9台ものスバル車に乗ってきた。2年前からアンバサダーを務めている。「Instagram」のフォロワーは2500人。日々、スバルや愛車の情報を発信している。

 スバル車を買ったきっかけは父の影響だったが、どんどん車が好きになり、のめりこんでいった。「ある年の冬、スリップした車に追突されて、車体がひっくり返るほどの大きな事故にあいましたが、けがはありませんでした。それ以来、スバルしか乗らないと決めています」(ダニエラさん)。実感がこもった体験談が聞けるのも、アンバサダー制度が支持されている理由だろう。

 スバルが米国で注力してきたのは、市場が求める車種を投入することだけではない。1人ずつでも、「スバルが好き」という人を増やすことに取り組んできた。米国では、SUVの市場拡大に伴い、各メーカーが車種を投入している。SUVをそろえるスバルの優位性を維持することは難しくなってきた。この局面でこそ、積み重ねてきた「LOVE」の真価が問われることになるだろう。

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