古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

就活生6割以上が経験、「だまし面接」の実態 面談を名目に呼び出す実質的な採用活動

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/12/06 07:30 佃 光博
6月の選考解禁より前に学生を「面談」名目で呼び出す企業は多い(写真:cba / PIXTA) © 東洋経済オンライン 6月の選考解禁より前に学生を「面談」名目で呼び出す企業は多い(写真:cba / PIXTA)

 採用スケジュールの変更は採用手法を変えていく。この10年を振り返ってみると、2016年卒採用に大きな変更があった。採用広報の解禁が12月から3月へと後ろ倒しにされ、選考も8月になった。2017年卒採用で選考スタートは6月になったが、3年生の12月に採用広報が解禁され、4月には内々定が出ていた2015年卒採用以前と比べると、採用広報・選考時期は大きく異なっている。

 そこから広まった採用手法がふたつある。一つは、11月22日の配信記事「本当にインターンシップは就活に有利なのか」で報告した3年夏から始まるインターンシップ。そしてもう一つが「だまし面接」だ。2019年卒業予定の大学生・大学院生を対象に2018年6月に行った「楽天みん就」との共同調査結果から、その実態を検証してみたい。

面談の名目で呼び出す「事実上の面接」

 「だまし面接」とは、学生を面接ではない別の名目で呼び出し、実質的な選考を行うことを指している。6月の選考解禁よりも前に、ルール違反の面接はしていないと主張したい大手企業でよく行われている。呼び出す名目は、「面談」が圧倒的に多い。

 面接は、雇用主(企業)が応募者(学生)の資質や意欲を見極める場だ。学生は自分自身をアピールし、志望意欲を明示する。学生が採用基準を満たしていれば内定を前提としたステップに進む。

 面談は面接とは違う。雇用と応募を前提にせずに、企業と学生が対等の立場で互いの理解を深めるのが面談だ。企業は学生に自社の魅力をアピールし、自社に応募してもらい、選考ステップに入ってもらうことを目的とする。

 面談はキャリア採用でしばしば行われる。社員の知人を紹介してもらうリファラル採用、あるいは企業が求職者にアプローチするダイレクトソーシングでは、応募者側にまだ応募意欲が形成されておらず、面談という、いわば応募意欲を形成しつつ、お互いの資質を見極める見合いの場が有効だからだ。

 しかし、新卒採用で行われている面談は見合いの場ではなく、選考の意味合いを持つものが多い。本稿ではこれを「だまし面接」と呼んでいる。ただし、新卒採用でも、リファラル採用やダイレクトソーシングが徐々に増えてきており、キャリア採用と同様に、正式応募前のお見合いの場としての面談もあるので、面談がすべて「だまし面接」というわけではない。

 「面接とは言われなかったが、実質的な『面接』だったと思えることはありましたか」という設問に対し、文理ともに6割以上の学生が「ある」と回答している。文系65%、理系61%と文系が多い。

文系の旧帝大・早慶クラスに限ると8割以上が経験

 大学クラスで比較してみると、上位校ほど多い。文系の旧帝大クラスは87%、早慶クラスは81%だから、ほとんどの学生がだまし面接を経験していることになる。10ポイントほど下がるが、上位国公立大クラスの70%、上位私大クラスの73%も多いと言える。ただし、それ以外の大学では半数程度になる。その他国公立大学44%、中堅私立大クラス55%、その他私立大学で54%だ。

 理系では、旧帝大クラスからその他私立大学までがきれいに並んでいる。旧帝大クラス74%、早慶クラス71%、上位国公立大クラス64%、上位私大クラス64%、その他国公立大学54%、中堅私大クラス52%、その他私立大学47%といった具合である。

 この数字を見れば一目瞭然。ターゲットとする上位校の学生に対して積極的に働きかけている。もちろんすべてが選考を前提とした「だまし面接」ではないかもしれないし、企業に聞けば、目的は相互理解や親睦と言うかもしれない。ただ、企業の本意が何であれ、学生は「実質的な面接」と感じている。

 学生を呼び出す名目だが、圧倒的に多いのは「面談」だ。単なる面談で会うのは人事だろうが、人事以外に会うこともかなりある。「リクルーター面談」、「社員との面談」、「インターン参加者面談」などのパターンがある。中には「部長面談」や「最終面談」という例もある。ここまでくると、選考ではないとの言い逃れは難しいだろう。

 「マッチング面談」、「ジョブマッチング面談」と、互いの相性を見るためだと言わんばかりの面談もあるか、これも明らかな選考だ。その他に「ES提出面談」、「就職面談会」、「事前面談会」、「個別面談」などがあるが、いずれも選考を意味している。「模擬面接」も経験している学生が多いが、企業の下心が透けて見える。

 その他に「座談会」、「マッチングセミナー」や「キャリアディスカッション」などもあるが、言葉が単調であまり中身が見えてこない。文系の場合は、会って話す内容が決まっておらず、会うこと自体が目的なのかもしれない。つまり、親しみや理解を深めよう、という意図だ。

 文系の呼び出し名目は単調だが、理系になると言葉が多くなり、中身が見えてくる。「研究所見学会」や「工場見学会」は、理系学生なら見ておきたいだろう。「技術懇親会」、「役員懇親会」、「先輩社員との面談」、「分野別説明会」、「ジョブマッチング」も、どのような職種がどのような技術領域を扱うのかを知ることができそうだ。

 「ポスターセッション体験」というものもあった。文系には聞き慣れない言葉かもしれないが、学術的な研究成果をポスターに掲示して、学会などで発表する方法だ。

 「選考会」や「適性アドバイス会」と言う名前で呼び出された理系学生もいる。「キャリアマッチング面談」や「マッチング面談」は、文系学生でも出てくる言葉だが、理系のほうが生々しく、選考臭が強い。

上位校相手ほど「だまし面接」が常態化

 今回の調査結果をまとめてみると、上位校の学生に対しては、事前に呼び出す「だまし面接」は常態化している。特に旧帝大クラスと早慶クラスで目立つ。

 単なる面談なら、企業と学生が素顔で出会う場、という意味もあるかもしれない。しかし、「模擬面接」や「ES提出面談」、「事前面談」は、明らかな選考プロセスだ。ただし、その中身を見ると、文系の場合は内容があいまいである。文系採用では大学での専攻をほぼ無視しているが、そんな曖昧さが面談にも反映されているように見える。

 理系の場合は呼び出しの名目が明確で中身が分かる。研究所や工場の見学は、学生にとって有益だし、企業にとっても選考プロセスと言える。そしてかなり多くの製造業が実施している。

 さて、新卒採用の景色は、変わり始めている。3月採用広報開始、6月採用選考開始というスケジュールは継続されるが、2021年卒採用から、経団連が旗振り役を降りたことは、日本の新卒採用の転換点だ。

 2020年卒採用で、実質的な選考スケジュールのさらなる前倒しは予想されるものの、採用手法自体に大きな変化があるとは思わない。だが、新卒採用が、現在のままで推移するとも思えない。「だまし面接」やインターンシップのあり方も変わっていくはずだ。

東洋経済オンラインの関連記事

東洋経済オンライン
東洋経済オンライン
image beaconimage beaconimage beacon