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ディズニー「映画コンサート」に注力する理由 スター・ウォーズで公演、新しい映画の見方

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/08/11 08:00 藤原 宏成
7月29日に開催された「スター・ウォーズ・イン・コンサート」。上演前にはダース・ベイダ―とストームトルーパーが登場。その後、オーケストラによるファンファーレが鳴り響いた(撮影:星野麻美)Presentation licensed by DISNEY CONCERTS in association with 20thCentury Fox, Lucasfilm and Warner/Chappell Music.© 2018 & TM LUCASFILM LTD. ALL RIGHTS RESERVED © DISNEY © 東洋経済オンライン 7月29日に開催された「スター・ウォーズ・イン・コンサート」。上演前にはダース・ベイダ―とストームトルーパーが登場。その後、オーケストラによるファンファーレが鳴り響いた(撮影:星野麻美)Presentation licensed by DISNEY CONCERTS in association with 20thCentury Fox, Lucasfilm and Warner/Chappell Music.© 2018 & TM LUCASFILM LTD. ALL RIGHTS RESERVED © DISNEY

 シーンと静まったコンサートホールに20世紀フォックスのファンファーレが鳴り響いた。大画面に映し出されたタイトルロゴに合わせ、『スター・ウォーズ』のテーマの演奏が始まる。

映画を生演奏とともに上映

 7月29日、東京オペラシティで開催された「スター・ウォーズ・イン・コンサート ジャパンツアー」のプレミア特別公演。スター・ウォーズの旧3部作『新たなる希望』(1977)『帝国の逆襲』(1980)『ジェダイの帰還』(1983)を巨大スクリーンで一気に見ることができるだけではない。セリフや効果音はそのままに、映像に合わせ、オーケストラが生で演奏するのだ。

 チケットの価格は3万2700円と高額。それでも発売と同時に即日完売した。都内から来た50代の男性は「シリーズが始まったときからのファン。旧三部作が一気に見られる機会はないし、それをオーケストラで楽しめる。こんな機会は二度とないと思う」と興奮ぎみに話す。会場にはスター・ウォーズ“第1世代”だけでなく、20~30代の若い世代も少なくない。当日は1150人ものスター・ウォーズファンが押し寄せた。

 演奏は東京フィルハーモニー交響楽団が担当。演奏者たちは、スター・ウォーズのファンを中心に選ばれたという。各作品の上映中に1回の休憩、さらに作品ごとに約1時間の休憩を挟み、公演は計10時間40分に及んだ。

 それでも最後のエンドクレジットが流れ、オーケストラの音がやむと、スタンディングオベーションが起きた。観客と演奏者の一体感が会場を包む。「スター・ウォーズは何度も見てきたが、次元の違う体験だった」。公演後に話を聞くと、30代の男性はそんな感想を話してくれた。

 【8月11日20:20追記】初出時、「演奏は日本フィルハーモニー交響楽団」としていましたが、「東京フィルハーモニー交響楽団」に訂正します。

 スター・ウォーズを制作するルーカスフィルムが、米メディア大手・ウォルト・ディズニー・カンパニーの傘下となったのが2012年。ディズニーは2015年、約10年ぶりにシリーズ新作を制作するなど、スター・ウォーズでも新しい展開を進めてきた。今回のシネマコンサートも、ディズニーならではの仕掛けといえるだろう。

 実はディズニーは近年、スター・ウォーズに限らず、シネマコンサートを積極的に手掛けている。日本で本格展開を始めたのは2017年からで、「アメリカなど海外で開いたものは、ほとんど日本に持ってきている」(日本法人のウォルト・ディズニー・ジャパン)。

「ファン作りのエコシステム」

 その狙いについて、同社で音楽・ライブエンターテインメント部門のバイスプレジデントを務めるシェイクスピア悦子氏は、「ゲスト(顧客)の予想を超える新しい体験を提供すること」を挙げる。「ディズニーの作品の多くは音楽が真ん中にある。その音楽を生で聴くことは、これまでにない“感動体験”になる」(同)。

 “感動体験”の手段はさまざまある。ディズニーはCG(コンピュータグラフィックス)や3D(3次元)映像、VR(仮想現実)など最新テクノロジーを駆使する。ただ、シネマコンサートに関して重視するのは、「アナログの体験」。その場でしか体験できないライブ感が、新しい価値を生んでいく。

 もともとディズニーは「ディズニー・オン・クラシック」や「ディズニー・オン・アイス」など、多くのライブエンターテインメントを手掛けている。そのディズニーが映画とライブを組み合わせることは、自然な流れだったようだ。

 シネマコンサートのもう1つの狙いに、コアファン作りがある。「さまざまなタッチポイント(ゲストとの接点)を持つことが、ファン作りのエコシステムになる」(シェイクスピア氏)。そうした中で、シネマコンサートはコアファンに向けた重要なタッチポイントになる。実は同氏は音楽・ライブ部門のほかに、クレジットカード会社との提携事業も所管する。ディズニーのカードを持つゲストも熱心なファンが多い。音楽とライブ、カードを同じ組織で担当することに、ディズニーの戦略が垣間見える。

 今回、運営を担当したプロマックスの飯島則充プロデューサーは、シネマコンサートの特徴を「映画と音楽が対等な関係にあること」と語る。「指揮者に求めるのは曲の始まりと終わりを映像に合わせることだけで、それ以外の表現はすべて指揮者に委ねている。結果的に、音楽の情感が際立つ」(同氏)という。

 コンサートやイベントを制作する同社は、シネマコンサートの公演に力を入れる。その数は2015年に2作品3公演、2016年に2作品8公演、2017年に5作品18公演と年々増えてきた。今年は上半期のみで4作品26公演が実施される予定。ディズニー作品に限らず、『ゴッドファーザー』や『ニュー・シネマ・パラダイス』など、著名な旧作を中心に手掛ける。料金は1作品で大人7800円~9800円という設定だ。

背景に映画産業の変化がある

 なぜ、ここまで増えているのか。要因の1つは映画産業の変化だ。映画産業に詳しい早稲田大学の土田環講師は、「映画館の入場者数が最も多かった1958年の1人当たりの映画鑑賞本数は12.3本。2015年時点では1.3本まで減少している」と指摘する。さまざまな娯楽が増えたことに加え、動画配信の「ネットフリックス」や「フールー」などの登場で、家庭でも気軽に映画を楽しめる機会が増えたことも影響している。

 映像の3D化や観客参加型の「応援上映」といった上映方法、カフェ・レストランや野外といった上映場所での工夫など、業界では試行錯誤が繰り返されている。オーケストラを用いることで、音の付加価値を最大限高めたシネマコンサートは、映画の進化の一歩と言えるかもしれない。

 とはいえ、日本でのシネマコンサートの認知度はまだまだ低い。これまでの公演の多くは東京、大阪、名古屋といった大都市に限られてきた。

 それだけに「スター・ウォーズ・イン・コンサート」の持つ意味は大きい。このツアーは7月29日のプレミア公演を皮切りに、全国7都市で計14公演開催される。プロマックスの飯島氏は「スター・ウォーズという熱狂的なファンを多く持つ作品を通じて、全国の人にシネマコンサートを体験してもらいたい」と語る。「逆にスター・ウォーズでダメなら、ほかのどの作品でも難しいだろう」(同氏)。

 ディズニーのシェイクスピア氏も、今後の展開について「地方も含めて、(シネマコンサートを)どんどん広げたい」と語る。シネマコンサートはどこまで広がるのか。映画における新しい価値の模索が続いている。

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