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クラシックラガーや赤星 往年のビールが選ばれ続ける背景

NEWSポストセブン のロゴ NEWSポストセブン 2018/08/11 07:00
熱処理したキリンクラシックラガー(左)とサッポロラガービール © SHOGAKUKAN Inc. 提供 熱処理したキリンクラシックラガー(左)とサッポロラガービール

 かつて、家庭用ビールと言えば「キリンビール」一強の時代が長く続いていた。お父さんたちは判で押したように酒屋からキリンの瓶ビールをケース買いしていたものだ。

 それが大きく変わった転換点が、アサヒビールから「スーパードライ」が登場した1987年。瓶から缶への大きなうねりとともに“生ビール”が主流になっていった。生ビールは、「キリンビール」のような熱処理したビールと区別する意味では非熱処理ビールということになる。

 熱処理したビールが主流だったのは、生きた酵母が入っていると賞味期限が短くなってしまうことから、熱で酵母を殺していたため。が、濾過技術の向上によって、熱処理しなくても酵母を取り除けることができるようになったことも生ビール浸透に拍車をかけた。そのため、いまでは熱処理したビールはごく僅かとなったが、好んで飲む、往年のコアなファンの人たちも一定層いる。

 スーパーでビールコーナーの棚を覗いてみると、「キリンラガービール」の6缶パックの箱に“130”年という文字が入っている。1888年に発売された、歴史の古いビールなのだ。ただ、前述した「スーパードライ」の攻勢でガリバーシェアを誇っていたキリンがジリジリとシェアを落とす過程で、看板ビールの戦略は揺れ動いた。

 1988年、まず「キリンビール」を「キリンラガービール」に改め、その後、1996年になると名称はそのままに生ビールへと変更。1990年に投入してヒットした「一番搾り」と「ラガービール」の二兎を追う作戦に出たのだが、生化によって往年のファンが離れてしまったのだ。

 そこで2001年、生化した「キリンラガービール」とは別に、熱処理したものを「キリンクラシックラガー」として再発売し、今日に至っている。

 スーパーでは両商品とも通年商品として棚に並んでいるが、「ラガービール」が「一番搾り」同様、6缶パックや500ml缶も置いているのに対し、「クラシックラガー」は350ml缶のみで、置かれている棚もクラフトビールと同じ配置になっていた。ちなみに「ラガービール」のアルコール度数は5%、「クラシックラガー」は4.5%とやや低めなのも往時とまったく一緒だが、苦みが強めの「クラシックラガー」は、いまや伝説のクラフトという領域に入ってきているのかもしれない。

 一方、キリンよりさらに歴史が古く、1877年に発売した日本最古のビールとして知られるのが、サッポロビールから出ている「サッポロラガービール」である。「黒ラベル」のようなゴールドの星マークでなく、赤い星マークということから「赤星」という愛称で呼ばれている。

 かつて、俳優の三船敏郎の台詞で有名になった〈男は黙ってサッポロビール〉というシブいコピーも「赤星」だった。同じ熱処理ビールでも「赤星」はアルコール度数は5%、苦みも「クラシックラガー」ほど強くはなく、「重厚な味わいだが後味はスッキリしている」など、コアなファンの間で人気になっている。

「赤星」はサッポロビールのホームページ内に「赤星探偵団」というコーナーが常設されており、「赤星」が飲める、ちょっと粋な居酒屋や小料理屋、足で稼いだ美味しい料理の情報を紹介するという設定だ。サッポロビールの髙島英也社長は、「赤星」についてこう語っていた。

「ネオ大衆居酒屋という、昭和の匂いが少しする、ちょっとおしゃれで女性が1人でも行ける小ぎれいな居酒屋には大抵、『赤星』が入っていて好評です。また、イタリアンといったいままでなら考えられなかったレストランでも『赤星』が選ばれているんです」

 では、こうした飲食店向けの業務用だけでなく、キリンの「クラシックラガー」同様、「赤星」も量販店で缶の通年販売はしないのだろうか。

「よく考えていきますが、希少価値があるから人気があるっていうところもある。クラフトビールライクなね。そんなに出回ってはいないけど、飲んでみたらとても美味しいと言っていただける商品です」(高島社長)

 希少性が口コミで広がってきたせいか、ここ6年で、「赤星」の瓶の販売量は約2.3倍まで伸びてきているという。髙島氏がクラフトライクと位置づけていたように、「黒ラベル」や「ヱビス」と違って大きな広告宣伝投資はせず、口コミやSNS等によってジワジワと息の長いロングセラー商品にしていきたいのだろう。

 ただし、缶については通年販売こそしていないものの、昨年も数量限定で6月に量販店で発売し、好評だったことから11月にも再度、発売している。そして今年も、去る7月24日から「赤星」の缶が限定販売された。

 ネット通販でも買うことができ、たとえばアマゾンでは350ml缶1ケース(24本)が税込み5540円、1本当たり約227円、500ml缶1ケースが同7955円、1本当たり約331円と、プレミアムジャンルやクラフトのビールと同じような水準の価格帯だ。

「清涼飲料であれば暑ければ暑いほどいいのですが、ビールの場合、35度以上の気温になってしまうと、逆に(脱水症状を気にして)少し敬遠されてしまう」(あるビールメーカー幹部)

 と、連日続く猛暑、酷暑はあまり歓迎ではないようだが、それでもビール最盛期、生ビールでなく、たまには熱処理した苦めの“これぞ古き良き時代のビール”を試すのも悪くない。

●文/河野圭祐(ジャーナリスト)

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