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森友学園問題はマーケティング視点で考えると「無理筋」だ

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/03/20 竹井善昭
森友学園問題はマーケティング視点で考えると「無理筋」だ: Photo:Motoo Naka/Aflo © diamond Photo:Motoo Naka/Aflo

 森友学園問題。今週の23日には渦中の籠池理事長の国会での証人喚問を予定していることもあってまだまだ話題が尽きない模様だが、今回はこの問題をマーケティング視点で考えてみたい。つまり、誰がどんな得をしているのかということなのだが、この問題をずっと追求しているマスコミと野党、そして国有地の払い下げ問題という意味で最大のステークホルダーである国民にとってのマーケティングである。

次々と役者が登場する美味しい展開

 まず、マーケティング的な話をする場合は、そもそもの目的が何であるかという「ゴールイメージ」を明確にする必要がある。一般的に企業のマーケティングにおいては、商品の売上を伸ばすとかシェアを拡大するといったことがそれに当たる。

 では、今回の森友学園問題におけるマスコミと野党にとってのゴールとは何かと言えば、安倍内閣に打撃を与え、なんなら安倍氏を総理の座から引きずり下ろすということなのだが、しかしそれは失敗している。もちろん、商売という意味ではマスコミは成功している。テレビも新聞もネットメディアもいまだにこの問題を大きく扱っているのは、「数字」が取れているからだ。数字が取れれば商売になるから、それは成功していると言える。

 ただしそれは、マスコミがマーケティング的に成功させたというわけではない。森友学園問題がここまで盛り上がっているのは、次から次へと「役者」が登場するからだ。主役の籠池理事長、安倍総理、昭恵夫人に加え、弁護士時代の籠池氏との関係を追及されて発言が二転三転し、答弁中にいつ泣き出してもおかしくないくらいボロボロな印象の稲田防衛大臣。誰もがノーマークだったのに、自らマスコミの前に現れた鴻池議員。そして、その鴻池氏からオバハン呼ばわりされた籠池理事長の妻、記者会見でマスコミに喧嘩を売りまくった長男もいる。さらに、当初は森友学園を追及していたはずなのに、いつのまにか籠池氏のスポークスマンに転向したかのように見える著述家の菅野完氏など。

 このように、強力で濃いキャラクターが続々と登場しているのだ。もちろん、籠池氏本人も絶妙のタイミングで爆弾発言を繰り返し、騒ぎを一向に鎮火させる様子はない。それゆえに、マスコミにとってはこれほど美味しい展開はないと言える。

本当に、安倍政権に大きな打撃を与えているのか?

 しかし、これはたまたまキャラが揃っていたというだけの話で、フロックだ。マスコミのマーケティングが成功したわけではない。むしろ、安倍政権を倒すという本来の目的から言えば、失敗である。たしかに最新の世論調査では、安倍政権の支持率は下がっている。最新のNNN調査によれば内閣支持率は47.6%。前回より7.3ポイント減。不支持率は6.9ポイント上がって32.9%だ。この支持率の低下と不支持率のアップだけを見れば、森友学園問題が安倍政権に大きな打撃を与えているかの印象を受ける人も多いだろう。また、マスコミ各社も「安倍内閣の支持率、大幅ダウン」という論調で伝えている。

 しかし、国論を二分し国会前でも激しいデモが繰り広げられた安保法制の時の支持率38.9%、不支持率50.2%(共同通信調べ)に比べれば、支持率はまだ高いし、近年の歴代内閣、福田、麻生、鳩山、菅の各内閣が退陣した時の支持率がだいたい20%くらいなので、安倍内閣の支持率はいまだに高止まりしていると言える。つまり、森友学園問題はマスコミが期待するほどの打撃を安倍政権に与えていない。もちろん、安倍総理が森友学園への国有地払い下げに深く関与していたという証拠でも出てくれば話は別だが、「昭恵夫人を通して安倍総理から100万円の寄付をもらった」などという、ワケの分からない発言が飛び出してくるくらいなので、政権を二つくらい吹っ飛ばすような話は出てこないように思える。

 ちなみに余談だが、この「安倍総理からの寄付」に関して推測すると、安倍総理は寄付などしていないと思う。これは僕自身もそうなのだが、講演を頼まれても何らかの理由で謝礼を受け取りたくない場合がある。僕の場合だと、たとえば若者が立ち上げたばかりとか、地方都市で頑張っているといった小さなNPOに講演を頼まれた場合、講演謝礼やお車代は応援の意味で遠慮したいと思うこともある。しかし、そのような場合でも主催者は謝礼を渡そうとするので、「では、これは寄付させていただきます」と言って、受け取った謝礼金をその場で寄付することがある。これは社会セクターではわりとスタンダードなことで、逆に僕が主宰するセミナーに来てくれた講師から、そのようなカタチで寄付されることも多い。

 昭恵夫人の場合も立場上、講演謝礼などはほとんどの場合、受け取っていないと思う。しかし籠池氏のキャラクターを考えれば、講演後に昭恵夫人に謝礼を渡そうとすることは十分にあり得るし、昭恵夫人が固辞しても受け取るようにしつこく言ってくることもあるだろう。こういう場合、めんどくさいので、「では、これは寄付とさせていただきます」と言ってしまうことは普通にあり得ることなのだ。今回の「総理からの寄付」という話はその類いの話だと思うし、それを籠池氏が「安倍総理が寄付してくれた」と言いふらすこともまさに「あるある」であって、政権を吹っ飛ばすような、きな臭い話でもないだろう。

 また、証拠だとしてあがっている郵便局の振込伝票も、あんなものはいくらでも自分で作ることができる。安倍総理から寄付をいただいたという「証拠」を偽造したければ、自分で自分に振り込めばいいわけだし、そもそも寄付をするとしても、なぜに「淀川新北野郵便局」からなのか。塚本幼稚園に近い郵便局まで現金を持って来ているなら、振込などせずに手渡しすればすむことで、これも寄付者の行動としては腑に落ちない。

本質を追及できないマスコミと支持率を下げるばかりの野党

 というわけで、マスコミにとってはこの森友学園問題はどうも筋が悪い。周辺キャラが目立ちすぎて安倍総理がどんどん雑魚キャラになってしまっているし、そもそもマスコミは、この問題に関して「本質的な部分」には斬り込めない。なぜなら、この問題の本質は「国有地の不正な払い下げ」であって、そこの本質を追及していくと、大手マスコミ自身の本社敷地の国有地払い下げ問題、つまり相場より格安に取得した問題や、大物政治家が関与した問題へとつながり、壮大なブーメランになるからだ。先述した菅野氏が囲み取材の際、「なぜ財務省のこの役人を取材しないのか?」と記者たちに苦言を呈していたが、それはマスコミにとってはやぶ蛇で、できるわけがないのだ。

 野党も、この問題追及に関しては失敗している。とくに「政権交代を目指す」と公言している民進党。森友学園問題で揺れたこの3月、むしろ民進党は1月と比べて支持率を下げている。また、委員会での質問で安倍総理を激怒させた小池書記局長の共産党も、支持率を下げている(NHK放送文化研究所調べ)。国会での激しい追及も、野党にとっては何の効果ももたらしていないということだ。

 このように民進党も共産党も支持率を伸ばせていないのは、森友学園問題を追及しても「国民に訴求するもの」が何もないからだが、ではどうするべきだったのか。それは国民の関心がどこにあるかによる。財務省理財局を叩いても、国民は実はそれほど大きな関心は抱かないだろう。国民は日常会話では役所の悪口を言っているし、小池都政のように行政改革が重要な政治課題となって国民の支持を得ることもあるが、今回の件で理財局批判はまったく高まっていない。

 また、塚本幼稚園の愛国教育を批判しても意味がない。たしかに、園児たちに中国や韓国のことを大声でディスらせることや、「安倍総理、頑張れ〜」と叫ばせることは、政治的には保守寄りの僕から見ても異様だ。どうかしていると思う。保守派の論客からも批判がある。しかし、愛国教育や教育勅語を教えること自体に拒否反応を示すのはリベラルだけで、しかも今の日本ではリベラルは絶滅危惧種のようなものなので、野党とマスコミが結託して「森友学園は愛国教育を推進するおかしな学校」という印象操作をいくらやろうとしても、政権打倒にはとてもたどり着けないだろう。塚本幼稚園に関しては暴力事件やお金の問題など、いろいろスキャンダルも報道されているが、これはあくまで森友学園の問題であり、監督官庁である大阪府の問題であり、安倍政権に関する問題ではない。というわけで、愛国教育を政治問題にしたくてもそれは無理だろう。

政治におけるマーケティングとは

 念のために言っておくが、これは思想信条の話ではない。純粋に「マーケティング」の話だ。政治と言っても、結局は支持率や選挙における票という「数字」の世界の話なので、政治もやはりマーケティングなのだ。そして、マーケティングとはつまるところ、「自分たちの価値観と顧客(政治の場合は国民)の価値観をどうエンゲージメントさせるか」ということだ。自民党が強いのは、そのことがよく分かっているからだし、民進党や共産党が支持率を伸ばせないのも社民党が風前の灯なのも、そのことが分かっていないからだ。

 結局のところ森友学園問題とは、野党や左翼マスコミの「愛国教育が大嫌い」「安倍総理が大嫌い」という感情バイアスで無理矢理に政治問題にしたかった話であり、やはり無理筋だ。社会正義の観点から言えば、これはあくまで官僚問題であり、行政問題が絡むとしても大阪という地方行政の問題であり、政権を揺るがす大きな政治問題にはならない。つまり、野党やマスコミの失敗は、この問題を政治問題にしようとしたところにある。マーケティング屋の視点で言えば、森友学園問題とは、「売れるはずのない商品を、会社の事情で無理矢理売ろうとしている」ような話だ。東芝の原発ビジネスの失敗と、本質的には似ている。しかし、売れないモノは何をどうやっても売れない。

 野党も左翼マスコミも安倍内閣を倒したいのなら、感情バイアス、思想バイアスを捨てて、きちんとマーケティングすべきだ。具体的なことはここでは書かないが、ひとつだけヒントを書いておこう。具体的な政策プランも大事だが、まず日本人、とくに若い人たちの日本人としてのプライドを満たすことのできる政策を掲げ、実行できるという説得力を持たせるか。そして、説得性のある人物を党首にできるかにかかっている。日本のリベラルにとっては、それは最もハードルが高いことではあるのだが。

(ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表 竹井善昭)

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