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ポーラ「リンクルショット」で苦境打破する事情 シワ予防が気になる30代がターゲットに

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/11/09 07:50 若泉 もえな
店頭で販売されているリンクルショット(撮影:梅谷秀司) © 東洋経済オンライン 店頭で販売されているリンクルショット(撮影:梅谷秀司)

 化粧品大手のポーラ・オルビスホールディングスは2020年1月1日から、シワ改善美容液の「リンクルショット ジオ セラム」(ジオセラム)を発売する。価格は1万円(税抜き)。中国(越境EC)や台湾、タイなど5カ国・地域に加え、日本、韓国、シンガポールの免税店でも展開する。

 ポーラの山口裕絵執行役員は「日本初のシワ改善化粧品であるリンクルショットを約2年前に発売してから、シワ改善に対するさまざまな要望も出てきた。今回ジオセラムを発売することで、さらに多くの人のシワ改善に寄与していきたい」と語る。

これからシワが気になる30代に照準

 ポーラは2017年にシワ改善美容液「リンクルショット メディカル セラム」(以下リンクルショット)を投入。これは、シワを改善する医薬部外品として厚生労働省の認可を初めて受けた商品だった。リンクルショットは発売からわずか1年で約130億円の売り上げを記録する爆発的ヒットとなった。

 その後、資生堂やカネボウ、コーセーなどの競合も続々とシワ改善化粧品を投入した。富士経済によると、スポットケア(目や口元など部分的に使用する保湿化粧品)商品の販売額は、ポーラや資生堂が関連商品を発売した2017年は前年比140.6%増、2018年も同114.6%増と好調だ。シワ改善化粧品の市場はまだ拡大の余地があり、ファンケルなども市場参入を計画しているようだ。

 ライバルとの販売競争が激化する中で今回発売するジオセラムは、リンクルショットに比べてメインターゲット層の年齢を低く設定している。リンクルショットが40代以降の、すでにシワができている人を中心に使用されていたのに対し、ジオセラムは30代以降に照準を合わせる。これからシワが発生することを予防したい人たちに狙いを定めている。

 ポーラはリンクルショット開発時に、シワが発生する要因を突き止めた。紫外線を浴びることで好中球(白血球の一種)がエラスターゼと呼ばれる成分を過剰に出していることが要因だ。そこでポーラは、独自開発の医薬部外品有効成分「ニールワン」をリンクルショットに配合。ニールワンには好中球がエラスターゼを過剰に排出する動きを抑える作用がある。これにより、リンクルショットではすでにできてしまったシワを改善できるという。

 今回のジオセラムには、新開発の保湿成分「モーションSリキッド」と「NEREリキッド」を配合。30代以降でも真顔の場合はシワがなくても、笑うとシワができるときがある。ジオセラムに配合されたこれらの新成分は、シワが出やすい部分に好中球が集まることを抑制する働きを持つ。 

2019年の業績は大幅減益が不可避に

 満を持して新リンクルショットを投入したポーラ・オルビスHDだが、直近の業績は苦戦気味だ。

 10月30日に同社が発表した2019年第3四半期(2019年1~9月)は売上高が1655億円(前年同期比10.4%減)、営業利益が254億円(同21.4%減)と減収減益に沈んだ。今期はすでに2度にわたって下方修正を強いられている。今のところ通期は売上高2200億円(前期比11.5%減)、営業利益300億円(同24.0%減)と見込んでいるが、利益の大幅減益は避けられない見通しだ。

 その大きな要因が、これまで収益を押し上げてきたインバウンド需要の変化だ。今年1月、中国で中華人民共和国電子商務法(通称:EC法)が施行された。化粧品は中国人のソーシャルバイヤー(転売業者)が日本の百貨店やドラッグストアで大量に購入し、現地のECプラットフォームで売りさばくケースが多かった。ところが、本法の施行によって転売業者は営業許可証の取得や納税義務が課されることになった。

 実際に1月のEC法施行前後、ポーラの美白サプリメント「インナーロック」の販売が激減した。中国の規制上、外国製のサプリメントを販売するのは許認可に時間がかかる。そのため、現地で未発売のサプリメントを日本で購入し、転売するケースが多かった。

 さらに、風評被害も受けた。中国現地のニュースメディアで「インナーロックに発がん性物質が含まれている」というニュースが流れたのだ。ポーラはこの報道を「フェイクニュース」と否定しているが、結果として、子会社・ポーラの2019年第3四半期(2019年1~9月期)のインバウンド売上高は前年同期比で24%減少にとどまった。

 EC法の影響は化粧品各社でまちまちだ。コーセーの2019年4~9月のインバウンド売上高は、前年同期比20.3%減の114億円だったのに対し、資生堂の2019年1~9月期は前年同期比で5%増だった。資生堂の場合、インバウンド売上高に占める転売業者への売上高は2割にすぎず、影響が少なかった。

課題はラインナップの充実

 ポーラは苦戦気味の業績を復調させるため、ジオセラムの販売に力を入れる構えだ。

 ただ、課題もある。ポーラで発売しているシワ改善化粧品はリンクルショット、ジオセラムともに美容液だ。一方でライバル会社は美容液以外に化粧水やジェルなど、さまざまなラインナップを取りそろえている。消費者は顔を保湿するために美容液のみならず、化粧水などさまざまな基礎化粧品を組み合わせて使っているが、ポーラはそうしたニーズを取りこぼしている。

 ポーラの山口氏は「リンクルショットに含まれているニールワンは、化粧水への応用が難しい。ただ、アイテム数の拡大は意識しており、研究開発を進めている」と話す。

 大ヒットとなった商品の第2弾、ジオセラムで「2匹目のドジョウ」をつかむことができるか。まずは30代の若者層にどこまで効能を訴求できるかがカギを握る。

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