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地方銀行買収やリテール再開の可能性はない 米金融大手シティグループ日本代表に聞く

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/01/11 07:40 山田 徹也
「日本市場にはまだポテンシャルがある」と語る、シティグループ日本代表のリー・ウェイト氏(撮影:梅谷秀司) © 東洋経済オンライン 「日本市場にはまだポテンシャルがある」と語る、シティグループ日本代表のリー・ウェイト氏(撮影:梅谷秀司)

アメリカの金融大手・シティグループが日本市場で攻勢をかけようとしている。2015年にリテール部門を三井住友フィナンシャルグループに売却し、法人向けビジネスに特化したが、日本企業の活発な活動を背景に、今後も意欲的なビジネス拡大を模索している。2018年8月にはシティ本社のマイケル・コルバットCEOの「側近」であるリー・ウェイト氏が日本代表に就任。日本の金融市場の発展可能性と同社の今後の戦略について聞いた。

フィンテック企業の脅威はゆっくりと

 ――ウェイト代表は、シティ本体のマイケル・コルバットCEOの側近の1人です。現在、シティをはじめとした大手金融機関が直面している危機とは何でしょう。やはり、アマゾンやグーグルといった異業種のディスラプター(破壊者)を強く意識しているのでしょうか。

 確かに、ある程度の危機感を持っているが、それが危機的な状況につながるような環境ではないと思っている。短中期的には、彼らと直接競合するというより、パートナーシップを通じての展開になると思う。

 われわれは銀行であり、非常に厳しい規制の下に置かれ、非常に大きなバランスシート上のコミットメントも抱えている。現在台頭しつつあるフィンテック企業は、こういう厳しい資本や規制に縛られたくないと思う。彼らとわれわれ銀行がパートナーを組むという形で当面進んでいくと思う。

 ――シティグループがその典型だと思いますが、銀行の歴史を振り返ると、コンシューマー部門と商業銀行部門、投資銀行部門のすべての機能を持ち、メガバンク化してきました。今後、メガバンク化した金融のあり方が変わっていく可能性はあるのでしょうか。

 それはよくわからない。コンシューマー部門も商業銀行、投資銀行の部門も、それぞれ特有の顧客ベースを持っており、顧客に合ったニーズを提供している。このような形でセグメント分けされた構造自体は良いものだと思っており、変わる必要はないと思う。

 ただ、フィンテック企業の脅威は徐々に起きてくるだろう。決済業務ではフィンテック企業が台頭し、かなり競争が激しくなっている。一方、商業銀行部門はそこまでいっておらず、投資銀行部門となると、まだ全然。もう少し時間がかかるだろう。

 ――シティグループのデジタル戦略として、どのくらいの金額を投じているのですか。また、その成果は上がっているのでしょうか。

 総額でテクノロジー関連の投資額は年間80億ドルくらいある。これは今後も変わらないと思うが、総経費の2割程度だ。それとは別に、シティベンチャーズという組織があり、サンフランシスコに拠点を設けている。金融サービスセクターで新しく台頭してきているテクノロジー企業を研究し、多くの場合、出資もしている。

 目的は必ずしも利益をあげるということではなく、どんなテクノロジーが起きており、社内で使える可能性があるのか、検討することだ。イスラエルが中心だが、テクノロジーラボを設け、インキュベーター的な活動もしている。

他社のシェアを奪う必要がある

 ――日本代表の就任から5カ月が経ちました。そもそもどんなミッションを持って、代表に就任されたのでしょうか。

 日本におけるビジネスは好調だが、まだ日本におけるシティのビジネスは拡大できる。上司から「この数字はアグレッシブすぎるのではないか」と言われるほど、かなりアグレッシブな目標を立てた。

 ただ、グローバルでもそうだが、日本でもレベニュープール(獲得しうる収益増額)自体がここ数年間、伸びていない。株式はほぼフラット(横ばい)。債券に関してはここ数年、パイ自体が減っている。私が言うアグレッシブな目標を達成するには、他社のシェアを奪う必要がある。

 ――具体的にどの程度の数値目標を掲げているのでしょう。

 これまで日本のビジネスは2ケタの伸びを記録してきた。売り上げの伸びだけでなく、経費も削減したので、EBITDAマージンが過去4年間、伸びている。目標としてもこの道筋を今後も継続する。

 私どもはいろいろなビジネスラインを持っているが、1~3位でない、圏外のビジネスもたくさんある。たとえば、現在5位のビジネスを4位に上げたら、どのくらいのレベニューになるか、という分析をすべての部門で行うと、だいたい1億ドル、売り上げが増える計算になる。順位を1つ上げるだけで、これだけの数字になるので、これはかなり現実的なターゲットだと思う。

 ――海外の企業が日本に投資したり、ビジネスを展開する、いわゆる「アウト-イン」の流れはどの程度ポテンシャルがあるのでしょうか。

 海外企業が日本企業を買収する関心が増えており、実際に引き合いも増えてきている。その理由は、日本でもアクティビストの投資家が増えていること、日本企業のバランスシートの質が改善していること、株式の持ち合いが減っていること、コーポレートガバナンスが改善していること。こうしたことで、日本企業の魅力が増してきている。

 全体的に、多くの日本企業は流動性が潤沢で、バランスシートも健全なので、どちらかと言えば、売り手というより買い手になるほうが多いと思う。ただ、コングロマリットのような企業だと、資産の一部を売却する事例も出てくると思うので、このあたりを興味深く見守っていきたい。

地方銀行を買うことはない

 ――シティグループは主要国のビジネスラインとして、リテールと法人部門を展開しています。日本は法人ビジネス1本ですが、今後このビジネスラインが変わる可能性はあるのでしょうか。

 かつてシティは世界57カ国で、われわれがコンシューマービジネスと呼ぶリテールビジネスを行っていた。それが現在はアメリカやメキシコ、アジアの12カ国など計19カ国で展開している。私たちが学んだ教訓は、コンシューマービジネスで成功するためにはかなりの規模が必要だということ。規模がかなり大きくないと、コストが高すぎて利益が出ない。したがって、コンシューマービジネスは、規模を十分に獲得できる市場に集中して展開している。

 いったんコンシューマービジネスから手を引いてしまうと、一から立て直すのはなかなか難しい。で、質問に答えると、現在のビジネスのストラクチャーを近々変えることはないと思う。今展開している地域のコンシューマービジネスは非常にうまくいっており、新たにそれ以外の地域でコンシューマービジネスを立ち上げることは、今のところはおそらくない。

 ――日本の地方銀行は低金利や競争激化のせいで、経営的に非常に苦しい状況にあります。地銀買収の考えはありませんか。仮にそういう話が来たら、検討するのでしょうか。

 私たちのビジネスはあくまで、大企業や機関投資家など、大きな顧客にサービスを提供することだ。それに対し、日本の地方銀行の最終顧客は、やはりリテールが中心になる。確かに日本の地銀は低金利の環境の中で、なかなか十分なリターンを上げられず、苦しんでいることは私も理解している。しかし、ビジネスがあまりにも異なるので、(地銀を)買わないか、と言われても、おそらく買わないと思う。

 ――リテールに近い分野として、たとえばウェルスマネジメント・ビジネスの展開も考えうると思います。

 会社によってプライベートバンキング(PB)と呼んでいる。シティはさまざまな市場でPBを展開しているが、日本ではやっていない。

 おそらく短期的にはPBを日本で展開することはないと思う。理由は2つあって、1つはかなり大変なビジネスであること。専門性も必要であり、日本では大手の信託銀行がこのビジネスを展開していて、われわれが優良なサービスを提供できるかどうかわからない。もう1つの理由は、大手の信託銀行はシティの顧客でもあり、顧客と競合することはなかなか難しい。

 ――日本の金融機関でも起きていますが、優秀な学生はウォールストリートの大手金融機関ではなく、テクノロジー企業へ行きたがると聞きます。シティはどんな人事戦略を持っているのでしょうか。

 おっしゃるとおり。ただ、優秀な大学卒業者がグーグルやアマゾンといったIT大手に行きたがるという現象は、今に始まった話ではない。以前は起業が流行したし、プライベートエクイティやヘッジファンド、コンサルティング会社の人気があった時期もあった。トレンドはつねにあり、5年後、どうなっているかわからない。

 よくそういう質問を受けるが、私はまったく心配していない。シティのニューヨークのオフィスで、フルタイムの600のポジションの募集に対し、6万のレジュメが毎年送られてくる。ただ、私どものビジネスで必要とされるスキルセットの種類は少し変わってきている。たとえば、トレーディングの世界でコンピューターサイエンスの知識が必要になっている。

シャドーバンク発危機に警戒感

 ――リーマンショック後、10年近く景気拡大が続いています。いずれ別の形のショックや深刻な景気後退がやってくると思いますが、次のショックはどのような姿でやってくると思いますか。

 すべてはサイクルなので、おそらくそういうショックはいつか起こると思う。ただ、次にショックが起きても、おそらくそのインパクトは前回ほどではないだろう。それは、10年前と比べ、銀行の状況が大きく改善しているからだ。

 リーマンショック後にドット・フランク法の規制が導入され、銀行はリスクの高いビジネスができなくなった。バランスシートのレバレッジを大幅にかけることもできなくなった。資本も相当積むことが求められ、ショックには十分耐えられる状況ができている。

 では、何が源泉になって危機が起きるかだが、1つはサイバー攻撃。2つ目は各国中央銀行が行っている量的緩和が解消されるときだ。世の中にただの食事はない、というように、必ず量的緩和のツケはある。いま起きている、その1つの現象が、多くのマネーが行き場を失い、株式市場に流れ込んで、株式のバリエーションが高くなっていることだ。

 3つ目がシャドーバンキング。規制がされていないが、非常に巨大化している。ここで何かが起きると、それが何か大きなショックのきっかけになると思う。

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