古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

イマドキ新人部下が五月病に!?上司はどう接すればいいか

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/05/15 06:00 井手ゆきえ
イマドキ新人部下が五月病に!?上司はどう接すればいいか: 部下が五月病?と思ったらどうすべきか?(写真はイメージです) © diamond 部下が五月病?と思ったらどうすべきか?(写真はイメージです)

五月病──。ゴールデン・ウィーク(GW)前後になんとなく身体がだるくなり、やる気が低下してしまう状態を総称した呼び方で、医学的な病名ではない。最近は新入社員の配属時期が遅くなった関係で、時期がずれた「六月病」も広まっているようだ。五月病の背景と対処方法について、『「職場のメンタルヘルス」を強化する』(ダイヤモンド社刊)などの著書がある新宿ゲートウェイクリニック・吉野聡院長に話を聞いた。(医学ライター 井手ゆきえ)

五月病は正常な防衛機制GW前後の不調は当たり前

──そもそも、五月病とはなんでしょうか?

 医学的には「適応障害」とされるもので、特定のストレスに対する心身の反応です。いわゆる“五月病”には変化の積み重ねが影響しています。新入社員の場合、それまでお金を払って学ぶという「お客さま」的な立場から、今度は一労働者として会社の指揮命令系統に従ってお金を稼ぐ立場へと、ガラッと変わる。人生で最も大きな変化を経験している真っ最中なのです。

 もともと、日本人は異文化への適応があまり得意ではありません。まして今の10代、20代は学校の教師なり目上の大人に「叱られる」体験がないまま社会に出てくるので、「上司に注意、叱責される」という文化に溶け込めないのです。このカルチャーショックは案外、大きいと思います。

──会社組織という異文化に適応する過程がストレスなのですね。

 ええ。でも、五月病は「病」とつくから病気なのか、と考えてしまいますが、私は正常な防衛機制だと思います。

 例えば、入社したばかりの頃は、「できる社員と思われるように、頑張ろう!」と無意識にテンションを上げて自分を保とうとします。

 異文化に対する最初の適応反応のひとつで、精神科の専門用語で「躁的防衛」といいますが、これは誰にでも起こる正常な反応なのです。でも、いつまでもテンションが高い状態なんて続くわけがない。どこかで疲れがどっと出てきます。そのきっかけがGWです。

 特に社会人になってから一人暮らしを始めた人は、GW中に実家に帰省すると張り詰めていた緊張の糸が切れてしまいます。地元の同級生と久々に集まることにも落とし穴があって、そういう場では皆いいことしか報告しないんですよ。生真面目なタイプは「私はこれでいいんだろうか」なんて妙に焦ってしまうんですね。いったん、そうなると再びテンションを上げることは難しい。

──帰省しないほうがよさそうですね。

 無理に帰る必要はありません(笑)。よく五月病の予防法は何ですか?と聞かれますが、GW前後は疲労が出て当然の時期であり、心身の不調は「正常な反応」であると理解した対応を心がけることが大切なのです。

タイプ別、上司の理解ポイント生真面目タイプは視野が狭い

──生真面目な新入社員ほど五月病に陥りやすいように思いますが、どうでしょうか。

 社会人として、不調の時は不調なりにやり過ごせるスキルは、とても大事な能力です。表現は悪いですが、多少不調でパフォーマンスが悪かろうが、とりあえず出勤して最低限のことをこなせば、会社員としては許されるわけです。第一、新入社員のパフォーマンスが落ちたくらいで大ごとになる会社なんて成立するわけがない。

 ところが生真面目な子は基本的に不器用で視野が狭いので、そうは思えません。「こんな状態で出社したら迷惑をかける」という葛藤が生じ、ますます遅刻や欠勤が増えてしまいます。

承認欲求が高いタイプは他人と比較して不安になる

──承認欲求が高いタイプが陥りやすい気分はなんでしょうか。

 最近増えている承認欲求が高いタイプの特徴は、他人との比較で自分を見る点です。それがパフォーマンス向上につながることもあるし、逆にモチベーションを落とすきっかけにもなります。善しあしではありません。ただ、このタイプは自分が優位にいないと不安を感じ、とても焦るんですね。

 最近はインターンシップを活用している企業も多く、入社1年目の同期の中でも普通の就活組との間でギャップが生じることがあります。30年、40年という長い社会人生活のスパンで見れば、何ほどのこともないのですが、このタイプの新入社員は「おいていかれるのではないか」「評価されないのでは」と不安感が募ってしまいます。

優等生タイプは配属後が注意希望通りではない時がリスク

──あまり挫折を知らない優等生タイプはどうでしょうか。

 これまでの人生を順風満帆で来た彼らがつまずくのは、配属の時です。会社の人事は全体の人事戦略や社員の育成を見込んで決定されます。

 例えば、営業志望の子を自社製品への理解を深めるために、品質管理部に配属する、なんてことがいくらでもある。要するに自分の思い通りにならないことが多いのです。

 今まで自分の努力で未来を切り開いてきた彼らは一直線なので、希望と全く違う部署へ配属されたことを非常に気にします。個人の能力や努力ではどうにもならないことでも「自分はこの会社に必要とされていないのでは」と思い詰めてしまうのです。

 配属をきっかけに不調を訴えるケースは多いですよ。

上司に求められる対応は?2週間を目安に観察と声かけを

──上司はどう接すればいいのでしょうか。

 まず、先ほどお話ししたように、この時期の不調は「正常な防衛機制」であると理解したうえで、行動面に目を向けてください。

 この時期の不調は行動面に現れます。

 例えば、遅刻を繰り返す、当日の朝に突然、休暇申請の電話をしてくる、などが重なるような場合は注意が必要です(下記リスト)。

 ◎行動面のサイン  出勤状況遅刻・早退・欠勤の増加  業務内容集中力の低下、能率の低下、ミスの増加  対人関係協調性の低下、もめごとの増加、孤立  日常生活生活時間の不規則化、睡眠時間の乱れ、生活態度の乱れ  逸脱行動アルコール依存、異性トラブル、ギャンブル、暴力

 ただし私が言うのも何ですが、最近、安全配慮義務違反を怖がるあまり「遅刻はウツのサインだから、早めに健康管理室なり産業医へ」という風潮が行き過ぎている面があります。

 早期に対応することは大切です。しかし、1日、2日の遅刻で産業医との面談を手配したのでは、大ごとになりすぎて、ますます会社から足を遠のかせることになりかねません。むしろ「そういう時期だよね」と泰然と構えていることです。

──上司はじっくり待つ余裕が必要なのですね。

 もちろん、しっかり観察しながら待ってあげることが肝心で、放置ではありません。

 一つの目安は2週間です。GW明けで不調が見え隠れしても、2週間ほどたってだんだん元気になる様子があれば、正常な防衛機制なのです。2週間たってもつらそうであるとか、出社がおっくうそうであれば病的なことを心配するべきなので、この時点で産業医に相談してください。

物理的な時間をとり自分の話を脇に置いて、傾聴する

──観察している間に、飲みに誘ったりというアクションを起こすのは、どうでしょうか。

 難しいところですね。声を掛けるのはいいとして、深追いする必要はありません。「そろそろ配属されて1ヵ月たつけど、どうだ」くらいでいいと思います。

 その時点で何か話したそうにしている様子があれば、例えば30分という物理的な時間を確保し、話を聞くことが大切です。

 つまり、忙しい上司が自分のために時間を割いてちゃんと話を聞いてくれた、自分のつらさを理解しようとしてくれている、と思わせることが重要なのです。そのためにはキッチリ時間をとることが最も簡単で、効果があります。

 その際は重要な連絡を除き、話を中断するようなメールや電話をつながないよう指示を出しておくこと。そして、自分の経験を語らないことです。

──自分の経験を引いてはダメですか。

 多くの人は独りよがりの善意から自分の経験を語るんですよ。「俺はこうやって乗り越えてきたんだから、君だって」「それくらい、新人なら誰にでもあるよ。わーっと飲みに行けば気分も変わる」とかね。

 実際はその時点で「僕はあなたではないし、そもそも時代が違う」という拒絶感が生まれてしまいます。自分の経験談、意見、評価を一切挟まずに、興味を持って部下の話を30分間、聞いてあげられるかどうかが鍵なのです。

 自分がいかに乗り越えたかという話をするくらいなら、逆に弱みを見せたほうがいい。「そうだな、やっぱりGW明けは僕もつらいよ」というようにね。人間、現金なもので「普段、あんなにすごい課長ですら、そうなんだ。自分と同じなんだ」と思えるだけで、気持ちがすごく楽になりますから。

 ただしこれは、日頃から「デキる上司」でないと効果はあがりません(笑)。

 繰り返しになりますが、この時期の不調は「正常な防衛機制」であり、当たり前のことなのです。上司が慌てふためいて、距離を詰めようと態度を変えることもストレスになります。お互い五月“病”という言葉に振り回されないことが大切でしょう。

ダイヤモンド・オンラインの関連リンク

ダイヤモンド・オンライン
ダイヤモンド・オンライン
image beaconimage beaconimage beacon