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中国経済「3月から一変」下振れリスク 気になる2つのポイント

ZUU Online のロゴ ZUU Online 2017/05/17

2週間前、4月の製造業PMIが前月を0.6ポイント下回り、景気見通しが鈍化していることを伝えた。10日に発表された4月の月次統計でも、景気の鈍化傾向がはっきりと見て取れる。

鉱工業生産は6.5%増で、3月と比べ1.1ポイント悪化、市場コンセンサスを0.5ポイント下振れした。固定資産投資(累計)は8.9%増で、3月累計と比べ0.3ポイント悪化、市場コンセンサスを0.2ポイント下振れした。小売売上高は10.7%増で3月と比べ0.2ポイント悪化、市場コンセンサスを0.1ポイント下回った。輸出(人民元ベース)は14.3%増で、3月と比べ8.0ポイント悪化、市場コンセンサスを2.5ポイント下振れした。

3月までの好調とは状況が一変しているが、日本では中国経済の下振れリスクを警戒する声が高まっている。住宅バブル、理財商品バブルが自発的に弾けているのであれば、長期停滞の可能性を意識しなければならない。景気がなぜ減速するのかについて正しく認識することが、この問題を考える上で重要なポイントである。

その点に関して先週、2つほど気になるポイントがあった。

■中国証券監督管理機関は株価急騰を抑えたい

一つは証券市場に関するものである。複数の報道機関は9日、「中国証券監督管理機関は両取引所を通じて、証券会社に対して、一帯一路サミット期間中、顧客の取引行動をしっかりと管理するよう要求した」と伝えた。ある証券会社が子会社、営業部に伝えたとみられる文章も記載されていた。その内容は以下の通り。

両取引所の関連部門から通知・要求があり、“一帯一路”サミット会議に際して、敏感な時期となる5月8日から5月16日の期間について、各支店は業務の監督管理を高度に重視し、積極的に協力し合い、顧客の取引行動管理業務をしっかりと行うよう求める。

(1)各部門は管理する顧客の内、活発に取引する顧客、資金量の大きな顧客、重点監視名簿に記載されている顧客について、その取引状況を通知、伝達する。穏やかな取引をするよう呼びかけ、市場に対してショックを小さくする。

(2)株価ボラティリティの比較的大きな銘柄は既に両取引所によって重点的に監視されている。こうした重点管理銘柄における出来高、価格に比較的大きな影響を与える操作行為は、両取引所によって重点的に監視され、監督措置が取られる。各支店は顧客に対して、敏感な監視の中に置かれており、異常な取引行為を行わないように呼び掛ける。(9日、網易などから要約)

見た通りである。証監会は株価を支えたいのではなく、株価の急騰を押さえたいのである。4月の清明節休場直前に発表された雄安新区建設決定の報道により、関連銘柄が暴騰した。それを抑えるために証監会は2日間、関連銘柄の取引を停止させている。今回は、そういうことが起きないように先回りして投機を予防したのである。

■銀行の違法資金が徐々に株式市場から撤退

もう一つは金融監督管理政策に関するものである。12日の中国証券報は、「監督管理部門は金融重視のバーチャルエコノミーから実物重視のリアルエコノミーへの転換を目指し、指導を強化している」といった内容の記事を掲載している。

アナリストは「第2四半期に入り、金融監督管理政策が集中的に実施されるにつれて、銀行の違法資金が徐々に株式市場から撤退している。同時に、監督管理が厳しくなる中、銀行資金は伝統的な信用貸出業務に戻りつつあり、オフバランス投資は徐々にセカンダリー(流通)市場からプライマリー(IPO)市場に向かい始めている」などと分析している。

背景には監督管理の及びにくい、リスクの高い理財商品を減らし、金融全体のレバレッジを小さくするといった政策がある。

■成長戦略を成功させるための金融リスク縮小

中国経済「3月から一変」下振れリスク 気になる2つのポイント(写真=PIXTA) (ZUU online) © ZUU online 中国経済「3月から一変」下振れリスク 気になる2つのポイント(写真=PIXTA)

こうした当局のリスク回避姿勢は、4月25日に中国共産党中央委員会政治局が開いた国家金融安全維持に関する第40回集団学習会の内容そのものである。当局は、そこで示された6項目の任務、すなわち、

1.金融改革を深掘りする

2.金融監督管理を強化する

3.リスクのある点について措置、処置を行う

4.実体経済の発展のために良好な金融環境を作り出す

5.指導的立場にある幹部の金融業務能力を高める

6.共産党による金融業務に対する指導を強化する

を実行したということである。

しかし、これは政策の一面に過ぎない。

違う一面があり、そちらの方が重要である。深セン経済特区、上海浦東新区に次ぐ全国的な意義を持つ新区となる雄安新区建設の決定や、APEC、G20会議を意識した一帯一路サミット会議の主催など、一方で、大胆な成長戦略が実施されている。

こうした大きな成長戦略に加え、混合所有制改革、供給側改革といった構造改革を加速させようとしている。結局、中国共産党は短期的な景気循環など眼中にはなく、長期の発展戦略、構造改革などが政策の核心なっている。そうした政策を実施していく上でバブルの発生が予想され、それを防ぐ政策が併せて実施されているのである。

長期の発展戦略を加速すると、金融が大きく膨張し、それが不要不急の投資、重複投資、無駄な投資へとつながっていく。さらに、その過程で汚職が蔓延する。表面的には景気に対してブレーキとアクセルを同時に踏んでいるような感じではあるが、ブレーキについては局所的に効かせようとしている。全体の成長率は落ちたとしても、長期的な構造改革はゆっくりだが持続的に進むことになる。中国経済は当局によるコントロールの下で適度に減速するだろう。

田代尚機(たしろ・なおき)

TS・チャイナ・リサーチ株式会社代表取締役

大和総研、内藤証券などを経て独立。2008年6月より現職。1994年から2003年にかけて大和総研代表として北京に駐在。以後、現地を知る数少ない中国株アナリスト、中国経済エコノミストとして第一線で活躍。投資助言、有料レポート配信、証券会社、情報配信会社への情報提供などを行う。社団法人日本証券アナリスト協会検定会員。東京工業大学大学院理工学専攻修了。人民元投資入門(2013年、日経BP)、中国株「黄金の10年」(共著、2010年、小学館)など著書多数。OneTapBUYにアメリカ株情報を提供中。HP:http://china-research.co.jp/

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