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大塚家具を創業家の手で建て直すことは、本当に不可能か

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/08/10 06:00 鈴木貴博
大塚家具を創業家の手で建て直すことは、本当に不可能か: 大塚家具の経営が崖っぷちまで来ている。一時勢いに乗っていた大塚久美子社長をはじめ、創業家の人々が会社を蘇らせることは、もはやできないのか Photo:Pasya/AFLO © 画像提供元 大塚家具の経営が崖っぷちまで来ている。一時勢いに乗っていた大塚久美子社長をはじめ、創業家の人々が会社を蘇らせることは、もはやできないのか Photo:Pasya/AFLO

崖っぷちの大塚家具「身売り報道」否定に見る本当の深刻

 大塚家具の経営が崖っぷちまで来ている。マスコミを賑わす身売り報道に関して、大塚家具の広報は連日のように「本日の一部報道について」という声明を発表し、「当社が発表したものではなく、そのような事実はございません」と述べている。

 広報がそう発表するのは当然のことだ。それが救済であれ、身売りであれ、対等合併であれ、上場企業の資本提携というものは常に水面下で行われるものだからだ。

 しかし、報じられるニュースをプロが見れば、大塚家具の経営権を創業家が手放さなければならない状況に来ていることをうかがわせる、様々な状況証拠を見て取ることができる。今回はその「プロならわかる手がかり」がどのようなものか、まとめてみたい。

 今年2月8日に行われた2017年度の決算報告の場では、まだ大塚家具が身売りするような気配はなかった。このときの決算発表では、2016年から売上高をさらに53億円減らし、マイナス51億円の営業赤字を計上したにもかかわらず、経営陣は強気だった。

 決算説明資料から情報を拾い上げると、2018年は好転するという大塚家具の主張にはポイントが3つあって、だから大丈夫であるという主張だった。それは次のようなものだ。

(1)営業損失が2年続いたがすでにボトムは過ぎ、計画では2018年の売上高は456億円に回復し、営業利益も2億円の黒字化に向かう。

(2)無借金経営の上に、様々な金融機関から50億円のコミットライン(融資枠)を用意してもらっているため、資金繰りは問題ない。

(3)力を入れてきた新領域の売り上げが2018年から本格化する。特に毎年20億円程度しかなかった建装(コントラクト)事業の売り上げは、東京五輪に向けたホテル需要が旺盛なことから、2018年には3倍の61億円に増える。

 ところが、それから3ヵ月後の5月11日に行われた第一四半期決算の報告では、状況は事業計画のようには好転していないことが報告された。売上高は前年度の同時期からさらにマイナス10%に落ち込み、営業損失も第一四半期だけでマイナス14億円を計上するなど、3ヵ月前に主張した「営業損失は2017年度上期がボトム」とは言い切れないことを、四半期決算の数字はうかがわせていた。

投資有価証券や固定資産の売却は金融機関からの要請によるものか

 今にして振り返ると、この段階で目に止まるポイントが1つある。この第一四半期は営業損失が出たが、最終損益は1億円の黒字なのだ。理由は投資有価証券や固定資産を売却することで、15億円近くの特別利益を出したからだ。

 会社が持っている土地などの固定資産を売却すれば、一時的に売却益は出る。しかし、なぜここでそれを行ったのか。金融機関から要請されたからではないのか、ということである。

 複数の金融機関から総額50億円のコミットメントライン契約を締結している、と言っても、そのような契約には当然、一定の財務制限条項が付いている。たとえば銀行にとっては、融資先の決算が黒字か赤字かでは天と地ほど違う。だから支援を継続するためにも「最終損益は黒字にしてもらえないか」という要請は、当然のように行われただろう。

 しかし、本質的には特別利益など一時的なものだ。構造的に業績が戻っていないことで、第二四半期の業績公表前、今週8月7日に大塚家具は業績予想を大幅に下方修正せざるを得なくなった。それによれば、足もとの売り上げはさらに落ち込んでおり、2018年上期の営業損失は約33億円までマイナス幅が広がるという。

 そして同時に、2018年年間で見ても状況は改善しない見込みだと、この時点で公表した。売上高は当初計画よりも80億円少ない約376億円に減る見込みで、営業損失もマイナス51億円と前年度とまったく同じレベルの損失に落ち込むというわけだ。つまり売上規模が年々縮小する一方、営業赤字が毎年50億円レベルで垂れ流されているというわけだ。

 いくら金融機関からの50億円のコミットメントラインがあると言っても、1年間の損失でその金額を上回ってしまう状況であれば、融資は実行できない。だから当然のように、金融機関は身売りを勧めることになる。メディアの報道について大塚家具が「当社が発表したものではない」と言えばそれは事実だろうが、「そのような事実はございません」という発表は、本当ではないのかもしれない。

 むしろ8月7日の業績予想の下方修正の際に、一緒に発表された2つの情報から、裏で行われているであろうことがちらついてしまう。その2つとは、(1)棚卸資産を見直した結果、棚卸資産評価損約10億円を計上することにした、(2)追加で投資有価証券を約3億円強売却し特別利益を計上することにした、ということだ。

 棚卸資産の見直しというのは、こういうことだ。たとえば、在庫の高級テーブルが乾燥してひびが入っていたとする。簿価が30万円だとしても、ひびが入っていたらその価格では売れない。だからその在庫の評価額を3万円に見直す。そうすると差額の27万円が棚卸資産評価損になる。

水面下の売却交渉が垣間見える会社発表とは

 こういう再評価を行うことで「経営の透明度がより高まった」と説明しているのだが、ポイントはなぜこのタイミングで経営の透明度を高めなければいけないのかということが、情報としては重要だ。それは通常は、会社を身売りしなければならないときに行うことである。そうしないと買い手の会社が、本当の資産価値を判断できないからだ。だから水面下で売却交渉が行われていることが、この一行の情報から見てとれるというわけだ。

 第一四半期から続いている、特別利益の捻出も同じだ。事業に関係のない遊休資産や投資中の株式などは、オーナー企業の場合、オーナーの個人的な投資に絡んだものが少なくない。企業を買収する場合、そうした個人投資をきれいにしてほしいと買い手の側は要求するものだ。

 コミットラインがもうおそらく機能しないであろうこの期に及んで、まだ特別利益を計上することは、会社の資産内容を事業に関係するものだけに絞って身ぎれいにすることを示唆している。

 要するに状況証拠的には、大塚家具は経営権を手放す準備に入っていることをうかがわせる兆候だらけなのである。

 それにしても関係者にとって悲しいのは、報道されている限り、大塚家具の買収に手を挙げる小売業者が出ていないことだ。年間400億円近くの売り上げがあり、高級家具の在庫も約130億円ほどあり、現金も10億円持っている企業を再建しようという小売業が、なぜいないのか。最大の理由は、これだけリストラを行ってもまだ年間50億円の赤字が出続けているという点に、尽きるのではないか。

 企業というものは、本質的には黒字が出なければ経営する意味がない。企業を再生すると言っても、いまから50億円分の大赤字を掃除して、それでようやくスタート地点にたどり着くという「買収案件」では、これに手を挙げる経営者が業界内からは出てこないのは、ある意味、当たり前だ。

勝久氏の再登板なら大塚家具は蘇るのか

 とはいえ、論理的には1つだけ、現状の大塚家具を元の軌道に戻せる経営者がいる。創業家で大塚家具を追われた大塚勝久前社長だ。創業者として大塚家具を建て直す考えはないのだろうか。

 ご本人の気持ちはわからないが、本来、そのようなことをする必要は大塚勝久氏にはないだろう。なぜなら勝久氏は、すでに新たなライバル企業「匠大塚」を創業しているからだ。わざわざ大塚家具の苦境を支援しなくても、今自分が専念している土俵で成功すれば、それで周囲を見返すことができる。自分のつくりたい未来も自由に設計できる。

 そして彼を追い出したのは、大塚久美子現社長だけではない。かつての「お家騒動」には、金融機関も一緒に手を染めてきた。つまり娘が父親と袂を分かった段階で、明るい未来は大塚家具にとって、潰えていたのかもしれない。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)

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