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副業・転職・独立・起業の最適な使い分け方とは

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/11/07 06:00 山崎 元
副業・転職・独立・起業の最適な使い分け方とは: Photo:PIXTA © 画像提供元 Photo:PIXTA

「転身」の道が増えた

 1つの会社に人生を任せることができると考える人が減っている。

 会社やビジネスの不安定性を考えると、「昔から分かっていてもよさそうなものでしょう」と言いたくなるのだが、これに加えて、「人生100年時代」といわれるような人の長寿化(これ自体は大変結構なことだ)に自分がどう対応するかが現実的な問題になってきた。

 転職をしたい、独立・起業をしたい、そこまでやらずとも副業くらいはしておきたいと考える人が明らかに増えている。

 現在、まずまず恵まれた会社の「正社員」の立場で働いていても、55歳で「役職定年」、60歳で一応「定年」、65歳まで「継続雇用」のオプションもあり、といった扱いが概ね標準的だ。それぞれの節目で経済的な条件(端的にいって年収)が悪化することが多い。もちろん年収の減少もこたえるが、それぞれのタイミングで「あなたはもう第一線の人ではない」という扱いが精神的に不愉快だ。

 もちろん、20代、30代、40代でも、仕事が不本意だったり、職場が不快だったりして、転身を図りたいと思う人が多数いて不思議はない。

 現職場からの「転身」を指向する場合、とりあえず目指す方向として、「副業」「転職」「独立」「起業」の4つがあり得る。近年では、最後の「起業」のほかに、「既存の会社を個人で買って経営する」という方法もあって選択肢が増えているが、さてどれを目指したらいいのだろうか。

 本稿では、大まかな場合分けを試みたい。

転身方法の選択表

 主にサラリーマンを想定した場合の、選択の考え方を大まかに表にまとめてみた。

(1)副業

 現職場が概ね好きで離れたいとは思っていないが、自分の好きなことを仕事にしたかったり、将来に備える「仕事の種」をまきたかったりする場合の第1選択肢は「副業」だろう。

 現在の職場の収入や仕事の環境を捨てずに済むので、心理的にリスクが小さい。一方、それほど大きくはなくても、副業で勤め先の会社以外の収入があるのは気持ちのいいものだし、心強くもある。

 ただ、副業に対して、現在、多くの企業は好意的とは言い難い。しかし、かつて転職が(20年前くらいから徐々に)普通のことになっていったように、副業に対する世間の目と会社の対応は、時間はかかるとしても、少しずつ寛容になっていくだろう。

 主に20代の若い人の場合は、本業に集中し、本業の分野での職業スキルを高めることのために時間と努力を投資する効率が高いかもしれないが、それ以降は、複数の収入源と仕事の可能性を持つことのメリットが高まる。

 いきなり独立や起業に踏み切るよりはリスクが小さいので、副業は多くのサラリーマンにとって検討する価値のある選択肢だ。

(2)転職

 ともかく職場を変えたいという場合に、最も手っ取り早くてかつリスクが小さいのは転職だろう。

 選択肢として、転職を取るか、独立・起業を取るかを分かつものは、「自分の仕事」に対する顧客を別途既に持っているか、あるいは、自分を「営業」することに自信があるか否かだろう。

 転職すると、あなたは新しい会社に雇われる。会社は、するべき仕事と収入をあなたに与える。もちろん、するべき仕事を十分検討して転職を決めるのだろうが(これは、転職で最も重要なポイントだ)、転職の場合、基本的にあなたがする仕事を与えるのは会社であり、具体的には、上司筋の誰かだ。

 自分ですることを自分で決めたい、あるいはどのように仕事をするかについて強いこだわりがあるという人は、転職で満足を得られない可能性がある。

 ビジネスパーソンにとって「転職」は、自分の人材価値を経済的に有効に使う手段にもなり得るし、ダメな職場からの脱出手段として必要な場合もある。転職の作法は、今やビジネスパーソンの必修常識の1つだ。

 ただし、転職で問題が解決しない場合があることについても、想像力を働かせておきたい(筆者自身がこの点にもっと早く気づくべきだったかもしれない)。

(3)独立

 フリーランスとして複数の会社と契約する。あるいは、形として小さな会社を作って仕事を受ける。こうした形で仕事のやり方を変える方法もある。

 何らかの分野の仕事で「腕に覚えのある」人にとっては、有力な転身の選択肢だ。

 独立すると、上司や周囲に制約されることがなくなる。嫌な仕事はしなくていいし、嫌な客と仕事をする必要もない。

 問題は、自分の仕事への需要をどの程度持っているかだ。既に顧客を十分持っているか、営業活動に自信があるかなどが経済的立場の強弱を分ける。

 立場が弱い場合、仕事を発注してくれるクライアントに対して、サラリーマン時代の上司以上に気を遣わなければならない場合が少なくない。

 かつて、「就職活動がうまくいかないので、フリーで仕事をしたいがどうか?」という相談を学生から受けたことがあったのだが、「フリーの仕事は、年がら年中就活しているようなものなので、あなたのような人こそフリーランスには向かない」と反対したことがある。

(4)起業

 それでは、一人で立って自分自身を商品化して稼ごうとする「独立」と、新たに会社を作る「起業」を分かつポイントは何なのだろうか。

 筆者は、自分自身が本気で起業に注力したいと意識したことがないので、「起業」の何たるかを語るデータが少ないかもしれないが、恐らく単なる「独立」と「起業」との分かれ道は、自分のビジネスを大きくしたいと強く指向するか否かだろう。

「会社なのだから、当然大きくしたい」とナチュラルに思う人は、結果の良し悪しはともかく、気性として起業に向いているように思う。

 売り上げを増やし、使う人を増やし、世間での存在感を増したいと強く思うのでないと、会社を新しく作って大きくしていこうと経営するには向いていない。

 もちろん、独立して成功した人の経済的な活動形態が会社であるケースは多い。しかし税金、その他のために会社の形態を取っているだけの人と、ビジネスを大きくしようとして起業した人には大きな違いがあるように思う。

 結果的な成否は別だが、起業家は「事業を大きくして、自分の影響力を拡大したい」という強い欲求を持っている。

筆者の場合を正直に

 筆者は、今年60歳になったが、これまで12回転職して、20年以上副業を持っていたし、現在はサラリーマンの傍らで、自分の小さな会社を持っている。

 形式上自分の会社を持っているとはいえ、多くの人を使っているわけではない。サラリーマンの立場をずっと維持していて、現在の働き方は、時間配分の上で「独立」に近いが、立場としては「サラリーマン+副業」である。

 筆者は、25歳ごろから長いこと「転職の人」だった。時々の職場に不満を持つことが多かったし、1つにはより高度な仕事を身につけるため、もう1つにはよりよい条件で仕事をするために職場を変えてきた。他人に自慢できるほど得はしなかったが、幸運にも損はしなかったようだし、おおよそ小さな妥協の下にまずまず機嫌よく働いてきた。今のところ結果的にありがたい職業人生だ。

 42歳になる直前のことなのだが、将来の働き方に備えて「副業」を育てようと思って、次の転職先と交渉して、「給料は抑えてその分働きますが、副業と発言・活動を自由にしてください」という条件を受け入れてもらって転職した。

 100%サラリーマンの働き方に限界を感じていたこととともに、「60歳を過ぎても働ける場がほしい」ということを意識した。そして、率直に言って、独立や起業に100%突き進むだけの自信がなかった。

 選択の結果、現在、サラリーマンとともに「副業」しているような、実質的に「独立」したけれどもサラリーマンの立場も残しているような働き方になっている。

 振り返ってみると、私は、才能的に凡庸なビジネスマンだったが、1ヵ所にとどまってサラリーマンとして偉くなるのにも向かなかったようだし、起業してビジネスを大きくする才覚とやる気がなかった。ここまでの職業人生をうまくやったとも、失敗したとも思っていないが、「自分で自分のことを考えて選択してきた」という気持ちはある。仕事の自己決定にはある程度成功してきただろうか。

 世の中の多数派ではないかもしれないが、読者の中には筆者と似たマインドセットをお持ちの方がいらっしゃるのではないか。「手本」にはなるべくもないが、「参考」くらいになると嬉しい。

 もちろん、世の中的には、「起業」に向いた気性の人が増えて事業を起こすことに積極的にチャレンジしてくれると、経済がより活性化して望ましいのかもしれない。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)

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