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不況でも倒産しない会社は好況時に何をしているか

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/08/11 06:00 小宮一慶
不況でも倒産しない会社は好況時に何をしているか: 好況期にこそ、経営者がやるべきこととは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA © 画像提供元 好況期にこそ、経営者がやるべきこととは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

松下幸之助さんが唱えた「ダム経営」の大切さ

 2012年12月に始まった景気回復局面は今も続き、業績が好調な中小企業が増えています。しかし油断はできません。景気は必ず循環します。好況の後には必ず不況が訪れます。いついかなる時でも企業を維持発展させるために、経営者は好景気のときこそ、「治に居て乱を忘れず」の心構えでいなくてはなりません。

 松下幸之助さんは「ダム経営」を唱えました。「ダム経営」とは、ダムに水をため、必要に応じて徐々に流していくように、ヒト・モノ・カネの経営資源、特に資金に余裕を持ち、好況時にはそれをダムのようにため、不況のときでも安定的な経営をしなさいということです。

 実例を紹介しましょう。私のお客さまに、機械の販売とメンテナンスを手がけている会社があります。10年前、リーマンショックが起こり、景気が急激に悪化しました。すると、その会社の多くの顧客も業績が悪化して設備投資をする余裕がなくなり、新しい機械は売れなくなりました。

 しかし、当時、私のお客さまの会社には資金的な余裕があったため、販売不振などで仕事があまりなくなっていた社員を顧客サービスに回し、顧客が保有する機械が耐久年数を超えていても、1年でも長く稼働するようメンテナンスに力を入れました。時には、無料や格安でメンテナンスを行ったということです。

 しばらくすると景気回復が始まり、顧客にも設備投資の余裕が生まれてきます。新しい機械の導入を決めたとき、どこに声をかけるのかは明白です。

 一方、景気が落ち込んだときに、もし自社に資金的な余裕がなかったら、経営者は自社の立て直しで手いっぱいになり、顧客をサポートする余裕はなかったでしょう。

まずは手元流動性を十分にし、自己資本比率を高めること

 自己資本比率(返済の必要のない純資産÷資産)が低い会社は、景気変動への抵抗力が弱いといえます。景気が良いときは負債が多い、つまり、借金まみれでも会社は回るものです。運転資金が不足しても銀行が貸してくれます。しかし景気が悪くなれば、銀行は手のひらを返して貸してくれなくなり、立ち往生してしまいます。私はそういう会社を何社も見てきました。

 そこで、景気や業績が良くて、手元流動性(現預金など自社でコントロールできる資金)に余裕が生まれたときは、自己資本比率の低い会社は、まず財務改善を行う。借金を返すということです。それでも余裕がある場合は、自己資本比率を一定以下(たとえば20%など)に落とさない範囲で設備投資をすることを検討してください。自己資本比率が高い会社は、このことを気にすることはありません。

 ただし、手元流動性が十分にない会社は、借金返済と現預金のバランスが重要です。中小企業の手元流動性の目安は、月商の1.7ヵ月分、資金がボトム(一般的には給料日から月末までの間)になるときでも1ヵ月分を用意しておくのが適切と私は考えています。

 理論的には資金がボトムになるとき、1円でもあれば倒産することはありませんが、取引先の都合で予定していた資金が入ってこない事態も想定できます。手元流動性が少ない会社は、資金が余ったからといってすべてを借金返済に使わずに、手元流動性を上で述べた基準程度に確保しておくことが大切です。その上で、借金返済をするのです。企業はお金がなくなったときに潰れるのです。

 ですから、手元流動性が極端に低い場合には、借金をしてでも、つまり、自己資本比率を落としてでも、手元流動性を確保することが大切なのです。あくまでも優先順位は、手元流動性が上で、それが十分に確保できてから自己資本比率のことを考えてください。

景気が良いときほど、会社が「小さくなる能力」を身につける

 設備投資をする場合でも、同時に会社が「小さくなる能力」を持っておくことがとても大切です。好況時には仕事が増えるため、社員を増やし、設備投資をしたくなりますが、すべてを拡大・拡張で賄わずに、仕事を一定比率外注するのが有効な場合も少なくありません。

 外注すれば利益率は落ちますが、景気が悪くなって仕事が減ったときに外注分を削減することで、会社と社員を守ることができます。これが「小さくなる能力」です。それをせずに、中途半端に会社を大きくすると、景気が悪化したときに対応できません。固定費は売上高が落ちても減らないのです。

 繰り返しますが、景気が良いからといって背伸びをしないこと。私利私欲、公私混同など、経営姿勢が根本から狂っている経営者は論外として、一所懸命に経営をしているにもかかわらず会社を潰した経営者には、事業欲が強い人が目立ちます。それ自体は否定しませんが、成功と失敗は紙一重です。無理な拡大、それも借金を使った拡大にはリスクが大きい場合が少なくないのです。

 運良く成功をつかむことができれば、素晴らしい経営者とたたえられますが、失敗すれば会社を倒産させ、社員を路頭に迷わせ、取引先や銀行にも迷惑をかけてしまいます。手元流動性を確保し、さらには、自己資本比率をある一定以上に保つなど、経営者には成長と安定のバランス感覚が求められます。景気が良いときこそ、成長と安定のバランスを見直すときなのです。

(小宮コンサルタンツ代表 小宮一慶)

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