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メガソーラー建設反対運動が続発、太陽光発電は本当に「エコ」か

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/11/09 06:00 有井太郎
メガソーラー建設反対運動が続発、太陽光発電は本当に「エコ」か: 長野県・霧ヶ峰の近くで立ち上がったメガソーラー事業の計画予定地。地元住民による反対活動が過熱している Photo:米沢地区Looopソーラー対策協議会 © 画像提供元 長野県・霧ヶ峰の近くで立ち上がったメガソーラー事業の計画予定地。地元住民による反対活動が過熱している Photo:米沢地区Looopソーラー対策協議会

「エコ」のイメージが強い太陽光発電。しかし今、全国各地でメガソーラーの建設とそれに対する反対運動が起きている。景観地としても有名な長野県・霧ヶ峰の麓でも、東京ドーム約40個分、ソーラーパネル約31万枚の巨大計画が立ち上がり、住民の反対運動が過熱。はたしてなぜ、このような事態が頻発するのか。長野県をモデルケースに、太陽光は本当にエコなのか考えたい。(取材・文/フリーライター 有井太郎)

霧ヶ峰の近くで立ち上がったソーラーパネル31万枚の大計画

 東京・新宿駅から、特急電車でおよそ2時間の場所にある長野県・茅野市。蓼科高原などの観光地を有するこの地で、先日あるシンポジウムが行われた。そこには、定員の300人を優に超える500人が集まったという。四国や九州など、遠方からも多数の人が訪れた。

 それが、10月8日に茅野市民館で開催された「全国メガソーラー問題シンポジウム」。近年、全国で開発が進む大規模な太陽光発電施設、“メガソーラー”がテーマだった。

 ここまで広範囲に、同じ“問題”が起きているのは正常とは言い難い。“問題”とは「メガソーラー開発に対する反対運動」だ。このシンポジウムでも、リアルタイムで反対運動を行っている地域として、千葉県鴨川池田地区、静岡県伊豆高原、愛知県知多郡東浦、三重県四日市足見川の人たちが事例報告と現状の共有を行った。

 これらに先んじて報告されたのが、シンポジウム開催のきっかけとなった、長野県諏訪市四賀のソーラー事業に対する反対運動だ。国定公園もある長野県・霧ヶ峰の近くに立ち上がった計画で、事業面積196.5ha、東京ドーム約40個分の土地に、ソーラーパネルを31万枚並べるもの。山間地域のメガソーラーとしては、国内最大級の規模となる。

 事業計画地は茅野市の隣にある諏訪市だが、反対運動はちょうどそのエリアの斜面下部に位置する茅野市米沢地区の住民が中心となっている。

「山は森林によって保水力を有しています。これだけ大規模に森林を伐採し、さらにこの計画では大量の土を掘削。10tトラック5万台分の土が動くとのことです。加えて、計画地の下には、茅野市の市内4分の1をカバーする水道水の水源もあるのです。それほどの開発をする必要がどこにあるのか、疑問でなりません」

 こう話すのは、反対運動を行う米沢地区Looopソーラー対策協議会の柴田豊さん。「Looop」とは、今回の計画を行う事業者である。

 2011年の東日本大震災を経て、再生可能エネルギーの筆頭として注目された太陽光発電。それがなぜ、全国でこのような事態を起こしているのだろうか。霧ヶ峰での事例をピックアップしつつ、メガソーラーの根本的な問題を考えてみたい。

土砂災害に水質の変化地元の人が抱く不安とは

 諏訪市四賀のメガソーラー計画では、計画地の脇を「横河川」という川が流れる。横河川は、これまでにたびたび大雨で災害を起こしており、1983年には米沢地区に大きな被害があったという。「これだけ広範囲に森林を伐採すれば、雨水の浸透量は減り、横河川への大量流出を招くかもしれません」と柴田さんは危惧する。

 事業者のLooopは、対策として計画地内に“調整池”を3ヵ所つくるとしている。今回、Looop担当者にその点を聞くと「調整池は、最新の長野県の林地開発設計基準に基づいて容量の計算が行われており、豪雨時でも計画地から流れ出る水量をコントロール(調整)できる」とのこと。

 しかし、この調整池についてもこれまで議論がされており、住民からの不安は尽きないようだ。柴田さんが説明する。

「本来、調整池とは川の外側に作ることで、本流から水を逃がし、水量の調整や濁りを除去します。しかし本計画では、計画地にもともと流れる川を深く掘って調整池にするとのこと。本当に水量や濁りを十分調整できるのか疑問です」

 他にも不安は山積している。湧水への影響だ。計画地の下には茅野市民の4分の1の生活水となる「大清水湧水」がある。Looopは「大清水については、開発地の影響は予測されない」としているが、住民はその説明に納得していない。

「実は、かつてもこの地で開発計画が起こり、信州大学の教授が地質を調査しました。その際の内容とLooopの調査結果には異なる点が多々あります。また、地質調査の結果報告も不十分で、信州大学特任教授の小坂共榮氏もその点を指摘しています」

 また、諏訪市側には「南沢水源」という別の水源があり、こちらは諏訪地域の住民の生活水にもなっている。この水源については、現状で「影響が少ない」とLooopは発表しているとのこと。「“少ない”というのは、『影響がある』ことを認めているのではないでしょうか」と柴田さんは話す。

 さらに、諏訪地域には“諏訪五蔵”と称される酒蔵がある。彼らは霧ヶ峰から来る伏流水を使っており、「酒蔵の方々も大変な不安を感じています」と柴田さんは続ける。

なぜ計画が立ち上がったかこの開発でより良い山になる?

 特に成り行きが注目されるのは、工事で排出される大量の“残土処理”だ。当初、トラック5万台の土は横河川沿いに盛られる予定だったが、事業計画を審査する長野県環境影響評価技術委員会の指摘を受けて、事業者は計画を変更。近隣の採石場跡地に運び出すことにした。

 しかし、それだけの土を積み上げて、はたして土砂崩れなどが起きないか。住民は不安を感じている。また、採石場跡地は技術委員会の審査対象範囲から外れるため、処理方法の計画は不透明になっているという。

 柴田さんは「とにかく計画が“事業ありき”で進んでいます。地形やこの土地の環境を考えたら、“なぜここでそんな開発が必要なのか”という思いしかありません」と繰り返す。

 では、どうしてこのような事業が立ち上がったのか。この計画地は、上桑原牧野農業協同組合、上桑原共有地組合、上桑原山林組合という3つの組合が地権者となり、牧草地として活用してきた。

 だが、需要の減退や組合員の高齢化により、山林の維持管理が難しくなったとのこと。これを理由に今回の事業に至ったという。現在は3組合が地権者のままだが、最終的にはLooopが土地を買い取る計画となっている。

 なお、この事業の正当性について、Looopは以下のような回答を寄せている。

「最近は、過去に例のない集中豪雨による自然災害が全国各地で増え、諏訪地方でも今年9、10月に発生した台風による強風で倒木が相次ぎ、約2万戸が停電しました。このような中でこれまで以上に人手をかけた森林管理が求められています。防災調整池や年間を通じての草刈り、点検を行うことで、治山力の向上につながると考えています」

 つまり、今回の事業を通じて、より安全な自然環境を実現するというのがLooopの考えだ。

2012年からバブル状態にメガソーラーをめぐる法律

 確かに、森林は管理が必要となる。定期的に間伐をするなど、適度に人の手を入れることで、より理想的な土壌や保水能力が保たれるからだ。

 しかし、「だからといって、これほどのソーラーパネルを並べることがプラスになるという論理は成り立たないでしょう」と話すのは、冒頭で紹介したシンポジウム実行委員会・事務局の小林峰一さんだ。「どんなに手の入っていない森林でも、森林が森林として存在する方がはるかに山として高いメリットを持ちます」と続ける。

 同時に筆者が気になるのは、協議会の人も指摘していた気候の問題だ。長野県茅野市は国内有数の寒冷地であり、冬は大量の雪が降る。当然、ソーラーパネルにも降り積もるだろう。これらの管理や安全性は問題ないのだろうか。

 そもそも、これだけの大規模な工事をして、この環境で発電事業をやるメリットがどこにあるのか、疑問に感じる人も多いはずだ。

 ここに関連してくるのが、ソーラーに関する法律である。

 メガソーラー問題のきっかけとなったのは、2012年に導入された固定価格買取制度(FIT)。再生可能エネルギーでつくった電力は、20年間、国の定める価格で電力会社が全量買い取るという仕組みだ。

 再生可能エネルギーの促進が狙いであり、買い取り価格は2012年時点で1kWhあたり40円と、国際的に見ても高値に設定された。その後、年々買い取り価格は下がり、現在は18円となったが、基本的に認定を受けた時の価格で20年間買い取られるので、導入初期の2012年~2014年、40円~32円の時代に認定された企業は、高利益が期待できる。諏訪市四賀の計画も、ここに含まれる。

「この結果、当時メガソーラーバブルが起きました。20年にわたり安定的な利益が上げられるわけですから。ビジネスとしての熱が高まり、地権者から事業権利を買い、それを別の企業に譲渡する仲介業者も出てきました」(小林さん)

安定的なビジネスゆえに歯止めが効かない状態に

 諏訪市四賀のメガソーラーも、当初は東日本土地開発という企業が事業権利を持っていた。それをLooopに権利移管した形となる。これが悪いこととは言わないが、森林という共有財産がきわめて営利的な形で取引されている現状がある。

 FITによって、メガソーラーは安定的に収入を得られるビジネスとなった。冷静に見れば、事業者にとっても地権者にとっても損はない。そして、法律を犯してもいない。

 とはいえ、先ほどの市民の声を聞けばわかる通り、土地や森林はその地域の人々の安全や生活、地場の農業、産業などに関わる。

 だからこそ「FITを導入した後、このような状況が始まった段階で細かく法整備をするべきでした」と小林さんは話す。「これまでは、太陽光発電の施設を作る際の法的な規制がほぼないに等しい状況でした。それでは歯止めが効かなくなります」という。

 ここ最近、九州電力では、太陽光の発電量が増えすぎたことから、受け入れを制限する「出力抑制」をたびたび行っている。旧来の発電方法による電力に加え、太陽光発電が急増した結果、供給過剰となった。つまり、想定外に太陽光発電が増えすぎているのである。

 このニュースは、日本のエネルギービジョンがいかに曖昧かを示しているのではないか。法規制の遅れはもちろん、将来的なエネルギーの割合やロードマップが敷かれていないことが見てとれる。

 環境省は、メガソーラー問題が各地で続出していることに対し、100ha以上の大規模な太陽光発電施設について環境影響評価(アセスメント)法に基づくアセス対象にする方針を発表した。環境などに配慮した事業計画を義務付けるもので、2020年の導入を目指すという。  実はこれより先に、県や市ではすでに条例でメガソーラーをアセス対象としている。諏訪市四賀のメガソーラーは、全国で初めてアセスが適用された事業でもある。小林さんは「アセス対象になっていなければ、残土処理の問題なども検討されずに着工されていました」と話す。

「ただし、現状のアセスメント法は事業者が調査の主体者になります。また、方法書の作成なども事業者が別の企業に依頼する形。依頼主(事業者)の不利になることはしにくいと考えるのが当然で、公平性には疑問が残ります」(小林さん)

太陽光とメガソーラーこのエネルギーは本当にエコか

 2012年以降、爆発的な増加を見せる太陽光発電。発電の方法自体は確かにクリーンだが、森林を伐採して、地域住民を不安にさせてまで造るメガソーラーはエコなのだろうか。

 なお霧ヶ峰では、Looopより一足先に別の事業者がソーラー施設を建設している。こちらはずっと小規模だが、同じように次々と事業者が参入し「霧ヶ峰がソーラーパネルで埋め尽くされるのではないか」と危惧する住民もいる。対策協議会の柴田氏は、こんな思いを吐露する。

「Looopの方は当初、『観光立県として、メガソーラー施設により国内外の集客が期待できる』と話していました。本当にそうでしょうか。地元の人間にとっては信じられない言葉でしたし、説明を聞いていても、山や自然を理解されているとは到底思えません」

 その上で、柴田氏は「これだけの開発をして、もし何かが起きても取り戻せません。木はまた育つかもしれませんが、大量に削った土は元通りにできないですから」と話す。

 対策協議会の主体となる地域はまさに横河川の下流域にあたり、その地区の住民の約93%は計画に反対している。

「今年に入り、インターネットも含めた署名運動を行いました。初めてのことでどれだけ署名が集まるか想像もつきませんでしたが、4万人の方に署名いただきました。茅野市や諏訪市だけでなく、首都圏や北海道、九州の方など全国から集まったことに驚いています」(柴田さん)

 今回の取材で筆者は、Looopに「このまま地元住民の合意を得られない場合、それでも事業は遂行するのでしょうか」と質問を投げかけた。答えは以下のようなものだった。

「今後も引き続き事業計画、環境影響調査の丁寧なご説明に努め、地域との対話を重視し進めて参りたいと考えております」

 太陽光発電は本当にエコなのか。それ以上に、メガソーラーは本当にエコなのか。今こそ真剣に議論すべき問題ではないだろうか。

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