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マクドナルドとモスバーガーを比較できない理由

ITmedia ビジネスONLiNE のロゴ ITmedia ビジネスONLiNE 2018/03/22 07:21

 マクドナルドが過去最高益を実現し、完全復活を果たす一方、モスバーガーは業績の伸び悩みに直面している。マックとモスは同じハンバーガー店なので、どうしても比較対象となってしまうのだが、経営学的に見ると両社はまったく異なるビジネスをしている。マックとモスの何が違うのか考察した。

●モス各店の業績はかなり前から停滞している

 日本マクドナルドの2017年12月期決算は、当期純利益が前年比4.5倍の240億円となり、上場以来、最高益を実現した。同社は3年前、期限切れ鶏肉や異物混入の問題を起こし、業績が大打撃を受けた。14年12月期の決算は218億円、15年12月期は349億円の最終赤字だった。

 サラ・カサノバCEO(最高経営責任者)は、不採算店舗の統廃合を進め、同時に店舗のリニューアルを行うことで収益力を回復させた。16年12月には黒字転換を果たし、17年12月期には最高益を達成するなど、順調に業績を拡大させてきた。客単価も上向いていることなどを考えると、マックは完全復活を果たしたと見てよいだろう。

モスバーガーの店舗数は減少している © ITmedia ビジネスオンライン モスバーガーの店舗数は減少している

 マックとよく対比されるのがモスバーガーだが、同チェーンを運営するモスフードサービスは業績の伸び悩みに直面している。同社の18年3月期の決算は、営業利益は20.7%減、当期利益は24.6%減を見込んでいる。18年2月時点における全店売上高は前年比でほぼ横ばいとなっており、客数の減少を単価の上昇で何とか補っている状態だ。

 マックと同様、モスも店舗運営にフランチャイズ制度を採用しており、モスフードサービスの業績とモス各店の業績は一致しない。

 モスフードサービスの業績はここ数年、堅調に推移していたが、モス全店の業績は、以前から停滞が続いている。同社の全店売上高は00年には1500億円近くあったが、10年には1000億円近くまで縮小。その後、多少、持ち直したものの、17年時点でも1079億円にとどまっている。

 一時は1500を超えていた店舗数も年々減少しており、17年3月期には1362店舗まで減った。店舗が縮小しているにもかかわらず、運営会社の業績が伸びていたのは、直営店舗の比率を大きくすることで、運営会社の数字を拡大してきたからである。だが、こうした措置もそろそろ限界に来ており、それが来期の決算予想にも反映された格好だ。

●モスは人口減少に合わせて業容を縮小

 マックは原田泳幸前CEO(最高経営責任者)の時代、全店売上高が5000億円を突破するなど、拡大路線を追求してきた。結果的に店舗運営に無理が生じ、業績低迷の一因となったが、同社の戦略は常に規模の拡大である。

 一方、モスからはそのような雰囲気は感じられない。モスの客単価は推定で1057円、マックの客単価は570円とモスの方が圧倒的に高い。来店する顧客の年齢層もモスの方が高めとなっている。

 しかしながら、ハンバーガー店というものが、そもそも若い年齢層の顧客を対象としている以上、年齢が高めとはいえ、モスの顧客もやはり若年層が中心となる。

 00年から17年の間に「15歳以上、40歳未満」の人口は約22%減少したが、モスの全店売上高は同じ期間で25%ほど落ちている。同店の客単価がほとんど変わっていないことを考えると、モスは人口減少に合わせて、毎年、業容を縮小してきた会社ということになる。悪く言えば成長できない企業だが、時代の流れに逆らわない堅実な戦略であるとも言える。

 上場企業として投資家の要求を満たしているのかという話は別にして、モスがこうした経営を行っているのは、同じハンバーガー店と言ってもマックとモスとでは、経営学上の位置付けがまるで異なるからである。

 マックは基本的にマスをターゲットにしており、売上高を拡大する方向性で経営を進めてきた。常にトップシェアを維持することが重要であり、企業規模もモスと比較すると圧倒的に大きい。こうした企業は、通常「コスト優位の戦略」を採用するケースが多い。

 コスト優位の戦略は、大量生産・大量販売などによるコストメリットを生かし、競合他社より安いコストで製品を提供し、市場の支配権を確立するという手法である。ハンバーガー店におけるマックの地位は圧倒的なので、マックが低価格な商品でシェアを維持していれば、ここに正面から勝負を挑む企業はなかなか現れない。

 この戦略は企業体力のある先行者にとって有利になる。アパレルの業界では、ユニクロが典型的なコスト優位戦略を採用する企業である。

●経営学におけるコスト優位戦略と差別化戦略の違い

 一方、こうした巨大企業に対抗するためには、コスト優位の戦略ではなく「差別化戦略」を採用するのが良いとされる。市場に後から参入した企業や、経営体力が小さいベンチャー企業はたいていの場合、差別化戦略を用いている。

 モスは後発で、しかも先行者は圧倒的な知名度を持つグローバル企業である。このため同社は、経営学上のセオリーに従い、徹底的な差別化戦略を心掛けてきた。モスの商品価格は高めだが、こだわりのあるものが多く、常にマックとの違いを意識していることが分かる。

 このため同じハンバーガー店といっても、両社の客層は異なっており、厳密な意味で、顧客の奪い合いは行われなかった。マックとモスが比較できないといったのは、そういった意味である。

 ただし、モスが採用している差別化戦略は、市場が限定されてしまうというデメリットがある。同社は想定する潜在顧客層をほぼすべて取り切ってしまった可能性が高いが、市場を変えるという決断は行わなかった。このため人口減少分がそのまま客数の減少につながり、これが業績の伸び悩みにつながっている。

 これまでモスは、直営店舗比率の見直しなどで対応してきたが、そろそろこうしたテニクカルな手法も限界に近づいている。抜本的な戦略転換を行うのか、よりスリムな体制を目指し、市場に逆らわない経営を続けるのか、同社は選択を迫られつつある。

(加谷珪一)

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