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パナの「テスラリスク」はEV電池だけじゃない テスラの大規模リストラで太陽電池に暗雲

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/06/30 07:00 印南 志帆
© 東洋経済オンライン

 「テスラが経営危機にあるという認識はしていない。(テスラの量産型セダン)『モデル3』の生産遅延に対しては、担当者が毎日のようにコミュニケーションを取っている。ご懸念いただかなくても大丈夫だ」

 6月27日に開かれたパナソニックの株主総会。株主から米テスラとの協業リスクを問われると、車載事業を展開するオートモーティブ・アンド・インダストリアルシステムズ社を率いる伊藤好生副社長は力強くこう答えた。

 テスラとEV用電池の供給で提携するパナソニック。これまでテスラがモデル3の量産計画を2度も先延ばしにした影響もあり、二次電池事業は赤字に沈んできたが、状況は好転しているようだ。テスラは生産設備の大規模刷新などを経て、6月末には「(週次5000台の)目標を達成する可能性がかなり高い」(テスラのイーロン・マスクCEO、6月5日の株主総会での発言)。それを受けて、今はむしろ「(パナソニックがテスラに供給する)電池の供給が足りない状況も出てきた」(伊藤副社長)という。

 しかし、それだけでは安心できない。実はパナソニックが直面するテスラリスクは、ほかにもある。2016年に協業を発表した太陽電池事業だ。

太陽光パネルでも生産計画未達

 パナソニックとテスラが共同で運営する米ニューヨーク州のバッファロー工場。2017年12月から屋根材一体型の太陽光パネル「ソーラールーフ」を生産しており、パナソニックは生産設備などに累計300億円超を投資している。

 同工場ではパナソニックがセル(単電池)を供給し、テスラ側がパネルの組み立てを担うスキーム。ただ、ここでもテスラ側が担うパネルの組み立てなどで、生産の遅れが発生している。加えて今回、テスラが太陽光関連事業の事実上の縮小に踏み切ったことが明らかになった。

 「コストを削減し、収益体質にするために、全社の約9%(東洋経済注:3400人弱)にあたる仲間を解雇するという厳しい決断をするに至った」

 6月12日、テスラのマスク氏は自身のツイッターで社内に向けた長文のメールを公開。これまでで最大規模となる人員削減を断行したことを明らかにした。同メールでは、今回の人員削減の対象に生産部門は含まれず、「モデル3」の生産計画には影響がないことが記されていたが、具体的にどういった部門が対象になるのかは説明されていない。ただ、協業するパナソニックによれば、「テスラからは事前に、人員削減対象者の多くが太陽光事業の在籍者であるとの説明を受けていた」。

 確かにマスク氏が社員に送ったメールには、太陽光事業で方針転換があることも示唆されている。売り上げの3分の2程度を占めるとみられる米ホームセンター大手、ホーム・デポ社との契約を打ち切り、テスラの直営店とオンラインでの販売に絞る。ホーム・デポの店頭で働くテスラの販売員には、ほかの販路への異動を申し入れた。ロイター通信の6月22日の現地報道によると、別の社内メールには太陽光関連の施設が13〜14拠点閉鎖されるとも記されているという。

40年以上の歴史を持つ老舗事業

 テスラにとっては固定費を軽減し、EV事業に経営資源を集中させることにつながるため、今回の太陽光事業におけるリストラをポジティブにとらえる見方もある。だが、太陽電池の赤字脱却をテスラとの協業に懸けるパナソニックにとっては、誤算でしかない。

 パナソニックの太陽電池は、2008年に買収した旧三洋電機を母体とし、40年以上の歴史を持つ老舗事業だ。その特徴は世界トップクラスのセル変換効率(太陽光をエネルギーに変換する効率)と耐熱性にあるが、中国メーカーの台頭で世界シェアは上位10位にも入っていない。国内においてFIT(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)が順次終了する影響で、2016年度からは営業赤字に沈んでいる(詳細な事業の売上高や利益は非公表)。

 太陽光事業の立て直しに向け、パナソニックが打ち出したのが市場成長の続く北米やアジアなど海外向け比率の拡大だ。2017年4月には、液晶テレビ事業の止血などを成功させた「再生請負人」、品田正弘氏が太陽光事業の責任者に就任。品田氏は現在6割程度の海外販売比率を2019年度に9割に高めることを打ち出した。

 さらに付加価値がつきにくいパネルの生産を縮小し、これまでやってこなかったセル単位での販売を全体の8割にまで高める方針だ。

 この戦略転換における頼みの綱がテスラとの協業だった。テスラが手掛けるソーラールーフは電池のセルを屋根材に埋め込み、見栄えがいい。2017年5月の予約販売開始当日には完売するという人気ぶりだった。

製品は人気でも生産技術が追いつかない

 ところが、製品の人気はあっても、EVと同様に生産技術が追いつかない。テスラは2019年までに太陽光パネルの生産能力を1ギガワットに拡大させることを目標としていたが、「かなり緩やかに立ち上がっているようだ」(パナソニック)。それを受けて、パナソニックのセル供給量も伸び悩んだ。

 さらに今回のテスラの事業縮小で「今年度に計画していた黒字化は2020年度にずれこむ見通し」(太陽光事業を展開するエコソリューションズ社の北野亮社長)。テスラの生産遅延は今後も継続するとみて、2020年の出荷量におけるテスラ向けの比率も、当初テスラから伝えられたものよりかなり保守的に見積もっているという。

 現在は、先行きの見えないテスラに頼らず、中国や東南アジアなどのパネルメーカーとの供給契約を進めており、「契約は大詰め段階」(北野社長)。テスラ以外への出荷を全体の6割程度まで拡大することで、リスクを分散させたい考えだ。

 テスラという企業の可能性を信じ、2010年から協業を続けるパナソニック。ただ、テスラは理想が高い一方で、生産技術は未熟な部分も多く、生産計画のズレはもはや「お家芸」の域。

 そうした中で、EVだけでなく太陽電池でも同じリスクを抱えるのか。社内からは「EV電池がよければ、太陽光の再建はどうでもよいということなのか」「これからいったいどうなるのか不安だ」といった声が複数聞こえてくる。

 パナソニックの津賀一宏社長はテスラを「運命共同体」と語るが、どこまでリスクを織り込んでいるのか、その腹の内はわからない。少なくとも太陽電池においては、”テスラ離れ”がなければ事業の浮上はなさそうだ。

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