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三陽商会トップの元日辞任に「終わりの始まりか」と現場の声

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/01/10 週刊ダイヤモンド編集部
三陽商会トップの元日辞任に「終わりの始まりか」と現場の声: 意外に短気なところがあり、社員から恐れられているといわれる岩田功新社長。バーバリーを失った三陽商会の将来に光は差すか Photo by Mieko Arai © diamond 意外に短気なところがあり、社員から恐れられているといわれる岩田功新社長。バーバリーを失った三陽商会の将来に光は差すか Photo by Mieko Arai

業績不振に陥っているアパレル大手、三陽商会を率いてきた杉浦昌彦氏が1月1日に社長職を引責辞任した。引き継いだ岩田功新社長は、100年先を見据えた経営計画を練ると意気込むが、社内では新戦略への期待よりも、間もなく決まるとみられている取締役人事に希望と不安が渦巻く。(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)

 心機一転、新たなスタートを切れたといえるのか、はたまた終わりの始まりとなるのか──。

 1月1日、2017年の年明けとともに三陽商会の杉浦昌彦氏(63歳)が社長の座から退いた。

 15年6月末に英バーバリー社とのライセンス契約が終了し、三陽商会は窮地に追い込まれている。16年12月期の売上高は14年12月期から37%も減少して700億円に沈む他、68億円の営業赤字、95億円の最終赤字という連結決算開始以来、最大の損失を計上する見込みだ。

 同社は業績不振を受け、16年7月には進行中の中期5カ年経営計画も取り下げている。社長交代は、新計画を策定するただ中の16年末に突如発表されたことだった。杉浦氏の事実上の引責辞任である。

 社内に大きな驚きはなかった。というのも杉浦氏は、ブランドを取り仕切る事業本部長という要の職を14年7月に佐久間睦取締役に譲っていた。ここ1年ほどは体調も崩しがちだったとされる。

 そもそも創業以来初の希望退職者を募った13年や、バーバリーとのライセンス契約終了を発表した14年にも、経営陣の引責辞任はうわさされていたのだ。いまさら騒ぐようなことではなかっただろう。

 後を継いだ岩田功社長(57歳)は新経営計画を「100年先を見据えたものにする」と鼻息は荒い。が、商品企画や販売などの現場を中心に社内からはため息が漏れる。

 期待されたほど社長が若返らなかった上、トップラインの引き上げが必要なときだというのに、現場に明るい幹部に社長のバトンが渡らなかったからだ。

 岩田社長は入社後、百貨店営業やコートの企画部門を経験した。とはいえ長く歩んできたのは経営企画畑だ。「数字を見ながらブランドの廃止や店舗の縮小を決めるのは得意だけど、あくまでも“内勤の人”。ブランドをつくったり商品政策を講じたり、顧客に接したりする現場の経験は豊富じゃない」と同社幹部は解説してみせる。

 実際、縮小均衡から脱却するには現場の知見が不可欠だ。

 例えば成長加速を模索しているEC事業では、IT戦略を担う部署が現場不在でECサイトでのセールを展開。それが実店舗でのセール期間外に行われ、かつ品番指定できめ細かさに欠けることが往々にしてあるものだから、実店舗で商品を正価で購入した顧客からクレームが殺到しているという。

 顧客に責められ販売員は疲弊している。行き過ぎれば百貨店も黙っていなかろう。何より、これではお得意客が離れていってしまう。

 バーバリー関連ブランドの“後継”である「ブルーレーベル/ブラックレーベル・クレストブリッジ」でも現場との議論や擦り合わせが一層重要になってくるはずだ。

 同ブランドは今後、百貨店以外の新チャネルでの展開を加速すると同時に、新チャネル向けに価格帯を引き下げ、若年層のさらなる取り込みを図る。ただ、チャネルごとに価格帯を変えればブランドイメージがぼやけがちだし、在庫管理もより複雑になる。

株主総会前の取締役人事が試金石になる

 経営サイドは、新旧体制とも現場重視をうたってはいる。新経営計画の策定に当たり、現場社員等によるワーキンググループを設置。課題や改革に対する具体的な施策案を抽出するなど、現場の声を上に上げる仕組みを整える。

 しかし、これを基にどんな戦略を描くかは、最後は経営陣にかかっている。今は有事だ。より良い判断を迅速に下すべく、現場感覚のある人物で経営トップを固める必要があると考える社員は多い。

 三陽商会の行く末を占う試金石の一つが、3月の株主総会前に打ち出されるとみられている新しい取締役体制だ。現在、社内取締役は杉浦氏と岩田社長の他3人いる。杉浦氏と同期入社で、経理財務本部長の松浦薫氏と生産を管掌する佐久間氏。そして、岩田氏と同期入社で販売畑が長い齊藤晋氏だ。

 杉浦氏は3月の株主総会をもって取締役からも退任する予定だが、同時に佐久間氏の退任もささやかれている。この空いた一つ、ないし二つのポストに誰が就くか。

 期待が集まるのは、販売に強く、ブランド運営の経験もある寺田毅常務執行役員と、さまざまなブランドを渡り歩き、商品企画にも詳しい荒居徹常務執行役員だ。つまり、利益の源泉である事業の成長に直接携わってきた幹部が順当に上がることが求められている。

「現場に疎い岩田社長が、自分に『ノー』と言える現場主義の役員を取締役にすればいい。でも、空いたポストに誰も就けないとか、仲良しの内勤出身者を就けるとかして現場が軽んじられるようなら、終わりの始まりだ」(前出の幹部)

 岩田氏の一挙手一投足を、社員全員が固唾をのんで見守っている。

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