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マレーシア発の起業家育成オフィスは、こんなに遊び心満載だった!

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/10/12 孫泰蔵
マレーシア発の起業家育成オフィスは、こんなに遊び心満載だった!: 今年7月マレーシア・クアラルンプール近郊に誕生したソーシャルオフィス「CO3」 Photo by Takeshi Kojima © diamond 今年7月マレーシア・クアラルンプール近郊に誕生したソーシャルオフィス「CO3」 Photo by Takeshi Kojima

東南アジアにおいてスタートアップ企業を誕生させようという熱が高まっている。本連載で触れてきたように、孫泰蔵氏がMistletoeを通して起業家たちのエコシステムを構築する流れと同じ動きが世界各地で起きているのだ。今回は連載番外編として、マレーシア発の「オフィス革命」をご紹介しよう。(週刊ダイヤモンド編集部 小島健志)

心地よさと遊び心満載の新たなオフィス

 マレーシアの首都・クアラルンプール近郊に位置するプチョン。イオンやダイソーなど日系企業が進出したショッピングセンター「IOIモール」のそばに今年7月、同じスペースを複数の利用者が使える共同オフィス「CO3」が誕生した。

 中に入ると、東南アジアにいることを忘れさせる洗練された空間が広がっていた。延べ約2万2000平方メートル。ビル3フロア分を利用した吹き抜けの作りで、暖色の照明が木製の長机を照らす。熱帯魚のいる水槽に観葉植物が並び、流行のカフェのような居心地のよさを感じる場所となっている。

 カフェ風のオープンフロアだけでなく、オンライン会議のできる一人用の個室から、複数人で使える会議室まで部屋も数多くある。一人ひとりが好きな場所を探せるようにと、部屋のデザインが全て異なっているのも特徴的だ。

 シャワー完備でカプセルホテルのように寝る場所もあって、仕事場としての快適さも兼ね備えている。

 それだけでない。オフィス内には、実物大の飛行機の模型や、スーパーマリオブラザーズをほうふつとさせる土管型の滑り台に、実物のアーケードゲーム、ハンモックもあり遊び心が満載である。

 そんなおしゃれでワクワクするようなオフィスには、20代の若者が数多く集まっていた。ノートパソコンに向かって仕事をしたり、アイデアを膨らませるために話し合いをしたりしていたのである。

 共同創業者兼CEOのヨン・チェン・フイ(YONG Chen Hui)氏は「グーグルのような素晴らしいオフィス環境がうらやましいと感じた。日々、刺激的な場所で最高の状態で仕事ができるからだ。ただし皆がグーグルで働くことはできない。多くの人にそうした環境を提供したいと考えた」と話す。

 費用は現在、月額600リンギット(約1万6000円)で24時間利用できるとあって、オープンからわずか2ヵ月で約300名のメンバーを集めた。ほとんど満室状態で、若き起業家たちが新しいビジネスを成功させようという熱気に満ちあふれている。

 だが、これでは日本にもあるようなシェアオフィスと何が違うのかと思われるかもしれない。実はCO3は、単なるシェアオフィスではない。一つのスタートアップ企業として、CO3にはマレーシアひいては東南アジアのエコシステムを構築しようという大きな野望がある。

「ユニコーン企業を輩出する」という野望

 そもそも、マレーシアは人口約3200万人と日本の4分の1の規模であり、平均年齢が28歳と若い国である(日本は46.5歳)。近年は、政府が起業の支援に力を入れていることもあり、若者が続々とスタートアップ企業を立ち上げている。

 代表格が配車アプリを展開する「Grab(グラブ)」である。マレーシア発で現在シンガポールに拠点を構えるこの企業は、同様のサービスを展開する「Uber(ウーバー)」と競い、アプリのダウンロード数を5500万件超へと伸ばしていた。東南アジア7ヵ国に事業を拡大し、資金調達額は30億ドル(約3300億円)を超えている。

 一般に企業の評価額が10億ドル(約1100億円)を超えるスタートアップ企業は、その希有さから「ユニコーン企業」と呼ばれる。マレーシアから、そうしたユニコーン企業が誕生したことで多くの若者が感化され、起業の熱が高まっている。マレーシアのスタートアップ企業数は1000社を超えるともいわれており、CO3はまさにその受け皿になろうとしているのだ。

 だが、彼らは受け皿となるだけで終わる気はない。ヨンCEOは「CO3からユニコーン企業を輩出したい」と意気込む。

 実は、CO3の強みは単なる施設の快適さにあるわけではない。ハードウエアである施設と同様に、イベントの運営やサポートといったソフトウエア部分に注力しているのである。

 1週間に2回以上の関連イベントを行って、若者たちの成長を促している。さらに、大小さまざまなイベントを開くことで、外部のイベント主催者やメンバー同士を積極的につないでいこうとしている。

「われわれはシェアオフィスではなくここを『ソーシャルオフィス』と名付けた。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のようなバーチャルな世界よりも、実際にお互いがふれあえる場(フィジカルな場)としての価値こそ重要だと感じているからだ」(ヨンCEO)。

現地大手メディアも参加し「経済圏」を作る

 さらに、CO3のメンバーになれば、共同創業者8人からの支援が得られる。共同創業者たちはそれぞれの分野で成功を収めてきた人物だ。ITに強い者や実際に経営者として活躍している者たちに相談をすることができ、企業の成長を後押ししてくれる。

 共同創業者のうち1人は、マレーシアの中華系メディア大手、星洲媒体(Sin Chew Media Corporation Berhad)執行董事のユージェン・ウォン(Eugene Wong)氏である。

 メディアが参加することで、大手メディアとしての影響力やそのネットワークを生かして、マレーシアの起業熱を盛り上げようとしているのである。

「われわれは伝統的な産業であるが、この取り組みは未来を感じさせる、期待を抱かせるものだ。スタッフにも良い刺激を与えている」(ユージェン氏)というように、星洲グループにも良い影響を与えている。

 CO3は、単に場所貸しをするビジネスモデルを考えているわけではない。あくまでも起業家たちを育て、そのコミュニティを作っていくことに主眼が置かれている。

 コミュニティを核に協賛企業を募り、出資も行って、スタートアップ企業の成長を加速させていくのである。何より、そのコミュニティから新しい「経済圏」を作っていくのだという。

 ユンCEOは、CO3の活動を「民主化運動(デモクラタイジング)である」と強調した。メンバーをつなげ(Connectivity)、協業し(Collaboration)、そしてコミュニティー(Community)にしていく。故に「CO3」といい、誰にでも新たなビジネスを成功させる機会を与えようという民主的な動きと位置付けている。

 今後はマレーシアで5拠点、そして2020年までにはアジアで40拠点まで広げていく計画だ。もちろん、その中には日本も念頭にあるという。

 このように、多様な経歴を持つ共同創業者が集まり、オフィスを核としたコミュニティーの再構築を行う。若者が「かっこいい」と思うようなクールなオフィスを目指しながらも、その本質はメンバー間の「信頼」を核としたコミュニティーを作る、つまり温かみのある場を目指すというCO3の取り組み。これは日本企業にとってもヒントがありそうだ。

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