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分散投資効果の計測とパフォーマンス改善の検証

ZUU Online のロゴ ZUU Online 2020/02/14 20:20
分散投資効果の計測とパフォーマンス改善の検証(画像=PIXTA) © 分散投資効果,パフォーマンス 分散投資効果の計測とパフォーマンス改善の検証(画像=PIXTA)

■要旨

資産運用を行う上で、投資対象を分散することは重要な点である。しかしながら、ポートフォリオを構築する際に、分散投資効果を直接的に計測し、活用することは少ないのではないだろうか。

分散投資効果を計測する指標を用いて、ポートフォリオの分散投資効果を計測した。また、企業年金の資産配分を参考に、過去の実績に基づく分散投資によるパフォーマンスの改善を検証した。この結果、分散投資効果の効果的な活用により、パフォーマンスが改善された。

また、単に資産クラスの数を増やすよりも、効果的な組み合わせによりリスクの低減、投資効率の向上することが示唆され、効果的な資産の組み合わせが重要であることが改めて確認された。

■はじめに

資産運用を行う上で、投資対象を分散することは重要な点である。しかしながら、ポートフォリオを構築する際に、分散投資効果を直接的に計測し、活用することは少ないのではないだろうか。

本稿では、分散投資効果を計測する指標を用いて、分散投資効果を計測する。これにより、分散投資効果を効果的に活用したポートフォリオの構築を行う。また、企業年金の資産配分を参考に、分散投資によるパフォーマンスの改善を検証する。

■分散投資効果の計測

分散投資効果について考える上で、改めて分散投資効果とは何か確認したい。分散投資効果とは、値動きの異なる複数の資産に投資することで、ポートフォリオ全体のリターンの変動を低減する効果を言う。分散投資効果により、ポートフォリオ全体のリスクは組入資産各々のリスクの単純な合計よりも低下する。

本稿では、組入資産のリスク合計に対してポートフォリオのリスクがどれだけ低下したかを分散投資効果の指標として、ポートフォリオの分散投資効果を計測する。また、分散投資効果指標を用いて、資産配分の変更による分散投資効果の向上や、パフォーマンスの改善を試算する。

■リスクとリターンの関係

●代表的資産クラスの年次リターンの推移

次に、ポートフォリオのリターンについて考えたい。ポートフォリオのリターンは組入資産のリターンの組入比率による加重平均となる。このため、当然のことながらポートフォリオのリターンを向上するには、リターンがより高い資産を組み入れることが必要となる。

ここで、代表的資産クラスの年度リターンの推移を見てみたい。これを見ると、直近5年間で各年度最もリターンの高かった資産は2014年度は外国株式(+32.6%)、2015年度は国内株式(+30.7%)、2016年度は国内債券(+5.4%)、2017年度は国内株式(+14.8%)、2018年度は国内株式(+15.9%) と年度毎に異なっている。各資産クラスのリターンとその順位は年度毎に変化している。このことから、1年程度の短期間のリターンの予測は容易ではないことが分かる。

●長期的なリスク・リターンの関係

短期的なリターンの予測が困難な一方で、長期的なリターンはどうだろうか。2004年3月から2019年3月までの15年間の各資産のリターンとリスクの関係を示している。これを見ると、各資産の年率換算リターンとリスクは国内株式(+4.0%,17.5%)、 国内債券(+1.9%,1.8%)、外国株式(+8.3%,18.7%)、外国債券(+4.0%,9.2%)、ヘッジファンド(+3.5%,5.1%)、短期資産(+0.1%,0.05%)となっている。

これを見ると、各資産の長期的なリターンは、概ねリスクに比例していることが分かる。リスクはリターンの源泉であり、ポートフォリオのリターンを高めるには、それに見合うリスクを持つ資産を組み入れる必要があるといえる。また、リターンをより安定して得るには長期的な投資が必要となる。

これらのことから、非常に基本的ではあるが、ポートフォリオのパフォーマンスを向上するには下記の点が重要といえる。収益源となるリスク資産を組み入れつつ、分散投資効果によりポートフォリオのリスクを低減することで、投資効率性(ここでは、シャープレシオ(1))を向上することができる。

・ポートフォリオのリターンを高めるには、リスクの高い資産を組み入れる必要がある

・ポートフォリオのリスクを分散投資効果により低減する

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(1)シャープレシオは下記の式で計算される。金融資産がリスクに対してどれだけ効率よくリターンを獲得できたかを計測する指標である。

 シャープレシオ=(リターン-無リスク資産のリターン)/リスク

■分散投資によるパフォーマンス改善の検証

●企業年金の資産配分

ここまでで説明した分散投資効果やリスク・リターンの関係に基づいて、企業年金ポートフォリオの分散投資効果とパフォーマンスの改善を試算したい。

企業年金連合会によれば、2004年3月末~2019年3月末の15年間における企業年金の資産配分は推移している。2019年3月時点での資産配分は国内株式10.4%、国内債券22.6%、外国株式13.4%、外国債券16.7%、その他13.7%、短期資産・一般勘定23.2%となっている。また、企業年金の資産配分のパフォーマンスを試算すると年率換算リターン+3.9%、リスク6.9%、シャープレシオ0.55、分散投資効果0.20となる。企業年金の資産配分では、分散投資効果により、ポートフォリオのリスクを20%低減できていることが分かる。

参考に均等配分によるポートフォリオのパフォーマンスは年率換算リターン4.0%、リスク7.4%、シャープレシオ0.52、分散投資効果0.20となっている。年金基金の資産配分のリターンや分散投資効果は均等配分とほぼ同等となっている。

●分散投資効果を最大化するポートフォリオ

次に、理想的な状況を前提とした最適化により分散投資効果を最大化するポートフォリオを構築してみた(2)。この際、ポートフォリオのリスクは同期間の企業年金ポートフォリオのリスクと同水準に維持した(3)。これにより、パフォーマンスがどれだけ改善するかを試算した。

各資産のリスクやリターンの相関関係から最適化により、分散投資効果を最大化するポートフォリオを構築すると、2019年3月時点での資産配分は国内株式16.6%、国内債券24.7%、外国株式17.0%、外国債券30.0%、その他11.6%となる。また、パフォーマンスは年率換算リターン+4.25%、リスク7.02%、シャープレシオ0.59、分散投資効果0.26となる。

これを見ると、分散投資効果は企業年金ポートフォリオのパフォーマンス(試算)が0.20に対して分散投資効果最大化ポートフォリオは0.26に向上している。また、年率換算リターンは3.92%から4.25%に改善している。これは、収益源となるリスク資産を組み入れつつ、分散投資効果により、ポートフォリオのリスクを低減したことによると考えられる。分散投資効果を効果的に活用することで、企業年金ポートフォリオのパフォーマンスを、より良くできる可能性はあると言えよう。

分散投資効果最大化は、リターンの相関の低い資産を組み合わせている。各資産の相関関係を見ると、国内債券と国内株式が最もリターンの相関が低い組み合わせであり、相関係数は▲0.33となっている。分散投資効果最大化では、国内債券や国内株式を多く組み入れており、こうした低相関の資産を組み合わせることで、ポートフォリオのリスクを低減している。

ここで、分散投資効果最大化では、必ずしも全ての資産を組み入れていない。単純に組入資産を増やすことが、必ずしも、分散投資効果の向上につながらないことが示唆されている。

また、分散投資効果最大化では、短期資産・一般勘定が組み入れられていない点も特徴である。無リスク資産はリターンの変動が極めて小さく、分散投資効果の向上につながりにくいことによると考えられる。

なお、試算の対象とした期間では、国内債券の利回りは概ね低下傾向にあった。これにより、国内債券は利回り低下(債券価格上昇)による収益を獲得しやすい状況が続いていた。しかし、日本の10年国債の利回りは2016年2月にゼロを下回り、その後はゼロ近辺での推移が続いている。金利低下の余地が少なくなった現在では、国内債券は以前のような収益獲得は見込みづらい可能性がある。

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(2)各時点で、各資産の過去2年間のリスクと相関に基づいて、分散投資効果を最大化する資産配分を算出した。この際、各時点のリスクを企業年金の期間中の平均リスクとする制約条件を課した。

(3)試算では、前月までの情報に基づいて当月の資産配分を決定している。このため、構築したポートフォリオのリスクは目標リスクとは若干の誤差が生じる。

●短期的なリターンによる資産配分

前節では、分散投資効果を高めるようにポートフォリオを構築した。しかし、実際に投資対象を選ぶ際には、足元のパフォーマンスが好調なものを選びがちかもしれない。参考に、短期間(過去1年間)のリターンに従って、ポートフォリオを構築する(4)と資産配分の推移は、分散投資効果最大化による資産配分はリスクと相関関係に基づく。一方で、こちらは過去のリターンに従って資産配分が決定されている。2019年3月時点での資産配分は国内債券30.0%、外国株式26.1%、外国債券43.9%となっている。また、パフォーマンスは年率換算リターン+4.11%、リスク6.88%、シャープレシオ0.58、分散投資効果0.16となる。

これを見ると、短期間のリターンによるポートフォリオのパフォーマンスや分散投資効果は、分散投資効果最大化によるポートフォリオよりも劣後していることが分かる。短期間のリターンによる資産配分では、過去のリターンが高かった資産に配分が偏りやすい。

また、組入資産の頻繁な入れ替えが発生している。今回の試算では売買コストは考慮していないが、実際の運用では、売買コストにより、パフォーマンスが更に低下する恐れがある。ポートフォリオの構築は、短期的なリターンに左右されず、長期的な視点で行う必要があるだろう。

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(4)過去1年間のリターンを今後に期待されるリターンとして、平均分散アプローチによりポートフォリオを構築した。平均分散アプローチとは、リスクを小さくしつつ、リターンを高めるようにポートフォリオを構築する方法を指す。ポートフォリオのリスクを企業年金の資産配分と同水準とした上で、期待されるリターンを最も高めるようにポートフォリオを構築した。

■まとめ

本稿では、分散投資効果を計測する指標を用いて、ポートフォリオの分散投資効果を計測した。また、企業年金の資産配分を参考に、過去の実績に基づく分散投資によるパフォーマンスの改善を検証した。この結果、分散投資効果の効果的な活用により、パフォーマンスが改善された。

また、単に資産クラスの数を増やすよりも、効果的な組み合わせによりリスクの低減、投資効率の向上することが示唆され、効果的な資産の組み合わせが重要であることが改めて確認された。

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原田哲志(はらだ さとし)

ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

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