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メモをとるサラリーマンが出世する理由

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/10/02 06:00 唐池 恒二
メモをとるサラリーマンが出世する理由 © 画像提供元 メモをとるサラリーマンが出世する理由

非常に高額なのに、最高競争率316倍!いま、この日本で、宝くじのように当選するのが難しいサービスが存在することを、あなたはご存じだろうか?JR九州。正式名「九州旅客鉄道株式会社」。名前だけ聞くと、旧態依然の鉄道会社のイメージを持つかもしれない。だが、この会社の「あるサービス」がひそかに感動の輪を呼んでいる。東京だけで暮らしているとわからない。でも、九州に行くと景色は一変する。その名は、クルーズトレイン「ななつ星 in 九州」(以下、ななつ星)。いまや「世界一の豪華列車」と称され、高額にもかかわらず、2013年の運行開始以来、予約数が定員をはるかに上回る状態が続いている。なんと、DX(デラックス)スイート(7号車の最高客室)の過去最高競争率が316倍というから驚きだ。昨年11月の『日経MJ』には、「ブランド作りとは世界の王でも断る覚悟」と題して、そのフェアな抽選システムが新聞一面に紹介された。だが、驚くべきは、「ななつ星」だけではない。この会社、バリバリの鉄道会社なのに、売上の6割は鉄道以外の収入で、8年連続増収なのだ。かつてこんな会社があっただろうか?JR九州を率いるのは唐池恒二氏。8月27日、韓国と九州を結ぶ真っ赤な新型高速船「クイーンビートル」を2020年8月に就航すると発表。子どもから大人まで博多と釜山の優雅な旅を満喫できるという。さらに、7月には、中国・アリババグループとの戦略的資本提携を発表。2020年の東京オリンピックを控え、ますます九州が熱くなりそうだ。記者は、この20年、数々の経営者を見てきたが、これほどスケールの大きい経営者はほとんど見たことがない。1987年の国鉄分割民営化の会社スタート時は、JR北海道、JR四国とともに「三島(さんとう)JR」と称され、300億円の赤字。中央から完全に見放されていた。それが今はどうだろう。高速船、外食、不動産、建設、農業、ホテル、流通、ドラッグストアなど売上の6割を鉄道以外の収入にして8年連続増収。37のグループ会社を率い、2016年に東証一部上場、2017年に黒字500億円を達成。今年3月1日の『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)でも、逆境と屈辱から這い上がってきた姿が紹介された。今回、再現性のあるノウハウ、熱きマインド、破天荒なエピソードを一冊に凝縮した、唐池恒二氏の著書『感動経営』が、発売たちまち重版。唐池氏に『感動経営』にこめた思いを語っていただこう。(構成:寺田庸二)

不正事件に学んだメモの大切さ

 私はメモ魔だ。 当社の社員にも「メモ魔になるべし」と奨励している。

 だから、当社の社員が皆さんのもとを伺ったときには、かなりマメにメモをとっているはずだ。 メモ魔になったのは、ある事件がきっかけだった。 かつての身内の話だから恥ずかしいのだが、国鉄時代最後の勤務地、大分で人事課長をしていたときに、どうも不正が発生しているようだとの報告が上がってきた。

 現場の社員が古いレールを横流しして不当な利益を得ている、という。 私は人事課長という立場上、当該社員の聴取を行うことになった。

 聴取にまで及ぶ、かなりはっきりとした不正疑惑だったので、あっさり彼が罪を認めて、すみやかにしかるべき手続きに移るものとばかり思っていた。

 しかし、これが難航した。

 事に及んだと思われる日時について聴取を行うのだが、当該社員はひとつひとつ非常に論理的に反証を行った。

 事こまかにアリバイを主張するのである。 彼こそが、メモ魔だったのだ。

「○月○日は?」 と問うと、「自分は○月○日はコレコレをやっており、ドコソコにいました」 とじつに具体的に答える。

 その回答どおりなら、彼が不正に手を染める時間は存在しなかったことになる。

 彼には、日ごろから自分の行動をこまかくメモする習慣があった。 過去の日付においてこまかいメモが膨大に残っていたから、噓でありながらこまかい反証を構築できたというわけだ。

 最終的には、彼の噓は手詰まりとなり、不正を認めさせるにいたったが、思い返してもかなりの強者(つわもの)だった。

 強者の武器がメモだった。

 皮肉な反面教師もいいところだったが、メモの力と効用を改めて強く思い知る機会となった。

 そんな私もメモの効用は少なからず知っていた。

 入社2、3年目に国鉄本部で山手線の指令室の仕事を半年ばかり務めたときに、自身の指令内容と応答内容をメモせよと先輩社員から指導されていた。

 指令という仕事は、特に列車ダイヤが乱れたときに、駅や運転手とかなり頻繁なやりとりをする。

 これをひとつずつメモしておかないと、何かマズいことが起こってしまったあとに、いった、いわないの攻防になってしまう。

 会社としてよいことも悪いことも立証できないし、ややもすると、落ち度もない個人が大きな責任をとらされてしまうことだってあり得る。

 いざとなったとき、メモは証拠になり、武器となるのだ。

☆ps. 今回、過去最高競争率が316倍となった「ななつ星」のDX(デラックス)スイート(7号車の最高客車)ほか、「ななつ星」の客車風景を公開しました。ななつ星の外観やプレミアムな内装の雰囲気など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事を、10万PVに迫る勢いの大反響動画「祝!九州」に興味のある方は、第7回連載もあわせてご覧いただければと思います。

唐池 恒二(からいけ・こうじ)九州旅客鉄道株式会社 代表取締役会長「三島JR」と称され、300億円の赤字というどん底のスタートを切った同社にあって、全社員と共に逆境と屈辱から這い上がり、500億円の黒字(2017年度)に導いた立役者。同社は現在、売上の6割を鉄道以外の収入にして8年連続増収中。高速船、外食、不動産、建設、農業、ホテル、流通など37のグループ会社を伴い、連結の売上額は4133億円、経常利益670億円(2017年度)を計上。1953年4月2日生まれ。1977年、京都大学法学部(柔道部)を卒業後、日本国有鉄道(国鉄)入社。1987年、国鉄分割民営化に伴い、新たにスタートした九州旅客鉄道(JR九州)において、人気温泉地・由布院の魅力を凝縮した「ゆふいんの森」や、浦島太郎の竜宮伝説をテーマにした「指宿のたまて箱」など、11種類のD&S(デザイン&ストーリー)列車をつくり、次々大ヒット。列車を「移動手段」から「観光資源」へと昇華させた。1991年に博多~韓国・釜山間にデビューした高速船「ビートル」就航に尽力。さらに、大幅な赤字を計上していた外食事業を黒字に転換させ、別会社化したJR九州フードサービスの社長に就任。2002年には、同社でみずからプロデュースした料理店「うまや」の東京(赤坂)進出をはたし、大きな話題に。2009年6月、同社代表取締役社長。2011年には、九州新幹線全線開業、国内最大級の駅ビル型複合施設「JR博多シティ」をオープン。2011年に制作指揮した「祝!九州」のテレビCMは「カンヌ国際広告祭」アウトドア部門金賞受賞。2013年10月に運行を開始し、総工費30億円をかけ世界一の豪華列車とも称される「ななつ星 in 九州」では、企画立案からデザイン、マーケティングまで陣頭指揮を執り、大人気となる。2014年6月、同社代表取締役会長。2016年には、長年の悲願であった東証一部上場を実現。2018年7月には、中国・アリババグループとの戦略的提携を発表。今後の動向にさらなる注目が集まっている。【JR九州HP】https://www.jrkyushu.co.jp

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