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富士通 全社員3.5万人テレワーク化作戦

プレジデントオンライン のロゴ プレジデントオンライン 2018/09/12 09:15 田中 達也

これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、富士通の田中達也社長のインタビューをお届けしよう――。

「優秀な人材を自分の部署で抱え込むな」

かつて国内パソコン市場を席巻していた富士通だが、現在では理化学研究所と共同開発した世界最高峰のスパコン「京」の技術をAIに応用するなど次世代技術の開発を急ぐ。

社内では、約3万5000人の全社員を対象にテレワーク(オフィス以外での勤務)を2017年4月から導入しており、国内では最大規模となる。上司の許可があれば、何度でも利用できる。

「ITを活用して働き方改革に挑むのは日本を代表するIT企業の責務だ」と田中達也社長は言う。

IT産業の土俵が加速度的なスピードで変わりつつある中、米国のIT大手との競争も激しさを増してきている。これから必要とされる人材とは。

──世の中が目まぐるしく変化する中、どんな人材を求めますか?

まず富士通という会社と、その中での自分を客観的に見られることが重要です。これだけ世の中の変化が激しいと自分の中に軸を持ちながら、客観的に自分を見られる力が必要です。もう1つは変革意欲のある人。現状に甘んじず、今日より明日をよくするために何をすべきかを考えられるか。そのためにも自分を客観視できる必要があるわけです。

また、当社は技術主体の会社でよりよいものをつくりたいと考えている人材は多いですが、それをビジネスモデルに仕立てていくという点が相対的に弱い。技術を客観的に見て、あるいは複数の技術を統合し、自社だけでなくパートナー企業と一緒に世の中を変革するビジネスモデルを考案していける人材は当社も含め、日本企業にとって必要な人材だと思います。

──そうした人材をどう育成しますか。

社内にとどまらず、ダイバーシティな環境でさまざまな経験を積ませていきます。グループ会社や海外駐在、グループ外への出向、あるいは共同プロジェクトの中に身を置いて、外部の人たちと意見をぶつけ合うような経験をすることが重要です。管理職には「優秀な人材を自分の部署で抱え込むな」と言っています。

私は40代に入ってから中国駐在を経験しました。もともと国内営業出身で最初は鉄鋼会社を担当し、次に自分から外資の牙城の市場を担当したいと希望し、競合のシステムを置き換える部門に。非常に苦しみましたが鍛えられました。そこで次は海外をやってみたいとお願いしたのですが、これはなかなか実現できなかった。中国駐在の辞令が出たときは非常に嬉しかったですね。自分の枠を超えてチャレンジしているときは元気が出てきます。

理想の上司は「人間的な隙を見せながらも信頼される人」

──中国での駐在経験のどんな点がいま役に立っていますか。

多様な人材でチームをつくるため、徹底したコミュニケーションに取り組んだことです。当社の場合、営業やSE、メンテナンス等のメンバーがチームをつくりお客様に対応します。そこには日本人と中国人が混在し、中国人でも日本語を話せる人もいれば英語だけの人もいました。そういう環境なので、私は責任者として徹底的なコミュニケーションをとることを心掛けました。

四半期ごとに戦略会議を朝から晩まで全員参加で開催し、終わってからも懇親会で引き続き話をしました。お互いに意見がぶつかり合って喧嘩のようにもなりましたが、多様な人たちがわかり合い、みんなでチームをつくるためにはそれくらいの喧々諤々の議論が必要でした。

この会社は最初、100人くらいの陣容でしたが、7年後に帰任するときには500~600人の規模になりました。これからはグローバルに連携してビジネスが進んでいきますから、多様な人材をマネジメントする経験が非常に重要になってきます。

──最近の傾向として若手はあまり本音を語らないと言われます。そういう人たちをどうリードしますか。

大きな組織の中にいるとその傾向が出やすいので、大組織の1つの歯車的な仕事ではなく何らかのプロジェクトを立ち上げたりして責任者を任せ、リーダーとしてまとめ上げてもらう。そうすれば自然に自分の意見を出していくようになります。

大きな組織の中で任せても、優秀な人はいろいろなしがらみの中で周りを慮ってしまいます。それはよくないと言っても、現実問題として周囲に配慮しないで仕事を進めることは難しい。しかし活躍単位を小さくすると当然、自分の意見を出し、通していかないとチームを率いることができません。自然に自分の意見を出すチャンスを与えていくことが大切です。

──これまで自分を育ててくれたと思える上司はいましたか。

入社して最初の上司は非常に人間的な魅力に溢れた人で、自分にはなかったものを態度で示してくれました。

お客様とゴルフに行ったはずの翌日、私がお客様を訪問したら「最初のハーフに遅れてこなかった」と怒られたこともありました。どうやら前日飲み過ぎたようです。でも連絡してお詫びに上司がやって来ると、お客様は「いいよ、そんなときもあるでしょう。じゃあ一杯行きますか」と。

私はもともと理系大学出身でSEになるものと思っていました。営業に配属されるとは思ってもいませんでしたから、最初は自信がありませんでした。でも人間的な隙を見せながらもしっかり信頼されている上司の姿から、営業として必要な能力を教えてもらうとともに、「20年後、ああなっていたい」と思いました。

役職に応じた社員の「勉強時間」が急上昇

──田中社長は「人を幸せにする技術を追求する」というお話をされています。そうした考えの有無も求める人材の要件でしょうか。

AIにしてもそうですが、技術は悪用されることもあります。会社全体の方針として、悪用される形での技術開発はしないしサービスも提供しない。その思いの表現として、人を幸せにする技術を開発する会社であると言っています。

企業が顧客に価値を提供し対価を得ようとするとき、それは社会に対して価値があるのかを考えて提案しなければなりません。そんな人を幸せにする方法を考えられる人と一緒に仕事をしたいと願っています。

▼QUESTION

1 生年月日、出生地

1956年9月11日、福岡県飯塚市

2 出身高校、出身大学学部

福岡県立嘉穂高校、東京理科大学理工学部

3 座右の銘

継続は力なり

4 座右の書

『決断の本質』マイケル・A・ロベルト

5 尊敬する人

6 私の健康法

富士通 全社員3.5万人テレワーク化作戦: 富士通 社長 田中達也氏 © PRESIDENT 富士通 社長 田中達也氏

ゴルフではカートに乗らず必ず歩く田中達也(たなか・たつや)

富士通 社長

1980年、入社。営業部門を歩み、2014年、執行役員兼産業ビジネス本部長、15年、執行役員常務兼Asiaリージョン長、執行役員副社長などを経て、同年6月から現職。(構成=宮内 健 撮影=岡村智明)

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