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ブラジル食肉不正発覚で、その座を虎視眈々と狙う国は…?

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2日前

 ブラジルは世界の食肉輸出量の20%を占め、日本はもちろんのこと150か国に輸出している。食肉の生産量そして輸出量では世界のトップである。そのブラジルで3月に発覚した不正検査の認定問題は世界に波紋を呼び、日本でも厚生労働省が捜査対象になった施設からの輸入を停止、他の施設からの輸入についてもチェック体制を厳しくすることを発表するなどしたことは記憶に新しい。

 彼らが行っていた不正は、次のようなことだった。

・肉にアスコルビン酸を注入して新鮮であるように見せかける。

・肉に水を注入して目方を増やす。

・大豆たんぱくを加えて重量感を出す。

・賞味期限を偽装。

 これら以外にも、別の形で不正行為を行っていたとしている。そのような食肉を検査でパスさせていたということなのである。(参照:「La Nacion」)

 そして、11000人いる検査官の中で、33人の検査官がこの不正に関与した疑いがあると報じられている。(参照:「iProfesional」)

 現段階までに明らかになったことは、<4837の食肉加工場>がある中で、<不正が摘発されたのは21の加工場>ということだ。(参照:「El Mundo」)

 テメル大統領は、「この不祥事の原因が解明され、今後の衛生管理は万全に行える」と判断したようで、それを食肉輸入国に伝えるべく<EU、米国、中国を含め40人の大使を招きレストランで肉料理をご馳走>して事態の収拾に務めたという。(参照:「iProfesional」)

◆「漁夫の利」を得に走るのはあの国

 この災難を市場回復の絶好の機会と見ているのがアルゼンチンの食肉輸出業者である。アルゼンチンの過去の栄光を多少とも夢見る機会の到来と見ているのである。

 それは1920年代まで遡る。当時のアルゼンチンはブラジルを遥かに凌ぐ穀物と食肉の輸出国であった。食肉の場合は、当時、冷凍船によってヨーロッパへ盛んに輸出していた。食糧の宝庫であったアルゼンチンは輸出の伸展によって、ラテンアメリカのGDPの50%を担うほどに成長したのであった。当時のアルゼンチンは世界で最も豊かな10か国の一角を占め、国民一人当たりの所得では、米国に次ぐ2番目に豊かな国であった。30年代には米国、カナダ、オーストラリア、アルゼンチンが世界でもっとも豊かな国となっていた。しかしながら、現在のアルゼンチンはGDPで世界59位まで落ちている。

 かように、食肉の輸出で世界をリードしたアルゼンチンが後退したのは理由がある。それは、政府が余りにも市場に干渉し過ぎたことと、賄賂の横行であった。

 政府による市場介入はクリスチーナ・フェルナンデス前大統領の時もそうであった。例えば、インフレによる肉の価格が値上がりするのを抑える為に、彼女は輸出に規制を加えて国内市場で肉の供給過剰を誘発させて価格を下げようとしたのであった。

 これなどは、市場経済の原理を全く無視した政策で問題が起きるのは当然であった。それを、フェルナンデス前大統領の政権時に実施したのであった。その影響で、アルゼンチンの食肉輸出業者は外国での市場を失った。その失った市場に割り込んだのがブラジルの輸出業者で、見事に覇権を奪ったのであった。

 アルゼンチンとブラジルは隣国同士で、両国ともメルコスルの加盟国でもある。しかし、ビジネスはビジネス。凋落していたアルゼンチンの食肉輸出業者は、ブラジルの災難を奇貨として<今後50%の輸出の増加>を目論んでいるのである。<「昨年は27万トンの肉を輸出したが、今年は40万トンまで輸出できる体制にある」>と関係官僚は述べている。因みに、ブラジルは年間140万トン輸出している。

ハーバービジネスオンライン: photo joseclaudioguima via pixabay(CC0 Public Domain ) © HARBOR BUSINESS Online 提供 photo joseclaudioguima via pixabay(CC0 Public Domain )

 現在のアルゼンチンの牧畜業の飼育頭数は、ブラジルの<2億1900万頭に比較して、5300万頭>しかない。<ブラジルが150か国に輸出>しているのに対し、<アルゼンチンは58か国>に輸出しているだけである。(参照:「iProfesional」)

◆ブラジルの穴を狙う国々

 2016年のブラジルの食肉の輸出量はアルゼンチンの5倍の量であった。しかし、その7年前、2009年には僅かに2倍の開きしかなかったのである。なぜそこまで開きが出たのか? ブラジルにとって強みは中国が<年間16万5000トンを輸入している>ということである。(参照:「iProfesional」)

 そして、今回の不正発覚で中国はブラジル産食肉の輸入を停止しているのだ。

 今回のブラジルの不正食肉問題は、ブラジルを前にして失った市場を奪回する良い機会だとアルゼンチンの輸出業者は見ているのである。

 しかし、食肉の輸出の飛躍を期待するアルゼンチンにとって留意せねばらないのは、同じメルコスルの加盟国であるパラグアイとウルグアイもアルゼンチンと同規模の食肉の輸出量を持っている国だということだ。特に、ウルグアイはアルゼンチンの直接のライバルで、タバレ・バスケス大統領は一昨年11月に日本を訪問して食肉の日本市場への輸出拡大の取り決めも行っている。一方のアルゼンチンのマウリシオ・マクリ大統領は今年訪日を予定している。

<文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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