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一流のビジネスマンはどんな資格が活躍への近道かを知っている

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/07/16 野田 稔
一流のビジネスマンはどんな資格が活躍への近道かを知っている: 資格や学位などの「勉強」だけ行っていてもプロにはなれません。“実践”が重要なのです!(写真はイメージです) © diamond 資格や学位などの「勉強」だけ行っていてもプロにはなれません。“実践”が重要なのです!(写真はイメージです)

人事のプロになるための学び直しの場合

 今回は、資格取得の現実的側面について、もう少し深めてみましょう。

 とは言え、勘違いしてほしくないのですが、私は「資格を取りましょう」という話をしたいわけではありません。学び直しという文脈の中で資格はどこに位置づくのかを知ってほしいのです。自分が目指したい方向によって、資格の重要度は違ってきます。実は取る必要のない資格もたくさんあります。

 前回は、プロジェクトマネジメントを行う上であったほうがいい資格や、税理士資格、医師免許など、特定の仕事に就くために必須の資格について見てきました。確かに税理士資格や医師免許は、その職業に就きたいと思えば絶対必要な資格ですが、これを取得したからといって、それで売れる税理士や優秀な医者になれるわけではありません。

 一方、国際資格のPMP(Project Management Professional)は、プロジェクトマネージャーになるための必須の資格ではありません。資格がなくてもプロジェクトマネージャーにはなれます。ただ、海外でのオフショア開発(システムの運用や開発、管理等を人件費の安い海外の会社に委託すること)も含めて第一線で活躍する、その現実的なスタートラインに立つために非常に重要な資格です。

 どちらも仕事を得るためには重要な資格であることは間違いなく、それゆえチャレンジしがいのあるものだというような話でした。

 さて、その他の職種ではどうでしょうか。

 例えば人事の領域。人事部で働く人が、将来的にもヒューマンリソース(人的部門にフォーカスする事業部門)の分野で活躍したいという希望を持つ、人事分野でプロになろうと思ったとします。そんな場合に考慮すべき資格はあるのでしょうか。

 もっとも、人事のプロになりたいとはいうものの、漠然とそう思っただけではキャリアは見通せません。どういった方向でプロになりたいのか。それによってするべき勉強も違ってくるわけです。

労務分野で活躍したければ社労士の勉強をするのが近道だ!

 例えば、労務分野で活躍したいと思うのであれば、やはり社会保険労務士(以下、社労士)の勉強をするのが近道でしょう。資格がなくても労務の仕事はできますが、将来の展開を考えるとやはり挑戦しておいた方がいい資格です。

 もっとも、この資格もただ取得したからといって、その先の将来が直ちに開けるわけではありません。一流のプロになれるわけでもありません。

 今後、どんな社労士として活躍したいのかが重要になってきます。例えば、会社の中の社労士という生き方を想定したとしても、福利厚生に強い社労士なのか、あるいは労務調停に強い社労士になりたいのかでは先々の勉強は違ってきます。

 後者の場合は特定社会保険労務士(*)になる必要があります。社労士の資格を取得後、さらに、「厚生労働大臣の定める研修」を修了し、「紛争解決手続代行業務試験」というものに合格し、連合会の社会保険労務士名簿にその旨を付記してもらうのです。

 さらに、その方向に進むのであれば、それだけでは物足りません。法律や職場のトラブル事例等の勉強をする必要もあります。なぜなら弁護士の資格を取る必要はないまでも、判例などの知識も必要になるからです。やはり、一流のプロになるための道は険しいものです。社労士になるだけでも最低1000時間の勉強が必要だとされます。その上でさらに勉強を積み重ねて初めてプロと呼べる領域に至るのです。

(注)特定社会保険労務士:退職の強要やセクハラ、残業代不払い等の労働トラブルが増え続けているのを背景に、裁判外紛争解決のため代理権利を持っている社労士に法律で権限を付与し、早期解決を目指して設置された

重要性が高まる海外人事を目指すなら人事に強い大学院でMBAを取れ!

 さて、人事の専門家としては、例えばキャリアカウンセリングという方向もあります。そのためには、労務分野のプロになるのとは全く違う勉強が必要になります。この場合、キャリアカウンセラーの資格は入り口にすぎないでしょう。この分野でプロと認められるためには資格・実践に加えて、アカデミックなバックグラウンドが必須です。最低でもこの分野の修士号はあったほうがいいでしょう。

 もちろん最初からキャリアのプロか労務のプロか、はたまた他の分野のプロかなどと思い悩む必要はありません。最初のうちは、両方やってみればいいと思います。どこかの段階で、それこそ覚悟を決めて方向を見定めればいいのです。

 単に資格や学位などの「勉強」だけ行っていてもプロにはなれません。“実践”が必要です。道を決めたら会社と交渉して実践の場を得る。場合によっては、人事異動を願い出ることも必要になります。

 ちなみに、人事分野でこれからますます重要度を増していくのが海外人事です。海外の支社で人事部をゼロから立ち上げられるようなプロフェッショナルともなれば、かなりの希少価値があります。もしその方向に進もうとするのであれば、語学と異文化コミュニケーション、そして何より経験を通じた実践力を磨くというのが絶対条件です。

 さらにどこかの段階で、人事領域に強い海外の大学院でMBAを取るという方法を検討すべきかもしれません。例えばロンドン・ビジネススクールはヒューマンリソースに強い。そうした環境で勉強ができれば、それこそ鬼に金棒。一流のプロフェッショナルになることもできると思います。

 いずれにしても、そのくらい、自分の将来をしっかりとイメージした上で学び直しの設計をしないと、「あんなに苦労したのに何者にもなれない」という、中途半端なことになってしまうという可能性が高いのです。

 そう、この「あんなに苦労=自分なりの努力」というのが曲者なのです。スタート段階でハードルの低い独学はお勧めです。とりあえず本を読んでみる、とりあえず一般に公開されているセミナーや勉強会に参加してみる。それでOKです。しかし、プロになるにはそれなりの王道があり、これはかなりハードルが高いものなのだ、と知っておくべきです。

営業職の人はどこに向かえばいいのか?

 先ほど社労士や人事を例にプロフェッショナルへの道の歩み方を見てきましたが、多くの人が携わっている“営業”分野でのプロフェッショナルというのは存在するのでしょうか。そこが、多くの営業パーソンの悩みどころではないでしょうか。

 米国であれば、営業は「セールス・レプレゼンタティブ」という専門職種なので、それなりに尊敬もされているし、転職市場も確立しています。

 ところが日本では営業という職種は独立したプロフェッショナルというより、会社の中の一機能として埋め込まれてしまっています。専門職としての市場はほぼ存在しません。会社を離れて個人として成長していくための道も限られています。

 しかし、“営業のプロフェッショナル”として生きる道が全くないかというと、そんなことはありません。

 私の周りには元「スゴ腕営業マン」という方が何人もいますが、彼らは営業力強化コンサルタントといったことを始めています。その人たちを見ていると、どこかの段階で、自分は営業のプロとして道を極めると定めて、独自の強み開発に取り組んでいます。

 例えばある人は、自分の強みは顧客との会話にあると見定め、顧客とのコミュニケーションを集中的に研究しました。徹底した事前準備を行い、“相手以上に相手を知る”ことによって、圧倒的な信頼を勝ち得、究極の姿である“営業せずして売る”段階を目指す、いわば、顧客の潜在ニーズを顕在化させるプロセスです。

 潜在ニーズは、顧客本人にとってまだ曖昧なニーズです。ですからこれを明確化し、顕在化させるプロセスが重要です。事前準備は、顧客の置かれた状況や背景を明らかにするのが目的です。次に、その顧客が抱えている不満、現状でどんなことが問題点と思っているのかをコミュニケーションの中で明らかにします。さらに、その問題点から顧客の将来への悪影響を示唆し、危機感や問題意識を強く認識させることによって顕在ニーズとしていくわけです。

 彼は、自らの体験をベースに顧客コミュニケーションを研究して、自分なりの営業体系を作り上げました。そして、それを本にしたのです。『サムライ営業』(経済界)という本です。

 彼は営業プロフェッショナルに満足することなく、さらに上を目指してマイスターの域にまで上り詰めたのです。ちなみにその彼は大西芳明氏という方ですが、ユアサ商事で営業マンとしてのキャリアを開始した後、リクルートの伝説の営業マンを経て楽天に転職し、取締役執行役員となり、2015年に独立しました。

 彼のように、プロフェッショナルにとどまらず、さらにマイスターにまでなっていくような人は、すべからく皆、明確に自らのキャリア設計をしており、その実現に向けて必死に努力をしています。営業パーソン全員が営業マイスターにならなくてはいけないということではありませんが、もし自分が営業のプロになると決めたのであれば、自分なりの強みを認識し、それを磨き上げる努力をするのは当然のことだと思います。

初めて中小企業診断士の資格が意味を持つと思った瞬間

 経営コンサルタントという職種も曖昧なものです。これさえ取得すればよい資格といったわかりやすい武器もありません。自分なりの武器を作り、他との差別化をいかに図るかが勝負なのです。自分なりのユニークな考え方、問題発見能力や問題解決能力を磨いていくしかないわけです。

 よく、中小企業診断士の資格を取るのが経営コンサルタントになる近道ではないかといわれます。どうでしょうか。これはあくまでも個人的な見解ですが、中小企業診断士は、取るのが難しい割にはそれだけでは十分ではない資格だと思います。

 ただ、目的次第では意味を持つこともあります。ある人はとある会社の人事部に在籍していました。最初にお会いした時、「非常に勉強好きな方だな」と思いました。人事部員でしたが、人事分野に限らず広く経営学を学び、派生的にマーケティングや財務会計も学んでいたのです。

 私は勉強好きな方が趣味で学んでいるのだと思っていました。そして、とうとう、難関の中小企業診断士に挑戦するとの決意を聞いて、「そこまで来てしまったのか」と正直に言って少々呆れた思いでいました。しかし、私の認識は間違っていたのです。

 彼が経営学とその周辺領域を学んでいたのは、単なる趣味ではなく、独自の考えに基づく、自分なりの“人事プロフェショナルへの道”を極めるための合目的的な学びだったのです。

 つまり、「人事部ほど、戦略的な考え方をしなくてはいけない部署はない」という考えです。なぜならば、人というものは実際に力を発揮するまでにタイムラグがあるので、そのタイムラグを考慮すると、早め、早めに準備する必要があるからです。人材を経営資源と捉えると、他の経営資源以上に計画的に備えておかなければなりません。だから、自分は企業の経営戦略を学んで、会社がどちらの方向に進むのか、進むべきなのかを自分自身で戦略を立てられるくらいにまでなった上で人事という仕事をしたいと考えたのです。

 ここまで人事というものを突き詰めて理解した上で、経営の勉強に精を出していたわけです。

 さらにある時、レーダーチャートで自分が今まで身につけた能力を分析してみると、どうも凹凸がある。尖っている部分もそれなりにあるけれど、まだ凹んでいる部分も少なくない。確かに、自身を振り返ってみてそういう実感もある。そこで、そのレーダーチャートをもう少し理想的な形にしたい。強みを伸ばすことよりも、弱みを補いたい。そこで、中小企業診断士の資格取得のための勉強を始めた、というのです。

 私もその動機であれば、その結論は決して間違いではないと思いました。この動機は、私がこれまで聞いた中で、もっとも中小企業診断士の資格を取る価値があると思った瞬間でした。

 普通はそこまではしないでしょう。しかし、自らの定めた道を歩むために、効率的に学ぶ道しるべとして資格取得の勉強するのはとても良い方法でしょう。資格取得が目的なのではなく、資格取得のプロセスでバランスよく学んでいくという方法です。これもまた、資格勉強の正しい在り方ではないでしょうか。

(明治大学専門職大学院グローバル・ビジネス研究科教授 野田 稔)

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