古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

日本の産業を死守! シャープ幹部が明かすJDIと協業の狙い

ITmedia ビジネスONLiNE のロゴ ITmedia ビジネスONLiNE 5日前 アイティメディア株式会社
© ITmedia ビジネスオンライン 提供

 シャープは、経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)に対し、ディスプレイ事業における協業を申し入れていることを明らかにした。

 シャープ 上席常務 ディスプレイデバイスカンパニー社長の桶谷大亥氏は、本誌の取材に応じ、「今こそ、日本の各メーカーの強みを生かして、『大日の丸連合』を形成し、韓国や中国をはじめとする海外勢に競争優位性を確保しなくてはならない」と訴えた。

 ジャパンディスプレイの2017年3月期連結決算は316億6400万円の赤字と、3期連続の最終赤字となった。今期も最終赤字の見通しだ。また、フリーキャッシュフローは、12年の設立以来、赤字が継続したままだ。

 今年6月に、JDIが出資しているJOLEDの社長を務めている東入來信博氏が、兼務でJDIの代表取締役会長兼CEOに就任。人員削減のほか、減損会計の適用などによる固定費削減、生産体制の再編などに取り組む構造改革を発表した。その中で、みずほ銀行、三井住友銀行、三井住友信託銀行により、1070億円の融資を得て運転資金を確保したのに加え、今後、グローバルパートナーとの出資を含む提携により、財務体質、経営体質を強化する考えを明らかにしていた。

 このグローバルパートナーに、シャープが名乗りを上げた格好だ。JDIには中国企業なども提案を行っている模様で、「グローバルパートナーとの提携は、実行が先になったとしても、17年度中には目処をつけたいと考えている」とする東入來会長兼CEOの意向もあり、水面下では協議がヒートアップしているところだ。

 シャープの桶谷氏は、「液晶パネルの協業については、独禁法の問題もあり、難しいと考えている。だが、有機ELパネルや将来のパネル技術についての協業は可能であろう。また、出資の検討や、将来的には事業統合を視野に入れた話し合いも可能だと考えている。協業や出資、事業統合においては、シャープが主導権を握らなくてもいいと考えている」と語る。

 JDIにとっては、シャープの生産設備を活用することで、パネルの量産化にも弾みがつくほか、シャープの知財や人材の活用などのメリットも生まれる。さらに鴻海(ホンハイ)グループを活用した最終商品としての「出口」も確保しやすい。

 「保有する知財も補完関係にあるものが多い。また、有機ELでは、JOLEDが進めている印刷方式、JDIが進めている蒸着方式の両方のノウハウも蓄積している。さらに、亀山工場や堺ディスプレイプロダクトなど、シャープおよび鴻海グループの生産拠点も活用できる。JDIとシャープが組むメリットは大きい」と桶谷氏は意気込む。

 シャープが、ここまでJDIとの協業に前向きな背景には、日本のディスプレイ産業の衰退への懸念がある。そして、その懸念は、これまでシャープ自らが歩んできた道と重なる。

 「1990年代には、多数の日系メーカーがディスプレイ事業に参入していたが、97年以降、日本の液晶パネル技術が、韓国、台湾、中国に流出し、一時期は約70%を誇っていた生産シェアは、現在では10%以下に縮小している。液晶パネルを使用したテレビやノートPCなどの最終商品でも、今では存在感がまったく発揮できない。また、装置メーカーや材料メーカーも、世界シェアが大きく減少している。JDIが選択を誤れば、海外に技術が流出するリスクが高まり、これと同じことが起こりかねない」(桶谷氏)

 もちろん、シャープも鴻海傘下にあることを考えれば、外資系の1社と捉えることもできるが、「2016年8月以降、鴻海傘下で再建を進めてきたシャープは、独立した企業としての経営を維持しており、鴻海からの技術流入はあっても、ディスプレイ技術はいっさい流出していない。鴻海グループには、液晶パネルの開発、生産を行うイノラックスがあるが、付加価値製品が中心となるシャープとは生産品目に差があり、技術面での協業もない。シャープの提携相手が海外パネルメーカーであれば、事業を一体化し、その結果、技術流出も想定されたが、鴻海グループでは、そうしたことが起こらず、シャープの技術は、シャープのなかにとどまっている」と桶谷氏は説明する。

 シャープは、「大日の丸連合」という言葉を使って、JDIとの協業により、ディスプレイ産業を、日本国内に残す必要性を訴えるが、この「大日の丸連合」という言葉の中には、JDIとシャープの協業だけにとどまらず、日本の装置メーカーや材料メーカー、そして、最終商品を開発するセットメーカーまでを含んだ日本企業の連合体を形成する意味が含まれている。

 「ディスプレイは、コミュニケーションの窓口として、さまざまな分野での応用が見込まれている領域。例えば、日本の基幹産業の1つである自動車が大きな転換期を迎える中で、ディスプレイ産業が貢献する領域も幅広い。日本がディスプレイ産業を失えば、日本が得意とするロボットやAI(人工知能)、クルマといった最終商品の産業育成や強化に大きな影響を与えることになる。日本の経済全体を俯瞰(ふかん)したときに、ディスプレイ技術を、海外へ移転するリスクを軽視してはいけない」と強い口調で主張する。

 JDIの東入來会長兼CEOは、経営方針発表の席上、「日本のディスプレイ会社6社が集まってできたのがこの会社。日本の底力を見せるチャンスでもある」と発言。さらに、「これがJDIにとってラストチャンス。第2の創業になる」とし、日本のディスプレイ産業の再建に意欲をみせる。

 シャープの思いは、JDIにどこまで通じるのか。この数カ月で結論が出ることになるだろう。

(大河原克行)

ITmedia ビジネスオンラインの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon