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ソニーとパナの有機EL事業統合、出資元候補に中韓大手も急浮上

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/08/21 06:00 週刊ダイヤモンド編集部
ソニーとパナの有機EL事業統合、出資元候補に中韓大手も急浮上: 写真はJOLEDが世界で初めて商業生産した印刷用有機ELパネル。本格量産には資金調達のハードルが待ち構えるが、革新機構の志賀俊之会長(左)は、追加の支援に乗り出すか Photo by Reiji Murai © 画像提供元 写真はJOLEDが世界で初めて商業生産した印刷用有機ELパネル。本格量産には資金調達のハードルが待ち構えるが、革新機構の志賀俊之会長(左)は、追加の支援に乗り出すか Photo by Reiji Murai

ソニーとパナソニックの有機EL事業を統合したJOLED(ジェイオーレッド)の増資交渉が難航している。世界初となる「印刷方式」の有機ELの量産投資に1000億円を調達する計画だが、確保できたのは半分にも満たない額だ。その不足分の手当てが最大の課題だが、交渉の水面下の動きは混迷している。(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 村井令二)

「1000億円には全く足りていない」。JOLEDの幹部は、有機ELパネル量産のための増資計画の遅れを認めている。

 2015年に産業革新機構が75%、液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)が15%、ソニー5%、パナソニック5%の出資比率で発足したJOLEDは、韓国勢が先行する「蒸着方式」の有機EL技術よりも低コストで生産が可能な「印刷方式」の有機EL技術を開発する国策企業。今年7月にはJDIが手放した能美工場(石川県)を取得し、20年の本格量産を目指しているが、課題は、その設備投資に必要とされる1000億円規模の資金調達だ。

 昨年から資金集めに奔走してきたJOLEDは、6月29日付で、デンソー300億円、豊田通商100億円、住友化学50億円、装置メーカーのSCREENホールディングス20億円と4社からの出資受け入れを完了した。

 しかし、もともと17年中に総額1000億円を確保する計画だったのに対し、半年遅れでようやく470億円を調達できたというのが実態だ。残る500億円強の調達について、前出のJOLED幹部は「今年度いっぱいで残りを集めていけばいい」と強気の姿勢だが、その交渉は厳しい。

 まず、残る候補の本命は、株主であるソニーとパナソニックの追加出資だが、両社とも一度切り離した有機EL事業への再投資には消極的だ。このほか、ガラスメーカーの米コーニングとAGCも関心を示しているというが、交渉の進展は見られない。これら候補企業には、それぞれ50億円規模の出資を求めたものの、いずれも交渉は難航しているもようだ。

 JOLEDから出資を打診されたある企業の関係者は「20年にパネルを量産するといっても売り先も決まっていない中で、能美工場を黒字にする計画は楽観的過ぎではないか」と手厳しい。

 能美工場は、基板サイズが第5.5世代(1.3×1.5メートル)の中規模設備で、量産するパネルのサイズは10~32型となっており、大型テレビ用のパネルの生産には適さない。もともと、印刷方式の有機EL技術の長所が生かせるのは大型テレビ用パネルとされ、能美工場単独ではJOLEDの成長は描きにくい。

 JOLEDは、能美工場で印刷方式の有機ELパネルの量産実績を積んだ上で、中国はじめ他のパネルメーカーの大型工場に技術をライセンス供給するビジネスを構想しているが、その実現プロセスは不透明で、出資候補企業の理解を得られていないようだ。

ソニー、パナ離れ中韓勢が接近で揺れる革新機構

 こうした状況の中、筆頭株主の革新機構が追加出資の検討を迫られていることが本誌の取材で分かった。出資候補とされる企業からは、「まずは革新機構が追加出資するべきではないのか」との声が高まっている。

 だが、すでに革新機構はJOLEDの主要株主であるJDIに対し、設立時の12年に2000億円を出資したほか、資金繰りに窮した16年末に750億円の資金支援を実施し、昨年8月から1070億円の債務保証も継続。その支援総額は3800億円を超える。

 また、JOLEDには、15年の設立時に135億円を出資し、翌年には115億円の優先株を引き受けたほか、今年7月には能美工場の買い取り資金200億円を現金出資しており、支援総額は450億円になった。

 つまりJDIとJOLEDへの支援額の合計が4000億円を超える状況で、「これ以上の資金支援は難しい」というのが、革新機構の基本的なスタンスだが、JOLEDの資金調達が1000億円に遠く及ばない状況で、無関係を装うのは難しくなっている。

 実際、ある政府関係者からは「経営再建中のJDIと、これから成長するJOLEDは切り離して考える必要がある」との声も出ており、急速に高まるJOLEDへの追加出資の圧力に、政府や革新機構の内部は揺れている。

 また、当初JOLEDは、1000億円の増資は国内企業で固める方針だったが、関係者によると、すでに中国家電大手のTCL集団が議決権のない優先株で出資する案が議論されているほか、テレビ用有機ELパネルを独占する韓国LGディスプレーも印刷技術に関心を示しているという。

 本命のソニーとパナソニックがJOLEDと距離を置きつつある一方で、中韓勢が急接近する構図が浮かび上がる中、残る500億円強の交渉は混迷の度合いを深めている。こうした状況で革新機構はどう動くのか。

 判断を誤ればJOLEDがいつまでも「親方日の丸」から脱却できなくなるのは確かだ。

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