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東芝、最高益更新でも見えない「再建の道筋」 宙に浮くメモリ売却、他の事業は課題多い

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/05/16 07:30 山田 雄大
© 東洋経済オンライン

 「えー、綱川でございます」

 5月15日の決算発表の席で、東芝の綱川智社長はいつものように淡々と切り出した。ただ、心なしか徐々に声のトーンが力強くなっていった。「これまでステークホルダーの皆様には大変ご心配をおかけしましたが、危機的な財務状況は解消することができました」。

 2018年3月期は売上高3兆9475億円(メモリ事業の非継続化に伴う遡及修正後の前年同期比2.4%減)、営業利益640億円(同21.9%減)、純利益8040億円(前年は9656億円の赤字)。純利益はなんと過去最高だった。

 昨年12月に実施した6000億円の第三者割当増資と合わせると、株主資本は2018年3月末で7831億円のプラスとなり、同比率は17.6%となった。しかも、子会社の東芝メモリの2兆円での売却はまだ完了していない状態で、である。

利益を引き上げた”非継続事業”

 テクニカルな要素が多すぎて、東芝の業績は非常にわかりにくい。大まかにいえば、メモリ以外の事業は利益率がほぼ低位横ばい。営業減益となったのは、前年度(2017年3月期)に行っていた賞与減額などの緊急対策を縮小したことが最大の要因だ。

 それでも純利益が膨らんだのは、非継続事業の利益拡大と税金負担の軽減によるものだ。

 米国会計基準では、非継続事業の利益は純利益だけに影響する。非継続の扱いとなったメモリ事業は、スマートフォンやデータセンター向けの伸びと三次元化による原価低減で大きく利益を伸ばした。メモリ事業の税引き前利益は4657億円に達した。

 加えて、子会社だった米原子力会社ウエスチングハウス(WH)向けの債権売却益(税引き前利益)が2562億円と貢献した。WHは経営破綻に伴い前期に損失計上していた(簿価を落としていた)ため、債権の損切りが会計上の利益となってはね返った。WHの再建売却益も非継続事業だ。

 そしてそれらの税金が大幅圧縮された。3月末にWHの再生計画が米国司法で認められたことと、WH向け債権を売却したことで、前期までの会計上の損失の一定額が税務上の損失として扱われるようになったためだ。これも純利益を大きく押し上げる要因となった。

 つまり、最高益といってもあまり威張れる内容ではないのだ。

 2019年3月期の会社予想は売上高3兆6000億円(前期比8.8%減)、営業利益700億円(同9.3%増)。東芝メモリの売却益9700億円を計上する前提で、純利益は1兆0700億円と連続最高益を見込む。このシナリオに沿えば、2019年3月末の株主資本は1兆8700億円となり、同比率は42.5%と財務体質の優等生になる。

 もっとも肝心の東芝メモリの売却完了時期が見えてこない。

 昨年9月の譲渡契約締結から各国で独占禁止法の審査をクリアしてきた。しかし中国当局の認可だけが下りていない状況が続いている。「売却方針に変更はない」と車谷暢昭会長は強調したが、売却の行方は霧がかかっている。

 「中国当局からは具体的な問題点の指摘は何もなく、手を打とうにも打てない」(関係者)。中国の制度上、審査は5月28日が一定の期限となる。この日を超えると、売却が中止となる可能性がある。

難しい「Nextプラン」の作成

 ただし、売却断念は東芝にとって悪い話ではないのかもしれない。メモリ以外の事業の収益性改善や成長がおぼつかないためだ。

 この日、東芝は「東芝Nextプラン」と名付けた中期経営計画を年内に公表すると発表。基本はメモリ事業がなくなる前提で、基礎収益力の強化や成長事業の育成を打ち出した。

 前者について、車谷会長は「一番早いのは一般経費(の削減)。調達費の見直しも進める」と強調する。後者については「リカーリングモデル(継続的な収入モデル)」「デジタルトランスフォーメーション(AIやIoTを活用した事業)」といった方向性も示した。

 だが、個別事業は課題が多い。火力発電事業は世界的な市場縮小で米GEや独シーメンスといった巨人でさえリストラに追われている。インフラ事業の利益率は3%と低く、パソコンなど赤字事業も残る。そうした中で、2018年3月期に利益率4割をたたき出したメモリ事業が売れなければ、むしろそのほうがいいという見方は当然ありうる。

 一方で、記者はこれまでも書いてきたが、東芝メモリはできるだけ早く独立させたほうがベターと考えている。巨額投資を臨機応変に実行していくには、メモリを売却しない前提の東芝の財務体質では難しい。シリコンサイクルがなくなったといわれるが、リーマンショックのような需要の谷が来てメモリ事業が巨額赤字に沈めば、今度こそ東芝が深刻な危機に陥る。そして圧倒的なメモリ事業の利益が残ることで、東芝の本社や他の事業部に甘えが生まれる懸念もある。

 いずれにしろ、東芝メモリの売却が決着しないことには本当のNextプランは作成しようがない。しばらくは宙ぶらりんな状況が続きそうだ。

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