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ドイツのエネルギー革命、中欧2カ国で摩擦

The Wall Street Journal. のロゴ The Wall Street Journal. 2017/02/17 ZEKE TURNER

 【ベルリン】中欧でパワーバランスを巡る戦いが繰り広げられている。ただし、ここでいうパワーとは電力のことだ。

 ポーランドとチェコは、ドイツが過剰に生産した電力を国境のこちら側に捨てる侵略者だとみている。これに対しドイツは、再生可能エネルギーのパイオニアを自負し、革新性に劣る隣国の攻撃は不当だとする。

 ドイツはアンゲラ・メルケル首相の「エネルギー革命」の一環として、2022年までに原子力発電所を閉鎖し、急拡大する風力・太陽光発電で代替する計画だ。

 だが不安定な再生可能エネルギーは常に利用できるとは限らず、ドイツは電力の流れを絶やさないために石炭発電所やガス発電所も利用している。

 風が強い日や晴れた日にはこれが問題を生む。需要をはるかに上回る電力を生産してしまうのだ。余剰電力は国境を越えてポーランドとチェコに流れ、送電網を破綻の脅威にさらしていると両国の企業や政府は言う。

 チェコの国営送電会社CEPSの広報担当者は「ドイツ政府の純粋に政治的な判断に巻き添えを食っている」と述べた。同社はこれまで、「そうした影響に関する相談も協議も受けていない」という。

 ドイツ側の企業は不安定な電力の流れが問題であることは否定していないが、主な原因は国境両側の送電網が老朽化していることだと主張している。

 ポーランドとチェコへの送電線を運営するドイツ北東部の送電会社50ヘルツ・トランスミッションの幹部は「鎖の強度はその中で最も弱い輪で決まる」と述べた。

 問題を増幅させているのは、ドイツが10年にわたり高圧送電線の設置に腐心していることだ。この送電線は風の強い北部で生産された電力を、電力の大量消費地である南部の工業地帯へと送る。だが設置が遅れているため、南に電力を送る際にポーランドやチェコの送電網を使わざるを得ないことから、両国の送電網は多大な負荷を受け、停電のリスクにさらされている。

 ポーランド電気協会と同国最大のエネルギー会社ポルスカ・グルパ・エネルゲティチュナで幹部を務めるグレゼゴルツ・ウィリンスキ氏は、ドイツからの電力が「相互接続の送電線全ての動きを妨げている」と述べた。

 ドイツの電力の負荷に耐えるため、チェコとポーランドの政府は多額の資金を投じ、送電線の高圧化を進めると共に、電力をドイツ側に戻すための変圧器を国境に設置している。

 そのためCEPSとポーランドの送電会社ポルスキー・シーチ・エレクトロエネルゲティチュネは1億1500万ユーロを「フェーズシフタ」として知られる巨大な変圧器に費やした。同社の広報担当者によるとポーランドは昨年、送電網と変電所の改修に3億ドルを投資したという。

 ドイツの送電会社も手をこまねいているわけではない。50ヘルツ社は過剰な流れを抑える目的で国境のドイツ側2カ所に変圧器を追加している。だが、1基の設置は訴訟のためにコストが約1億ユーロに膨らみ、3年遅れているという。

 ドイツ経済省の広報担当者は「わが国のエネルギー供給再構築は長期的なプロセスであり、追加的なステップが必要であることは明らかだ」と述べた。

大型発電所1基分の石炭消費が減少

 チェコとポーランドの顧客は相変わらずコスト負担を強いられている。両国の石炭発電会社は甚大な影響を受けている。送電網がドイツの電力で詰まっているため、自社が生産する電力を取引する能力が低下しているのだ。渋滞したトンネルに車が入れないのと同じ理屈である。

 チェコ最大の電力会社CEZグループの鉱業子会社幹部ウラジーミル・ブジンスキ氏によると、送電線のスペース不足のせいで、CEZはチェコからポーランドに向けて国境をまたいだ電力取引をすることができない。ポーランドの電力価格はメガワット時当たり6ユーロ高い。

 ブジンスキ氏は「現時点では容量がない。われわれにこの事業はできない」と述べた。

 ウィリンスキ氏によると、同国の発電所が1年に燃やす石炭の量はドイツの風力・太陽光発電能力が急拡大しはじめた2008年に比べて400万トン少ない。これは、大型発電所1基の閉鎖に相当する。

 ポーランド経済省の幹部によると、同国政府は過去7年にわたる協議でドイツに補償を求めてきたが、ドイツ側の電力網の動きが渋滞を引き起こしていることを証明しあぐねている。送電線内部の「電力に印がつけられてわけではないため、その現象を証明するのは難しい」という。

 また企業からすると、送電線の不均衡を解決するための費用は欧州連合の規則に従って当事者双方が折半することになる。

ドイツが「エネルギー革命」により過剰に生産した電力がポーランドとチェコに流れ込み、送電網を破綻の脅威にさらしている。写真は風力タービンと送電塔(2016年12月、独イルックレーベン) © Provided by The Wall Street Journal.

 レギュラトリー・アシスタンス・プロジェクト(ベルリン)のシニアリサーチャー、アンドレアス・ヤーン氏によると、ドイツが自国の送電線網を完備できるまでは、同国エネルギー革命の気まぐれに隣国が対応する方法はほとんどない。

 ヤーン氏は「それ以外で残る唯一の選択肢は、国境閉鎖だ」と述べた。

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