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トヨタも驚くマツダの生き様、「SKYACTIV-X」が見せた技術の凄み

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/08/09 桃田健史
トヨタも驚くマツダの生き様、「SKYACTIV-X」が見せた技術の凄み: 都内で開催された、マツダ技術開発長期ビジョン説明会。マツダの幹部が出席した Photo by Kenji Momota © diamond 都内で開催された、マツダ技術開発長期ビジョン説明会。マツダの幹部が出席した Photo by Kenji Momota

これが、トヨタの本当の狙い!?マツダの新エンジン「SKYACTIV-X」

 2017年8月8日、マツダ技術開発長期ビジョン説明会で世界初公開された、マツダの次世代型エンジン「SKYACTIV-X」。

 口の悪いメディアは、「これは結局、トヨタのEVとのバーター」と称した。

 換言すれば、トヨタですら実現が難しい内燃機関技術の量産化を、マツダが成し遂げようとしているということだ――。

 東京・丸の内で開催された同説明会は、午後2回開催され、初回がテレビ・新聞・アナリストなど向け、2回目が自動車関連メディアと官公庁関係者向けとなった。マツダ関係者は「先週の会見の後、この説明会への参加希望者が増えた」と漏らす。

 先週の会見とは、トヨタとマツダの資本提携に基づく、北米新工場の設立の他、EVプラットフォーム、コネクテッド領域、そして自動運転につながる高度な運転支援システム開発に関する共同研究を行うという趣旨だった。

 同会見後、各方面から筆者に対して問い合わせがあったが、「マツダにとってはEVや自動運転などトヨタから得るモノが大きいが、トヨタにとってマツダの何が魅力なのかよくわからない」という声が多かった。

 トヨタの豊田章男社長は、一括企画など商品開発における手法をマツダの魅力として強調したが、“本当の魅力”が今回公表されたSKYACTIV-Xであることは明らかだ。

トヨタも驚くマツダの生き様死に物狂いで未来を切り拓く姿勢

 2019年に市場導入を予定しているSKYACTIV-Xは、現在発売しているガソリンエンジンのSKYACTIV-GとディーゼルエンジンのSKYACTIV-Dの、両方が得意とする技術を融合させたものだ。

 一般的なディーゼルエンジンは、燃料を高圧まで圧縮することで自然着火させるが、これをガソリン燃料で行う。マツダの実験では、従来の約半分のガソリンの量で、ディーゼルエンジンのような低回転域での太いトルク感と、ガソリンエンジンが得意とする中高速回転域での爽快な伸び感を両立できるという。

 燃費が良くて走りが楽しい、理想的なエンジンという触れ込みだ。

 今回の会見に参加した、ある省庁の技術畑の官僚は筆者に対して「発表の内容に、かなり驚いた」とマツダの発想力と量産化を可能とした実行力を称賛していた。

 こうした声は、トヨタ側としても同じだろう。2年前にマツダとの技術領域での協業に向けた協議に入った後、SKYACTIV-Xの技術詳細を知ったトヨタのエンジニアたちも、マツダの実力を思い知ったに違いない。

 エンジニアの数も、開発資金も、トヨタと比べて小規模なマツダが、エンジニアの夢ともいえるこうした内燃機関を号口化(ごうぐちか:トヨタ社内用語で量産化のこと)してしまうことに、トヨタのエンジニアたちは心の底から驚いたであろう。マツダが死に物狂いで自らの未来を切り拓こうとしている姿勢に、その迫力に、トヨタは圧倒されたのではないか。

電動車もSKYACTIV戦略に入るのか、入らないのか?

 会見の中で、筆者が疑問を持った点は、SKYACTIV戦略における電動車の扱いだ。

 2020年のマツダ創立100周年に向けた商品戦略全体図の中で、EV、レンジエクステンダー、PHEV(プラグインハイブリッド車)といった電動車の名前が並ぶが、商品戦略の説明ではSKYACTIVシリーズのラインアップに電動車は登場しない。

 これについて、マツダ側は詳細な説明を避けた。しかし現実的な視点で見れば、電動車商品群も今後、SKYACTIVというブランディングが施されるのは当然だと筆者は考える。

 その中でも、注目されるのがレンジエクステンダーだ。レンジエクステンダーとはEVの技術を基盤として、搭載する内燃機関を発電機として活用するもので、現在発売されているクルマではBMW i3レンジエクステンダーがある。マツダのレンジエクステンダーでは、発電機にロータリーエンジンを採用する可能性がある。筆者も以前、その基礎技術についてメディア向けの取材会で詳しい説明を受けている。

「クルマ」にこだわることはマツダにとってリスクにならないか

 今回の、マツダ技術開発長期ビジョン説明会では、小飼雅道社長と研究開発を統括する藤原清志専務が登壇したが、プレゼン資料の中では一貫して「クルマ」という言葉を使った。

 一方、8月4日のトヨタとの共同会見でトヨタの豊田章男社長は「クルマからモビリティへの転換」を前提に、クルマに対する愛が大事だと説明した。

 トヨタとマツダ、それぞれで「クルマ」に対する企業としての方針が違うのは当然だ。

 その上で、マツダは独自のパワートレイン開発を中核に、「クルマ」へのこだわりをさらに深めていく。

 筆者が気になるのは、マツダが今後「モビリティ」に対する考え方をどのように具現化するかだ。今回の小飼社長のプレゼンの後半、「社会課題」、「社会の実現策」など、トヨタが言う「モビリティ社会」に近い考え方を提示しているが、こうしたMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)で、マツダは具体的にどのような戦略を描くのか?

「クルマ」にだわり過ぎることが、「モビリティ」との共栄共存化に対するリスクにはならないのか?

 SKYACTIV-Xをきっかけとして、マツダの挑戦はまだまだ続く。

(ジャーナリスト 桃田健史)

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