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出光、株主総会で創業家vs.経営側の対立再び 創業家は合併潰しへ5名の首を狙う

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/06/13 大西 富士男
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 6月29日に予定されている石油元売り大手・出光興産の定時株主総会。今年も荒れることは必至だ。

 創業家代理人の鶴間洋平弁護士は6月5日、創業家側の総会対応方針を明らかにした。会社側が提示した12名の取締役候補のうち、5名の取締役の選任(社内取締役4名、社外取締役1名)に反対する。

 委任状を集めることはしないが、反対理由など創業家の考えを説明した文書を、ほかの株主や出光の石油製品を売る特約店・販売店経営者に送付し、創業家への賛同を募る。

日本中を驚かせた昨年の総会

 1年前の株主総会は日本中を驚かせた。創業家の前任代理人の浜田卓二郎弁護士が総会に乗り込み、同社が2015年7月以来進めてきた昭和シェル石油との経営統合(合併)に対する反対をブチ上げたのだ。

 創業家側は出光昭介名誉会長をはじめ、一族・財団で出光の議決権の33.9%を握る。創業家側は取締役候補全員の選任に反対票を投じ、月岡隆社長に対する賛成票は52.3%、過半数をわずかに上回る僅差での信任となった。

 この「出光創業家の乱」によって、出光創業家と経営陣の対立が一気に世間に知られることとなった。昨年10月には、出光と昭シェルとの合併時期が当初予定の今年4月から無期限延期に追い込まれた。昨年12月に公正取引委員会の合併承認が下り、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルからの昭シェル株31%の買い取りは実現したものの、現在も合併の道筋はまったく見えていない。

 「体質・社風が異なる昭和シェル石油との経営統合によって、これまで守り続けてきた出光興産の理念を維持することができなくなる」

 「経営陣は31.3%ものプレミアムを上乗せして昭和シェル株を取得しており、そのような費用を投じた人間は、一般的に、その費用がもったいないと思い、途中で断念できなくなる」

 「このように無理に経営統合を進めることにつき、現主要経営陣には責任回避という私的な利益があることから、出光と利益相反がある」

 創業家側が代理人の鶴間弁護士の名で販売店経営者に今年の株主総会を前にして送った文書には、なぜ経営統合に反対するのかがとうとうと説明されている。そして社内取締役4名の選任に反対する理由として、「経営統合を主導してきた現主要経営陣には、その誤った経営判断についての責任をとっていただく必要がある」などと述べている。

 主要経営陣として「戦犯」扱いされているのが、月岡社長のほか、関大輔副社長、丹生谷晋取締役経営企画部長、本間潔執行役員の4名だ。そのうち、月岡社長・関副社長・丹生谷取締役が先頭に立って昭シェルとの合併を進めてきたのは事実。また社外取締役として新任される予定の橘川武郎・東京理科大学教授は業界の再編論者として知られ、創業家側が警戒心を持つことも理解できる。

不可解な本間氏への反対

 不可解なのは本間氏の選任に関する反対だ。「本間氏は経営統合にはノータッチ」。出光社内からはそういった声が上がる。

 本間氏は国際需給部を統括する執行役員から取締役への昇格が予定される。需給部が原油調達や製油所での生産計画などを担う重要な部署であることは間違いないが、執行役員という現在の本間氏の肩書を考えると直ちに「合併で中心的な役割を担ってきた」との説明と整合するとは思えない。

 なぜ本間氏なのか。創業家の代理人を務める鶴間弁護士は、東洋経済の質問に対し、「海外担当および国内の需給担当として、問題のある施策を行ってきたと考えております」と答える。

 具体的には、本間氏が中心になって進める価格建て政策が高値になりがちで消費者本位の理念に反する、と創業家は見ており、その点を問題視しているようだ。

 それだけでこの新任の取締役候補を否決するのか。実は本間氏夫妻は昨年4月初旬に開かれた昭介名誉会長の二男・正道氏の結婚披露宴では媒酌人を務めている。国際需給部は正道氏が勤務する職場、いわば正道氏と本間氏は今も職場の部下、上司の関係にある。

 だが、本間氏は出光興産と同じビルの9階にある出光美術館の理事長室にいる昭介氏の元を数回訪れ、合併賛成の意思を表明したといわれる。今回の反対の中には、本間氏のこうした行為に対する創業家側の感情論が入り交じってはいないか。

 創業家側は社内取締役4名の選任反対理由に、「経営統合以外の経営判断の誤り」も付け加えている。具体的には、①海外事業の失敗、②天坊昭彦、中野和久両相談役の意向を踏まえた経営意思決定・ガバナンス欠如、③両相談役への高額報酬・破格待遇などだ。

海外事業の減損リスクを指摘

 海外事業に関しては6月5日の会見資料に「本年度の業績に適切に反映されていないか、明らかに発生することが見込まれる損失の反映を意図的に遅らせているのではないか」と記載。相談役の報酬や海外減損に関しては、「総会でこの点を経営陣に対し質問する」(鶴間弁護士)という。

 こうした創業家側の指摘に対しては「コメントしない」が会社の公式見解。ただ減損発生を強く疑わせるような創業家側の姿勢には「なぜこういうことを言うのかよくわからない」と会社内部からは不思議がる声が挙がる。

 出光の業績は2015年度の359億円の最終赤字から2016年度は881億円の黒字にV字回復を果たした。原油価格上昇や円高一服などで在庫評価損益が急改善したことが大きいが、業績面では経営側に有利な状況になっている。今回は創業家側への賛同の輪は昨年ほど広がらないという見方も出ている。

 出光は5月、昭シェルと調達や製品の相互供給などの協業で合意したと発表している。だが、こと合併に関していえば、創業家の反対が続く以上、まったく前に進まないのが実情だ。

 創業家側、出光経営陣とも決定打に欠ける中でつばぜり合いを続けている。一般株主や出光、昭シェルの社員、販売店関係者の目に、両者の行動はいったいどう映るか。

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