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イーロン・マスクの元部下が語る「テスラのハード・ワーキング」

Forbes Japan のロゴ Forbes Japan 2017/11/13 Forbes JAPAN 編集部

© atomixmedia,inc 提供 いまや世界を代表する起業家イーロン・マスク。持続可能エネルギーを原動力にした社会の実現や火星移住計画など、規格外のビジョンが注目を集めるが、一方で彼のマネジメントにはなかなかスポットライトが当たらない。

そんな「社内のイーロン」と密に接して来た日本人がいる。テスラモーターズで4年余り働き、現在はホンダなどと協同し、シリコンバレーで最も注目される日本のスタートアップとも評されるドライブモードの共同創業者・上田北斗だ。

2017年10月19日、一般社団法人「at Will Work」主催、ForbesJAPANと協同で次世代の働き方を模索する雑誌「WORK MILL」を創刊した岡村製作所の後援で、シリコンバレーから久方ぶりに帰国した上田と、早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄の特別対談が実現。社内マネジメントを通して窺える、もう一つのイーロン・マスクの貌を2回に渡って掲載する。

第1回で紹介するのは、あまりに徹底したトップダウンを行うイーロンの姿だ。

入社日に突然、「4カ月で工場を作れ」と言い渡された

入山:イーロン・マスクの第一印象はどうでしたか。

上田:初めて会ったとき、イーロンはスマイルがなく、無愛想な人だと感じましたね。ハーバードビジネススクールを卒業して2011年5月末にテスラへ正式に入社したんですが、その初日にイーロンから「工場を作ってくれ。10月1日のオープンパーティの招待状を3000人に送ったから」と言い渡されたんです。

入山:えっ!?たったの4カ月で工場を?

上田:でも工場で働いたこともないから、4カ月で工場を作るのが難しいのかどうかもよくわからなくて。とりあえず「Yes. No Problem.」と答えたんです。何が難しいのからすら、当時の僕にはよくわかりませんでした。

休止していた元トヨタの工場を、4カ月で新たな工場に作り変えたんです。テスラでは場が人の行動を変えるという考え方を採用していました。従来の工場っぽくない綺麗な場所で働けば、それにつられて従業員の士気も上がるということですね。

入山:日本でも「働き方改革」でオフィスを綺麗にしようと言われるけど、実際は事務スタッフの部屋やバックオフィスにコーヒーメーカーをつけるといったことばかり。工場を綺麗にすべきというのは、たしかにその通りですよね。結局、4カ月で完成したんですか?

上田: 完成しました! オープン当日にドアのペンキを塗るくらいにギリギリでしたけど。写真は最終品質をチェックの場所ですが、ちょっと段差を高くしてスポットライトを当ててステージのようなつくりにしています。これがイーロンのこだわりです。正直、面倒臭かったですね(笑)。

ただ、4カ月でできたのはあくまで工場の見てくれだけ。その後は内部の稼働準備に移りました。それから「モデルS」のプロトタイプの製作を一年くらい任されて、2012年6月にローンチしました。

入山:2011年5月末にモデルSを作るための工場を作り始めたんですよね。たったの1年で製品をローンチ。すごいスケジュール感ですね。

強力なトップダウン経営が生んだ「ミッド・ナイト・トレイン」

© atomixmedia,inc 提供

早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授

入山:テスラにいたのは2015年半ばまでの4年間ですよね。この期間には何をやったのですか?

上田:工場立ち上げからモデルSのローンチやデュアルモーターという四駆のローンチ、モデルXの開発に少し関わって、それからギガファクトリーという世界最大級のバッテリー工場をネバダに立ち上げました。ほかにはないプロジェクトばかりで、めちゃくちゃ楽しかったです。

入山:ニュースに出ているようなテスラの主だった仕事のすべてに関わったということですね。ではちょっとミーハーな質問ですが、イーロン・マスクはどんな人でしたか?

上田:すぐクビにするという意味では、すごく怖い人ですね。週一でミーティングをしていましたが、そのあと人が消えるということもしょっちゅうでした。

入山:なんでもテスラ独自の言葉があるのだとか?

上田:突然のクビという意味で、「ミッド・ナイト・トレイン」という言葉が社内で飛び交ったこともありました。ヘマをした人が、会議をした夜中の列車で連れ去られて消えると、「最近アイツ見ないね」「ミッド・ナイト・トレインされたんだ!」って。

イーロンはそういう意味では怖い人ですが、必要な恐怖だったと思っています。要するに彼は、ある分野に特化した人じゃなければ雇わないんです。だからイーロンより知識がない人をクビにして、さらに知識がある人を雇うんです。

入山:彼はめちゃくちゃ勉強していると聞いたことがあります。

上田:その通りです。機械のことなら細部まで知っている。だから、適当なことを言うとすぐに指摘されて、「ミッド・ナイト・トレイン」。結果として、特定のジャンルを極めた人か、僕のように何も知らないけどそのぶん死に物狂いでやり遂げる人が生き延びるんです。

入山:なるほど。では、上田さんはイーロンとの仲は良かったんですか?

上田:プライベートな会話はほとんどなかったですね。正直、ミーティングで報告したらなるべく早めに帰るようにしていました。僕の知る限り、イーロンは社内ではほとんど誰とも仲良くしていませんでしたね。

入山:孤高の経営者だった。

上田:そうですね。近づきがたい雰囲気でした。

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会場:強力なトップダウン式だというのはわかりましたが、現場の権限はどこまで与えられたんですか?

上田:初期と今では違うかもしれないけど、僕がいた頃には2万ドルの機械が必要だと伝えると、「俺に尋ねる時間がもったいないから早くやれ」と突き返されました。一人一人を専門家として雇っているから、「お前が良いと思うなら早くやれ」という考え方。

イーロンは怖いけど、理不尽ではないと思っています。「そのやり方は違う」とちゃんと反論すれば納得して応えてくれます。

入山:彼はどんなときに怒るんですか?

上田:モデルSのプロトタイプをシリコンバレーからLAにいるイーロンに送ったのですが、12時間後に電話で「飛行機に乗って今すぐ来い」と呼ばれて。スペースXの横にある空港のポート横にプロトタイプがあって、その横にマスクがいるのですが、飛行機の中からでも彼が怒っているのがわかるんです。

出会ったら2時間くらい怒られて、「すぐに直せ」と飛行機で送り返されて。怒られるためだけに飛行機に乗ったのはそれが初めてでしたね(笑)。

彼は、怒るときはとにかく怒るんです。ボディのラインが気に入らなかったらしくて、客に受け渡す1カ月前に金型から直さなきゃならないのに「絶対やれ」と。

入山:日本の前例主義の逆ですね。日本では前例にならっているかを気にすることが多いですが、テスラでは前と同じことをやったら怒られるんですね。

(第2回に続く)

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