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広告なしで急成長、「ボタニスト」勝利の方程式 ネット集中型のマーケティング戦略が成功

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2019/03/22 06:50 若泉 もえな
マイボタニストを手にする大西洋平社長。これがメディア初露出となる(撮影:今祥雄) © 東洋経済オンライン マイボタニストを手にする大西洋平社長。これがメディア初露出となる(撮影:今祥雄)

 20代から30代の女性を中心に人気を集める、シャンプーなどヘアケアブランドの「BOTANIST(ボタニスト)」。

 そのボタニストから今春、パーソナライズシャンプーの「My BOTANIST(マイボタニスト)」が発売される。パーソナライズシャンプーとは、人それぞれに合ったシャンプーのこと。専用サイトを通じていくつかの質問に答えると、その人の髪質に合ったシャンプーを購入することができる。

 マイボタニストは3月14日から予約を開始し、4月22日以降に順次発送する予定だ。価格はシャンプー、コンディショナーともに4980円(税抜き)とやや高め。ただ、専用のカスタマーセンターで相談できるなど、特徴のある製品になっている。

国内シャンプー市場は縮小トレンド

 国内のシャンプー市場は1612億円(対前年比0.4%減)と横ばい傾向にあり、コンディショナーは455億円(同3.3%減)と縮小トレンドにある(数字はいずれも2017年、富士経済調べ)。

 その中で、ボタニストは2015年の発売以降、右肩上がりで成長を続けてきた。2018年6月時点で、シリーズ累計の販売本数が5000万本を突破。メーカーや商品別の購買動向や属性別の購買者などを分析できる高度分析ツール「Eagle Eye」によると、ボタニストは全国のドラッグストアのヘアケア分野の売り上げでシェア3位に食い込む。製品は自社企画したものをOEM供給で受けている。

 実際にドラッグストアのシャンプー売り場に足を運んでみると、透明なボトルに英字体でボタニストの名が書かれたシャンプーやコンディショナーがずらりと並んでいることに気づく。

 実は、ボタニストのブランドを展開しているのは大手企業ではない。「I-ne(アイエヌイー)」という大阪の心斎橋に本社を構えるベンチャー企業だ。アイエヌイーは立命館大学在籍中に起業した経験を持つ大西洋平社長によって2007年に設立された。同社は現在、eコマース、ドラッグストアなどへの卸、そして海外展開を軸に事業を運営している。

 アイエヌイーの大きな特徴の1つが、マス広告を打たないことだ。ヘアケア製品を販売する大手企業の場合、テレビCMを数多く打ち、売り上げ増へとつなげているケースがほとんど。だが、アイエヌイーには、ボタニストの発売当時にマス広告を打てるほどの資金がなかった。

 そこで、当初は楽天市場経由の販売に限定。楽天市場のボタニストの商品ページに対し、ABテスト(WebにAとBの2パターンを用意し、どちらが効果的かを実験する手法)をきめ細かく実施した。さらに、インスタグラムやフェイスブックなどSNSサイトにも、消費者に対して影響力のある人物(インフルエンサー)とパートナーシップを結び、そのインフルエンサーに商品を紹介してもらう戦略を展開した。

ボタニストはデジタル広告の勝者

 このネットに集中したマーケティング戦略で、顧客は順調に拡大。2016年からはドラッグストアなどリアルの小売店へも本格的に販路を開拓していった。ブランド戦略に詳しい中央大学大学院・戦略経営研究科の田中洋教授は、「ボタニストはデジタル広告を展開して成功したブランド事例の1つだ」と語る。

 ボタニストが牽引し、アイエヌイーの売上高は右肩上がりで増えている。売上高は2016年に100億円の大台を突破。現在売上高の約6割をボタニストが占めている。

 シャンプーやコンディショナーの国内市場は依然として厳しいが、新製品の拡販で乗り切る方針だ。3月13日のマイボタニスト説明会の席上、アイエヌイーの大西社長は「市場が厳しく、顧客ニーズもどんどん多様化している中で、今後のカギとなるのが『パーソナライズ化』だ」と強調した。

 他方で、ボタニスト以外の成長軸も模索中だ。同社でボタニストに次ぐ第2の柱と考えているのが、「SALONIA(サロニア)」というヘアアイロン。海外売り上げでは、一時期ボタニストを上回ったこともある。「サロニアからも、さまざまな商材をどんどん出していきたい」と、大西社長は意気込む。

AIデータ活用した商品開発も

 AIデータを活用した商品開発にも注力する。アイエヌイーは昨年12月に、「KIYOKO(キヨコ)」と呼ぶAI予測システムを独自に開発したと発表した。

 キヨコは2000万以上のSNS上にあるビッグデータから、消費者がどのようなことに興味を持ち、どういったトレンドが起きているのかを把握・分析できる。大手メーカーは消費者データの分析を外部の調査会社に委託しているが、アイエヌイーはキヨコを活用し、自社内で短期間に消費者動向を把握することができるというわけだ。AI予測システムを通じて、さらなるヒット製品の投入につなげていく構えだ。

 今後は国内のみでなく、中国を中心に海外市場の開拓にも力を注ぐ。ただ、「ボタニストは口コミサイトでの評判が芳しくなかったので、購入する気にならなかった」(40代女性)との声も聞こえてくる。認知度が高まるにつれ、マーケティング戦略だけでなく、製品の質の向上も継続して図ることが求められる。

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