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世にはびこる「ランキング」の多くはいい加減?カラクリを見破るコツ

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2019/08/12 06:00 flier
Photo:PIXTA © Diamond, Inc 提供 Photo:PIXTA

レビュー

 雑誌やテレビでは「住みたい街」「大学」「理想の上司」「赤ちゃんの名前」など、本当にさまざまなランキングを目にする。だがその順位、本当に信じていいのだろうか? そうしたランキングには、スポンサーの思惑が絡んでいる場合もあれば、偏った調査結果のものも多い。すべてが害のあるものというわけではないが、ランキングといっても千差万別、玉石混交なのだ。重要なのは、有害なランキングを見極める目を養うことであり、本書『ランキングのカラクリ』の目的もまさしくそこにある。ランキングをつくる正しい方法論を学び、背後にあるカラクリを知れば、いい加減なランキングでも害を最小限にして楽しめるはずだ。

 著者はランキングを4つに分類して考えてみてはどうかと提案している。(1)良いランキング、(2)個人にとっては有用性のあるランキング、(3)巷間で信じられているランキング、(4)話のネタレベルのランキングである。使い方を間違えなければ、ランキングは役に立つし、話のネタとしてもおもしろいものだ。

 自分でしっかり考えながら本書を読めば、教養としての統計学が自然と身につくだろう。ビッグデータなどの「数字」が注目される時代だ。ぜひ数字とデータの「正しい」読み方や解き方を学び、今後に活かしていただければと思う。(加藤智康)

本書の要点

(1)ランキングをつくるうえでは、いかに指標化するかがポイントになる。皆が納得する「妥当性」、誰が測定しても安定して同じような数字になる「信頼性」が求められる。

(2)方法論の中でも「一般化」という概念は、ランキングの存在意義を問うものだ。異なる時代、空間、文化でも同種のことが言えるのかという問いは重要である。

(3)ランキングを遊びの範囲で楽しむのはいいが、それが真実だと思い込むべきではない。ランキングのカラクリを見破るためにも、常識を疑い、考える習慣が大切である。

要約本文

◆ランキングを切り口に思考を深めよ

◇良いランキングを見極める

「ランキング」といっても千差万別、玉石混交である。本書の目的は、良いランキングを見極める目を養うことだ。そのためには物の見方・考え方を学ぶことが欠かせない。いい加減なランキングに騙されて、自分の生活の質を落とすことは避けなければならない。

 著者がランキングの良し悪しを判断する枠組みとして使っているのが、2次元の図表による分類だ。1つは「一般的-特殊的」の軸、もう1つは「計測方法の適切-不適切」の軸である。良いランキングは、「一般的」で「計測方法の適切」なものだ。逆に「特殊」で「計測方法の不適切」なものは、話のネタレベルでとどめておくべきである。とはいえこちらに区分されるランキングには、おもしろいものが多い。

 注意しないといけないのは、「一般的」ではあるが、「計測方法の不適切」な領域である。たとえば「大学ランキング」や「XXX病の死亡率」などがこれにあたる。

◇平均は数字をごまかすには便利なツール

「平均」といってもじつは3種類ある。たとえば7人の国語の点をすべて足して、7で割ると平均が出る。これを「算術平均」と呼ぶ。一般的に平均といえばこれだろう。しかし統計学的には、「中間値」と「最頻値」も平均に区分される。

 算術平均の場合、「はずれ値(アウトライヤー)」というずば抜けて高い数値を持つ人が混じると、一人で平均値を上げてしまう。アウトライヤーをあえて除いて分析するケースもあるが、その基準は難しく、決まった手法はない。

 一方で赤ちゃんの名前ランキングのように、平均の数値の差が極端に小さいのに順位をつけると、数人の誤差でいくらでも変化してしまうこともある。たとえばある年の男の子の名前ランキング1位の占有率は0.67%であることから、そもそもランキングをつくる類の情報ですらない。一方で差が大きすぎてもダメだ。

 私たちはいつの間にか、メディアの報道する数値やランキングに洗脳されている可能性がある。数字を冷静に見て、その真の意味を理解し、自ら判断できるようになるべきだ。

◇多くのランキングは役立つものではない

 指数にすることによって、はじめてランキング化が可能になる。指数とは、指標による定義化・ウエイト付けにしたがって、実際に数字で表現されたものを指す。数字で表現されれば、比較や順位付けも可能になる。

 ただしその際は、どのように指標化するのかが問題になる。指標は皆が納得するものでなければならない。これを「妥当性」のある定義という。妥当性は指数やランキングをつくるにあたって、かならず考慮しなくてはならない。

 それに加えて「信頼性」も必要である。誰が測定しても、安定して同じような数値が出るようでなければならない。この観点からすると、「住みたい街ランキング」などは本当に誰でもいつでも住みやすい街なのか、疑問に思えてくるだろう。

 世の中のランキングの多くは、集団で平均したものを指数化したものに過ぎず、個人にとって役立つものではないことが多い。ランキングを見るときは、妥当性と信頼性をもとに確認するべきだ。

【必読ポイント!】

◆一般化という概念

◇主観と客観

 一人の意見は完全に主観的である。一方で、リサーチによる皆の意見(平均)は、ひとまず客観的な数値と見なされる。あくまでサンプル数が、十分に確保されていればの話だが。

 サンプル数については、たとえば「12人でも十分か?」と尋ねられても、明白な回答はない。100人くらいの意見の集約なら、きちんとサンプリングされているという前提で、ある程度客観性は保持されていると考えてもいいだろう。しかし残念なことにこの客観性には限界がある。実験室などで繰り返し検証ができない、もしくはそれが極端に難しいからだ。しかもランキングは、実社会における理論や仮説、あるいは人びとの意見が前提になっており、そうしたものは時代とともに変わりうる。

 これらのことを踏まえると、ランキングの客観性は、「準客観性」とでも呼ぶべきレベルといえる。

◇特殊性

 ランキングにはさまざまな特殊性が存在する。たとえば時代とともに変わる人びとの意見は、「時間軸」という次元に沿った変化である。

 加えて「空間軸」という変化もある。これは地理的条件と捉えてよい。日本でも東京と大阪では違うだろうし、東京でも千代田区と八王子市という空間では、人びとの意識はかなり異なると想像できる。

 さらに「文化軸」もある。思考、習慣、哲学、宗教、嗜好などが異なれば、ランキング結果も同じものにはならないかもしれない。

 こうした変化をまとめて「特殊性」と呼ぶ。特殊性が高いと、どうしても特定の人だけに有用性のあるものや、話のネタレベルに留まりやすい。「特殊」に対抗する概念は「一般」で、一般化された理論の有用性は高いと考えられる。

◇一般化

 一般化とは、異なる時代、異なる空間、異なる文化でも同様のことが言えることを指す。良いランキングというのは一般的であり、計測方法が適切なものだ。ランキングにおいても、時代を越えて、どんな社会でも成立しそうな理論や仮説は存在する。たとえば犯罪をしてしまう原因や、逆に犯罪をやめさせる要因のランキングはこれに当てはまるだろう。一般化された理論は、多くの研究者らに支持された時点で、一応「事実・真実」だと認知される。

 これらを踏まえ、一例として内閣支持率を検証してみよう。するとそもそも支持率は新聞社ごとに異なることがわかる。つまり支持率は統一的で安定的なものではないし、本書で言うところの「一般化」された状態でもないのだ。

「大学ランキング」も、これまで学んだことを検証するうえで優れた教材だ。分析枠組としては、「マクロ-ミクロ軸」と「アカデミズム適格性軸」がいいだろう。大多数の受験生に関係するものは「マクロ的(≒客観的)」な指標であり、限定された個人に関するものは「ミクロ的(≒主観的)」な指標だ。「アカデミズム適格性」は、「学術的に重要か否か」を判断するものである。たとえば校舎の美しさや食堂の味という指標は、この観点からすると低い。

 大切なのは、その大学をめざす人が何を重視するかである。見かけだけの大学ランキングに惑わされてはいけない。これまで見てきたような分析をすれば、そのやり方やその中身の空虚さが理解できるだろう。

◇ランキングのカラクリを見破ろう

◇方法論を確かめる

 少々難あるランキングでも楽しんでいるうちはいいが、一人歩きを始めて迷惑なレベルになるのは問題だ。意図的に人をだましたり、広告宣伝の目的で使用されたりしているものもある。受け手側も、考える癖をつけなければならない。

 ランキング(統計を含む)のカラクリを見破るコツはいくつかある。まずチェックすべきなのが、方法論が明記されているかどうかだ。データや表が示されているのに、方法論が書かれていないものは、楽しんでもよいが信じてはいけない。方法論が書かれている場合でも、母集団がどんなものか、ロジックや妥当性や客観性はあるか、分析のもとになっているデータはアクセス可能かという観点で確認することが求められる。

 また隠された情報があるかどうかを、質問票などでチェックしてみるのも大切だ(載っているのであれば)。自分の立場ならどんなチェック項目を用意するかも考えてみてほしい。これは自分で考える癖をつける訓練にもなる。自分の立場に都合の悪い情報を隠す行為はよくある。それらを見つけるのはなかなか難しいが、やはり質問票を丁寧にチェックすることが肝心だ。常識を疑い、「本当にそうか?」と考えてみてほしい。

◇急な変化に着目せよ

 ある統計値が急な変化をしたら、そこには明らかな理由が存在する。その理由としては、(1)データ収集や分析などの「方法論の変化」、(2)その数値をめぐる対処方法などの「環境の変化」、(3)いままで気付かなかった「別の因果による変化」などが考えられる。急な変化があったら、それは「考える良い機会」だと心得るべきだろう。

◇どうやって事実を認定するか

 事実認定も重要だ。事実は主観、無知、政治などにより、ねじ曲げられることがあるからである。事実の確定は難しいが、逆に「正しくないこと」や「事実である可能性が低いもの」ならわかることが多い。

 ただし「事実でないことを事実でない」と決めることは、技術的にはできても思想的になかなか難しい場合もある。とりわけ政治的なスタンスや宗教上の考え方がそうだ。議論が噛み合いそうになかったら、「放っておく」ことも検討したほうがいい。

 ただしそれでは進展は見込めないというのであれば、事実認定機構のような組織体をつくるのも手だ。誰でもこの機構に「事実の確認」を申し込めるようにし、ディベートのルールを決めたうえで審査員に内容を判断してもらうのである。審査員には「客観的に公平に物事を判断できる」人材を登用し、任期は2年間にして半数は毎年入れ替わるように工夫するなど、流動性を確保するといい。法律上の効力はないが、少なくともいまのマスメディアや裁判よりは、真実に近づくことができるだろう。こうすればメディアによる勝手な屁理屈や不毛な水掛け論に、ピリオドを打てるに違いない。

一読のすすめ

 著者の言うように、世にはびこる多くのランキングは意味のないものだ。一方でランキングがおもしろい読み物なのもたしかであり、ゆえにそこには常に危険性がつきまとう。本書にはいくつも問題が設けられており、読者が一緒になってランキングについて考えられるようになっている。より高い視座からランキングを楽しむためにも、ぜひ本書をお読みいただきたい。

評点(5点満点)

総合3.5点(革新性3.0点、明瞭性3.5点、応用性4.0点)

著者情報

谷岡一郎(たにおかいちろう)

 1956年大阪生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、南カリフォルニア大学行政管理学部大学院修士課程修了。同大学社会学部大学院博士課程修了(Ph.D)。専門は犯罪学、ギャンブル社会学、社会調査方法論。現在大阪商業大学教授、学長。

 著書に『「社会調査」のウソ』 (文春新書)、『データはウソをつく』 (ちくまプリマー新書)、『確率・統計であばくギャンブルのからくり』 (講談社ブルーバックス)、『こうすれば犯罪は防げる』 (新潮選書)などがある。他に海外でも数多くの論文を発表している。

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